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総括:自民圧勝の民意

2005-10-02 11:31:09 | 国際・政治
今回総括として、数字の分析を超えて有権者が何を思って投票したかについて論じたい。解散後から選挙結果についてメディアがどう分析しているか見てきた。自民圧勝後のリスクや郵政民営化以降何が起こるかについての議論が多い。その議論も重要だが、私はもう一度民意がどうだったか掘り下げ理解する事を忘れてはならないと思う。今回の選挙は地元利益誘導型から政策に基づく政権選択に変化したからであり、この傾向は後戻りできない非可逆的なものであるからである。民意に反する政策を実行すれば次回選挙で手痛いしっぺ返しを受けるのは間違いない。

昨今のメディアの論評の典型として、立花隆氏は27日nikkei.bpで小泉圧勝の05体制を「危険な兆候」と論じている例を挙げる。これまで自民安定政権の下で作られた利権構造と、繰り返されてきた政治腐敗が簡単になくなるはずが無いという信念が感じられる。端的に言うと立花氏は、自民大勝の理由は政策ではなく小泉氏の大衆受けのいいアプローチであると主張している。権力は腐敗するものである、一般論として正しい。

彼がそういうのは理解できる。友人の元ゼニス社長のフランス人がワールドカップで母国が優勝したときの賭けを再度引用したい。彼はあまりにも長い間母国のチームに期待し裏切られ続けてきたのでフランス・チームの強さを信じることが出来なかった。結局ブラジルに賭け、私がドンペリをせしめた。あまりに単純化しているとの批判はあろうが、立花氏の小泉政権への疑いは彼の失望の歳月が彼の眼鏡を曇らせているのではないだろうか。

私はもっと素直に主張を聞きその主張があるべき姿かどうかを論じ、それが如何に実現されるか不足していれば何を付け加えればいいかという視点で見ていく事のほうが大事であると思う。結局のところ民主党の選挙戦略は対案を示せず敗れたと同じことを今多くのメディアがまだ続けている。勿論、今回の選挙結果の意義を真正面から指摘している論評も少数ながら見かけられる。

その中で小林慶一郎氏の囲み記事「ディベート経済」(朝日新聞05/09/26)は小泉路線が圧倒的に支持された3つの理由を明快に述べている。小林氏は財政規律の回復とその延長線上にある年金・増税・構造改革がどう受け止められたかというより、大元の原因を除く事の方に国民の意識があったと指摘した。その要点は私流に意訳すると以下のようになる。

1) 社民・共産の大きな政府の政策提案が財源について具体性を欠き国民に信頼されなかった。与党は増税には触れなかったが、歳出を減らして財政の持続可能性を回復するという方向性は明確な印象を与えた。
2) バブル崩壊後の不況の反省、すなわち政治が三流でも銀行や大企業が一流なら大丈夫という神話が崩れ、政治が公正な市場・ルールを整備しないと市場経済も腐敗し非効率化することを不良債権問題や経済の低迷を通じて強く印象付けられた。公正な市場競争の実現のため政治が大きな役割を果たし、経済を効率化にしなければ弱者の取り分も増やせない。
3) 弱者救済を訴える勢力が必ずしも真の弱者を代表していない。従来型政治の受益者は建設業者や労組の既得権益層(むしろ地域社会や雇用の場で強者)であり、生活に困窮した真の弱者とは言いがたかった。反小泉陣営は弱者救済のふりをした強者の既得権益保護と有権者は考えた。…「真の弱者」救済が否定されたわけではない。

私は小林氏の分析が最も的確に民意を説明していると実感している。自民党政権が高支持率を維持できるかどうかはこの民意に答えることが出来るかではないだろうか。今回の選挙で初めて自民党は世耕弘成氏をリーダに広報戦略チームを設け、リアルタイムで民意がどこにあるか調べそれに沿って言う事を毎日のように修正し成功したことが注目されている。選挙後もこの組織は維持され機能しているように見られる。

メディアは一時的な選挙対策として捉えているが、小泉政権の性格上から今後選挙の機会以外に民意を汲み取って政策に反映していく継続的なシステムになる可能性がある。メディア対策が決定的な役割を果たす新しい政策決定プロセスである。この組織がカール・ローブ氏のように米大統領の政策にまで影響を与えるようになる可能性は十分ある。■


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