梅雨の合間の洗濯日和の午後、前から気になっていたトイレ掃除をした。梅雨に入り気が付くと1階のトイレの便器や床がカビで真っ黒になっていた。母の失禁が原因と思われる。それが分かってからこれまで自分の部屋のトイレを使っていた。本格的トイレ掃除なんて初めてだが、母が退院するまでに綺麗にしておきたかった。
やり始めるまでは気が重くてしょうがなかったが、一旦覚悟を決めて雑巾やブラシで汚れを取りもとの姿になり始めると、作業は機械的に進むようになり何とか終った。ふと洗濯機を覗くと退院前の母の汚れた下着やモンペがあった。直ぐ洗濯して外に干した。もう汚いという感覚がなくなった。やり終わるとすっきりした気分になったから不思議だ。
その後やはりカビが生えて黒くなったトイレ用スリッパを廃棄、ショッピング・モールに行き小型の掃除機と100円ショップで代わりのスリッパを買ってきた。ドアを開けると新品のスリッパが置いあり、トイレの印象がすっかり変わった。もう慌てて2階のトイレに走りあがる必要がなくなった。
実はトイレ掃除が最後に残った仕事で、それまでに家の周りや畑の手入れを一通り終らせるか、職人の方に頼んでいた。畑の除草は私でも出来るが、庭の手入れと山の麓にある梅や茶の木の下草刈などは私の手に余る。幸い母の古い記憶はかなり確かなので、そのつど病院に行き連絡先を聞き出して電話番号を調べ依頼した。
庭師のY さんに連絡すると、何と今年初め脳梗塞になり左半身不随になったという。事情を話すと快く他の方の紹介を引き受けて頂き、梅雨明け頃にやって頂くことになった。ところがその2日後に突然昨年庭の手入れをしたという別の方が来られ、今年はどうするのか聞かれた。話しているうちに母の直近の記憶は無くなっている事に気付き、取りあえず事情を説明し理解して頂いた。
下草刈は依頼した3日後にはもうやって頂いた。何も聞いてなかったのだが、たまたま現場を通りかかったら自動草刈機を抱えて急な山坂で作業中の老人を見かけた。その時は隣の西予市で開催されたバドミントン大会で試合の帰りだったが、車を止めて疲れた足で坂を登り挨拶に行った。
初めって会って自己紹介し、母が入院したことを伝えた。良く見るとこの方もかなりお年を召しておられ、もう出来ないと断わられる日を覚悟しないといけないと思わずにはいられなかった。■