金色の鹿を見た
金色の鹿を見たと言っても
誰もほんとうにはしてくれない
ぼくが頼りにならない少年だったから
ぼくのなかの目立たない存在なのだから
誰もそっぽを向いては
足早に行ってしまう
でもその山ならばたしかにある
みなが五葉山と呼ぶ山で
東は直に太平洋で
広がる午前の雲を背に深く負いながら
あの鹿はどの方向へ向かったのだろう
そのことをどのように説いたなら
ぼくが分かってもらえるのだろう
鹿が死んでしまうと
ぼくのなかの宝珠が死ぬという
言い伝え
ぼくはそのことを
夕凪の便りのように聞いた筈なのに
□村上昭夫「金色の鹿」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【詩歌】村上昭夫「雁の声」」
「【詩歌】村上昭夫「うみねこ」」
「【詩歌】村上昭夫「鴉」」
「【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」」
「【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」」
「【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~」
宮島の鹿

金色の鹿を見たと言っても
誰もほんとうにはしてくれない
ぼくが頼りにならない少年だったから
ぼくのなかの目立たない存在なのだから
誰もそっぽを向いては
足早に行ってしまう
でもその山ならばたしかにある
みなが五葉山と呼ぶ山で
東は直に太平洋で
広がる午前の雲を背に深く負いながら
あの鹿はどの方向へ向かったのだろう
そのことをどのように説いたなら
ぼくが分かってもらえるのだろう
鹿が死んでしまうと
ぼくのなかの宝珠が死ぬという
言い伝え
ぼくはそのことを
夕凪の便りのように聞いた筈なのに
□村上昭夫「金色の鹿」(『動物哀歌』、1967【第18回H氏賞】)
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【参考】
「【詩歌】村上昭夫「雁の声」」
「【詩歌】村上昭夫「うみねこ」」
「【詩歌】村上昭夫「鴉」」
「【詩歌】村上昭夫「荒野とポプラ」」
「【詩歌】村上昭夫「シリウスが見える」」
「【詩歌】村上昭夫「賢治の星」 ~ふたごの星~」
宮島の鹿
