「今日は、呉にある大和ミュージアムでやっとる『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』を見に行ってきたんじゃ」
「朝も早よから出かけて行ったね」
「2月27日(水)からやりよったんじゃが、なかなか見に行けんでの。今日、ようやっと、見に行けたんじゃ」
「どうじゃった?」
「いやー、えかったのう。日本刀って、見たことがあるようで、こげにじっくり見ることってないもんの」
「時代劇を見よったら、必ずといっていいほど刀が出てくるのに、実際にどんなつくりになっとるかなんて、ほとんど知らんもんね」
「今日は、ロンギヌスの槍を紹介してみようかの」
「日本刀と話を振っておいて、鎗の紹介をするん?」
「いやー、今回の展示の目玉は、やっぱりこれじゃと思うで」
「大きいのは分かるけど、比較するもんがないね。どれくらいの大きさがあるん?」
「全長332センチメートル、総重量22.2キログラムもあるそうじゃ」
「すごい!」
「近くで見ると、こんな感じかの」
「近くで見ると、筋というか、木目のようなもんが見えるけど?」
「ロンギヌスの槍は、いろんな金属を重ね合わせたダマスカス鋼を鍛造(たんぞう)して、木目のような地肌を生み出しとるそうじゃ」
「ほー。すごい技を使うとってんじゃね」
「もっと、見てみるか?」
「この、ねじりというか、ひねりが、すごいね」
「会場で、制作風景を撮影した映像を見ることができるんじゃが、力業(ちからわざ)で捻(ねじ)った、という感じじゃったの」
「ほんま、すごい」
「ここの会場は暗うてのう。近くで見ても、この地肌がよう見えんかった。ほいで、フラッシュをたいて撮影した画像を見て、「おぉ。こりゃすごい!!」と感動したんじゃ」
「お父さんは最近、視力が落ちてきよるけぇね…」
「ほっとけ! ところで、このロンギヌスの槍を制作するうえで苦労されたのが、法律的なことじゃったそうな」
最も苦労したのは、法律的な部分です。
展示に辺り(原文ママ)、武器ではなく美術品として製作する必要があったため、当初予定していた素材を断念せねばならなくなり、急遽材料から調達しなおさなければなりませんでした。
最後は三日間徹夜で仕上げました。
(会場の紹介パネルより)
「確かに。武器として作っとるわけじゃないもんね」
「日本には、銃刀法(じゅうとうほう。銃砲刀剣類所持等取締法)という法律があって、刀剣類(とうけんるい)は、許可なく所持することはできんのじゃ」
「そうはいうても、長さが3メートル以上、重さが20キロ以上もあるこの鎗を持って暴れる人なんか、そうそうおってんないと思うけど」
「ま、法律の話じゃけ」
「それにしても、材料から調達し直すというのは、大変じゃったろうね」
「ロンギヌスの槍を製作されたのは、広島に住んどられる、三上貞直という刀匠の方なんじゃ」
「ほんま?」
刀匠
三上孝徳
(刀匠名 貞直)-広島県
人間国宝の故・月山貞一刀匠に師事し、1995年から、日本に18人しかいない「無鑑査」の地位を得ている名工。
無鑑査とは、すぐれた技量が明らかであるため、展覧会において、その刀匠の刀には優位をつけないという意味だ。
日本刀の原材料「玉鋼」を作るための製鉄法「たたら吹き」の技術継承のほか、日本刀の普及活動に努めるなど、日本刀剣界を支える大黒柱のひとりである。
(会場の紹介パネルより)
「無鑑査(むかんさ)というのが、すごいね」
「三上氏は、日本刀製作技術で、広島県の無形文化財保持者でもあるそうじゃけぇの」
「へぇ」
「で、三上氏と一緒にこの鎗を制作されたのが、橋本庄市という方」
金属造形作家
橋本庄市
-広島県
三上貞直刀匠の弟子であり、刀匠ではなく金属造形作家として活動する。
現在は、ダマスカスナイフの制作を得意とする若手のアートナイフメーカーとして売り出し中で、その作品がナイフの専門誌「ナイフマガジン」でしばしば表紙を飾るなど、すでにその名は全国に知れ渡りつつある。
(会場の紹介パネルより)
「ふーん。橋本さんは、ダマスカスナイフの制作を得意とされとってんじゃね」
「橋本氏は、プログレッシブナイフ・ナイフ型も展示されとってんじゃ」
「ほー」
「紹介文を読むと、ダマスカスにするため、ステンレス、ニッケル、コバールなどの金属を使うんじゃと。ほいじゃが、これらの材料だけじゃ硬度が低うて、刃先が弱いんで、ヤスキ鋼を挟(はさ)んどるそうじゃ」
「ヤスキ鋼の「ヤスキ」って、島根県安来市(やすぎし)のこと?」
「ほうじゃの。中国山地は、むかしから良質な砂鉄の出て、たたら製鉄が盛んじゃった。安来市も、たたら製鉄が盛んじゃったところじゃ」
「宮崎駿監督の映画『もののけ姫』(1997年)も、たたら製鉄が盛んじゃった中国山地が舞台じゃったという話を聞いたことがあるよ」
「最後になったが、この展覧会、当初は広島での開催は予定されとらんかったんじゃと。ところが、三上氏や橋本氏など、広島の刀匠たちが出品していることもあって、急きょ、開催が決まったそうじゃ」
「大和ミュージアムのある呉(くれ)といえば、鉄を使う造船も盛んじゃしね」
訪問日:2013年(平成25年)3月23日
↓三上貞直については、こちら↓
「三上 貞直」叢雲会
「今日は、呉の大和ミュージアムで開催中の『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』に展示してある、ロンギヌスの槍について話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」
