うみねこをかもめという人がある
うみねこはかもめと呼ばれながら
あの冷たい逆白波のたつ浜辺を
さまよっているだろうか
うみねこは害鳥だという人がある
うみねこは苗代を荒らすと
うみねこはたにしや人のものを盗んでゆく害鳥だから
滅ぼしてもかまわないという人がある
うみねこは害鳥だと言われながら
あの腐った港の水や離れ小島や
貧しい村の田の面の上を
鳴き続けているだろうか
うみねこが魚をみつけるのは
たかが知れているという人がある
せいぜい僅かな鰯位だという人がある
うみねこはまだ見えない魚を尋ねながら
大きくうねる沖に向かって出ていくだろうか
その時人はうみねこをなんと呼ぶだろう
あれは海へ行ったもう帰ってこないのだ
あれは見えなくなった
いけない悪い鳥だったと呼ぶだろうか
だがうみねこは億年来うみねこだった
億年来害鳥であったためしはないのだ
億年来魚を捜しもとめながら
はげしい沖へ向かって出ていったのだ
それが
うみねこと呼ばれなければならない
鳥なのだ
□村上昭夫「うみねこ」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
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【参考】
「【詩歌】村上昭夫「鴉」」
「【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」」
「【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」」
「【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~」
うみねこはかもめと呼ばれながら
あの冷たい逆白波のたつ浜辺を
さまよっているだろうか
うみねこは害鳥だという人がある
うみねこは苗代を荒らすと
うみねこはたにしや人のものを盗んでゆく害鳥だから
滅ぼしてもかまわないという人がある
うみねこは害鳥だと言われながら
あの腐った港の水や離れ小島や
貧しい村の田の面の上を
鳴き続けているだろうか
うみねこが魚をみつけるのは
たかが知れているという人がある
せいぜい僅かな鰯位だという人がある
うみねこはまだ見えない魚を尋ねながら
大きくうねる沖に向かって出ていくだろうか
その時人はうみねこをなんと呼ぶだろう
あれは海へ行ったもう帰ってこないのだ
あれは見えなくなった
いけない悪い鳥だったと呼ぶだろうか
だがうみねこは億年来うみねこだった
億年来害鳥であったためしはないのだ
億年来魚を捜しもとめながら
はげしい沖へ向かって出ていったのだ
それが
うみねこと呼ばれなければならない
鳥なのだ
□村上昭夫「うみねこ」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
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【参考】
「【詩歌】村上昭夫「鴉」」
「【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」」
「【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」」
「【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~」