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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】戦争に負けると ~米~

2015年05月16日 | 詩歌
 この
 雨に濡れた鉄道線路に
 散らばった米を拾ってくれたまえ
 これはバクダンといわれて
 汽車の窓から駅近くなって放り出された米袋だ
 その米袋からこぼれ出た米だ
 このレールの上に レールの傍に
 雨に打たれ 散らばった米を拾ってくれたまえ
 そしてさっきの汽車の外へ 荒々しく
 曳かれていったかつぎやの女を連れてきてくれたまえ
 どうして夫が戦争に引き出され 殺され
 どうして貯えもなく残された子供らを育て
 どうして命をつないできたかを たずねてくれたまえ
 そしてその子供らは
 こんな白い米を腹一杯喰ったことがあったかどうかをたずねてくれたまえ
 自分に恥じないしずかな言葉でたずねてくれたまえ
 雨と泥の中でじっとひかっている
 このむざんに散らばったものは
 愚直で貧乏な日本の百姓の辛抱がこしらえた米だ
 この美しい米を拾ってくれたまえ
 何も云わず
 一粒ずつ拾ってくれたまえ。

□天野忠「米」(『単純な生涯』(コルボオ詩話会、1958)
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 【参考】
【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ
【詩歌】猿飛佐助の一日
【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事
【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~
【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~
【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」



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【経済】日銀・黒田総裁の変調 ~消費増税の影響~

2015年05月16日 | 社会
 (1)日本銀行が
     「2015年度を中心とする期間」
としていた2%のインフレ率目標の達成時期を
     「2016年度の前半ごろ」
と事実上後ろ倒しにした。
 黒田東彦・日銀総裁は、記者会見で、消費者物価指数対前年同月比(消費増税による見かけ上の変動を除いた分)が、その背景を
     「当面は0%程度で推移する」
と説明したが、肝心の
     「物価に対する消費増税の影響」
については全く言及していない。不可解だ。

 (2)消費税は、2014年4月に8%に上げられた。そのため消費が落ち込み、それに応じて物価が下がったのは明らかだ。
 消費者物価指数総合対前年同月比は、
     2013年3月・・・・▲0.9%(「異次元緩和」の直前)
      (この間・・・・順調に上昇)
     2014年3月・・・・1.6%
     2014年4月・・・・3.4%(消費増税の月、見かけ上の上昇分2%を引くと1.4%)
      (この間・・・・下降する一方)
     2015年2月・・・・0.2%
     2015年2月・・・・0.3%

 (3)(2)の物価の動きに並行するように、日銀は政策決定会合の正式文書における「物価の見通し」の書き方を微妙に変化させている。
     2013年4月4日(異次元緩和)から・・・・「プラスに転じていく」
     2013年8月8日から・・・・「プラス幅を次第に拡大していく」
     2014年1月22日から・・・・「暫くの間、1%台前半で推移する」
 ところが、消費増税の影響が明らかになってくると、文言が弱気に変わってくる。 
     2014年秋ごろ・・・・「当面現状程度のプラス幅で推移する」(下方修正)
     2015年1月21日から・・・・「エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する」
     2015年3月17日から・・・・「エネルギー価格下落の影響から、当面0%で推移する」
というように短期的な理由を原油価格下落に求めるようにまでなっている。

 (4)それでも、黒田総裁は、自らの口からは
     「物価低迷の背景には消費増税による需要落ち込みがある」
とは言わない。なぜなら、黒田総裁自身が消費増税に積極的で、消費増税前に
     「増税の影響は軽微である」
と発言してきたのが大きい。
 実際は、影響は軽微どころではなく、黒田総裁の見通しは大外れだった。それを認められないわけだ。

 (5)記者会見に出ているマスコミも、消費増税に賛成した大手紙などは、いまさら消費増税の影響が大きかった、とは言えない。
 だから、記者会見でも消費増税の話を避けて、互いが傷をなめ合うようになっている。

 (6)消費増税の影響によって、インフレ目標達成時期は後ずれするが、消費増税の影響は和らぎつつあるので、今後は需要が盛り返し、物価も上がる・・・・とシンプルに説明すればよいだけのことなのだが、いざ消費税のことになると、黒田総裁は財務官僚そのものになる。
 そもそも消費増税は政府の仕事なので、黒田総裁は余計なことに口出しせず、しっかりと金融政策に専念すればよい。黒田総裁が職務に専念しないと、日銀の信認が揺らいでしまう。金融政策の効果も弱まってしまう。
 被害を受けるのは国民だ。

□「ちょっと変だよ 日銀・黒田総裁 ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2015年5月23日号)
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 【参考】
【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると


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