「朝も早よから出かけて行ったね」
「2月27日(水)からやりよったんじゃが、なかなか見に行けんでの。今日、ようやっと、見に行けたんじゃ」
「どうじゃった?」
「いやー、えかったのう。日本刀って、見たことがあるようで、こげにじっくり見ることってないもんの」
「時代劇を見よったら、必ずといっていいほど刀が出てくるのに、実際にどんなつくりになっとるかなんて、ほとんど知らんもんね」
「今日は、ロンギヌスの槍を紹介してみようかの」
「日本刀と話を振っておいて、鎗の紹介をするん?」
「いやー、今回の展示の目玉は、やっぱりこれじゃと思うで」
「大きいのは分かるけど、比較するもんがないね。どれくらいの大きさがあるん?」
「全長332センチメートル、総重量22.2キログラムもあるそうじゃ」
「すごい!」
「近くで見ると、こんな感じかの」
「近くで見ると、筋というか、木目のようなもんが見えるけど?」
「ロンギヌスの槍は、いろんな金属を重ね合わせたダマスカス鋼を鍛造(たんぞう)して、木目のような地肌を生み出しとるそうじゃ」
「ほー。すごい技を使うとってんじゃね」
「もっと、見てみるか?」
「この、ねじりというか、ひねりが、すごいね」
「会場で、制作風景を撮影した映像を見ることができるんじゃが、力業(ちからわざ)で捻(ねじ)った、という感じじゃったの」
「ほんま、すごい」
「ここの会場は暗うてのう。近くで見ても、この地肌がよう見えんかった。ほいで、フラッシュをたいて撮影した画像を見て、「おぉ。こりゃすごい!!」と感動したんじゃ」
「お父さんは最近、視力が落ちてきよるけぇね…」
「ほっとけ! ところで、このロンギヌスの槍を制作するうえで苦労されたのが、法律的なことじゃったそうな」
最も苦労したのは、法律的な部分です。
展示に辺り(原文ママ)、武器ではなく美術品として製作する必要があったため、当初予定していた素材を断念せねばならなくなり、急遽材料から調達しなおさなければなりませんでした。
最後は三日間徹夜で仕上げました。
(会場の紹介パネルより)
「確かに。武器として作っとるわけじゃないもんね」
「日本には、銃刀法(じゅうとうほう。銃砲刀剣類所持等取締法)という法律があって、刀剣類(とうけんるい)は、許可なく所持することはできんのじゃ」
「そうはいうても、長さが3メートル以上、重さが20キロ以上もあるこの鎗を持って暴れる人なんか、そうそうおってんないと思うけど」
「ま、法律の話じゃけ」
「それにしても、材料から調達し直すというのは、大変じゃったろうね」
「ロンギヌスの槍を製作されたのは、広島に住んどられる、三上貞直という刀匠の方なんじゃ」
「ほんま?」
刀匠
三上孝徳
(刀匠名 貞直)-広島県
人間国宝の故・月山貞一刀匠に師事し、1995年から、日本に18人しかいない「無鑑査」の地位を得ている名工。
無鑑査とは、すぐれた技量が明らかであるため、展覧会において、その刀匠の刀には優位をつけないという意味だ。
日本刀の原材料「玉鋼」を作るための製鉄法「たたら吹き」の技術継承のほか、日本刀の普及活動に努めるなど、日本刀剣界を支える大黒柱のひとりである。
(会場の紹介パネルより)
「無鑑査(むかんさ)というのが、すごいね」
「三上氏は、日本刀製作技術で、広島県の無形文化財保持者でもあるそうじゃけぇの」
「へぇ」
「で、三上氏と一緒にこの鎗を制作されたのが、橋本庄市という方」
金属造形作家
橋本庄市
-広島県
三上貞直刀匠の弟子であり、刀匠ではなく金属造形作家として活動する。
現在は、ダマスカスナイフの制作を得意とする若手のアートナイフメーカーとして売り出し中で、その作品がナイフの専門誌「ナイフマガジン」でしばしば表紙を飾るなど、すでにその名は全国に知れ渡りつつある。
(会場の紹介パネルより)
「ふーん。橋本さんは、ダマスカスナイフの制作を得意とされとってんじゃね」
「橋本氏は、プログレッシブナイフ・ナイフ型も展示されとってんじゃ」
「ほー」
「紹介文を読むと、ダマスカスにするため、ステンレス、ニッケル、コバールなどの金属を使うんじゃと。ほいじゃが、これらの材料だけじゃ硬度が低うて、刃先が弱いんで、ヤスキ鋼を挟(はさ)んどるそうじゃ」
「ヤスキ鋼の「ヤスキ」って、島根県安来市(やすぎし)のこと?」
「ほうじゃの。中国山地は、むかしから良質な砂鉄の出て、たたら製鉄が盛んじゃった。安来市も、たたら製鉄が盛んじゃったところじゃ」
「宮崎駿監督の映画『もののけ姫』(1997年)も、たたら製鉄が盛んじゃった中国山地が舞台じゃったという話を聞いたことがあるよ」
「最後になったが、この展覧会、当初は広島での開催は予定されとらんかったんじゃと。ところが、三上氏や橋本氏など、広島の刀匠たちが出品していることもあって、急きょ、開催が決まったそうじゃ」
「大和ミュージアムのある呉(くれ)といえば、鉄を使う造船も盛んじゃしね」
訪問日:2013年(平成25年)3月23日
↓三上貞直については、こちら↓
「三上 貞直」叢雲会
「今日は、呉の大和ミュージアムで開催中の『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』に展示してある、ロンギヌスの槍について話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」