晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

雨読 「地名の楽しみ」 6/8

2016-06-08 | 雨読

2016.6.8(水)晴れ

  災害地名について読み進めているところだが、それらに先だって紹介するのは図書館からの借本だからだ。新聞の書評で、「地名の文字だけを切り取って「土地の安全性」に結びつける風潮は実に危ういものがあり、くれぐれも騙されてはいけないと思っている」という本書のあとがきの一部が記されていた。将にそのとおりとばかり、借りてきて読んだ次第だ。
「地名の楽しみ」今尾恵介著 ちくまプリマー新書2016年1月初版福知山図書館借本

 地名に関する本は多いがほとんどがその由来を紐解くいわゆる地名学に関わるものである。本書はそうではなくて、近代に入って、地名がどう扱われてきたかとか地名の構造等について書かれたものである。アトランダムではあるが、興味深くポストイットを付けた部分を紹介しよう。

 互ニ優劣ナキ数町村ヲ合併スルトキハ各町村ノ旧名称ヲ参互折衷スル等適宜斟酌シ勉メテ民情ニ背カザルコトヲ要ス
 明治時代の町村合併にあたっての地名の付け方を勧める「訓令第三五二号」なるものである。
 上林の老富町(大唐内、市茅野、栃、光野)故屋岡町(古和木、矢代、小中、川原)五泉町(市志、一ノ瀬、辻、水梨)等もこの訓令によったものか。
 北海道の幸福駅(帯広市幸福町)の切符は人気を博したが、元々は幸震(こうしん・アイヌ語サツ・ナイ=乾いた川)でナイは地震の古語だという。当地は福井県からの入植者が多かったので、幸震+福井で幸福となったそうだ。嘘のようなほんとの話らしい。
 このようにおもしろい話が満載で、うんちくを語るには最適の本だ。 ところが私の求める、地名と土地の安全性に関する問題は一向に現れない。終わりかけになってようやく◆地名の「安全性」を考えるという項目が出てきた。東日本大震災以降災害地名の本が数多く出版され、いくつかを読んでいるが、その多くは現地を取材し、過去の災害事例なども検証して地名の考証をしているが、おしなべてこの地名は危険だという表現も見られる。例えば浜、津、浦などは津波の危険性のある地名だという言い方をされるわけだ。本書では週刊誌に掲載された「軟弱地盤地名」として窪、谷、沢、下、江、海、塩、池等々多数について批判している。地名から地質や地形を判断するのは無謀な事と書いている。
 「窪地には窪のつく地名が発生する」という説明は妥当だとしても、順番を逆にして「窪のつく地名は窪地である」といったら間違いだ。
 まさにその通りである。
 剱岳の西面に池の谷(いけのたん)という谷がある。何度も通いながらどこかに池があるのだろうと思っていた。実はそうで無くて「行けぬ谷」の意で、入り口のところの強烈なゴルジュ(喉の意味で両岸に岩壁の迫った峡谷)がその意味を表している。このように単に地名の漢字だけで地形や地質を判断するのは無謀だということだ。

【今日のじょん】川合(福知山市三和町)のわんこを紹介しよう。過疎化が進み老人と共に暮らしているこれまた老犬がなぜか愛おしい。

小原さんちのあいちゃん、片山さんちの??ちゃん

コメント
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