この
雨に濡れた鉄道線路に
散らばった米を拾ってくれたまえ
これはバクダンといわれて
汽車の窓から駅近くなって放り出された米袋だ
その米袋からこぼれ出た米だ
このレールの上に レールの傍に
雨に打たれ 散らばった米を拾ってくれたまえ
そしてさっきの汽車の外へ 荒々しく
曳かれていったかつぎやの女を連れてきてくれたまえ
どうして夫が戦争に引き出され 殺され
どうして貯えもなく残された子供らを育て
どうして命をつないできたかを たずねてくれたまえ
そしてその子供らは
こんな白い米を腹一杯喰ったことがあったかどうかをたずねてくれたまえ
自分に恥じないしずかな言葉でたずねてくれたまえ
雨と泥の中でじっとひかっている
このむざんに散らばったものは
愚直で貧乏な日本の百姓の辛抱がこしらえた米だ
この美しい米を拾ってくれたまえ
何も云わず
一粒ずつ拾ってくれたまえ。
□天野忠「米」(『単純な生涯』(コルボオ詩話会、1958)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ」
「【詩歌】猿飛佐助の一日」
「【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事」
「【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~」
「【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~」
「【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」」
雨に濡れた鉄道線路に
散らばった米を拾ってくれたまえ
これはバクダンといわれて
汽車の窓から駅近くなって放り出された米袋だ
その米袋からこぼれ出た米だ
このレールの上に レールの傍に
雨に打たれ 散らばった米を拾ってくれたまえ
そしてさっきの汽車の外へ 荒々しく
曳かれていったかつぎやの女を連れてきてくれたまえ
どうして夫が戦争に引き出され 殺され
どうして貯えもなく残された子供らを育て
どうして命をつないできたかを たずねてくれたまえ
そしてその子供らは
こんな白い米を腹一杯喰ったことがあったかどうかをたずねてくれたまえ
自分に恥じないしずかな言葉でたずねてくれたまえ
雨と泥の中でじっとひかっている
このむざんに散らばったものは
愚直で貧乏な日本の百姓の辛抱がこしらえた米だ
この美しい米を拾ってくれたまえ
何も云わず
一粒ずつ拾ってくれたまえ。
□天野忠「米」(『単純な生涯』(コルボオ詩話会、1958)
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【参考】
「【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ」
「【詩歌】猿飛佐助の一日」
「【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事」
「【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~」
「【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~」
「【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」」