常念が見える部屋から

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松茸山の代

2012年10月15日 | 季節の便り

 

私の住む集落が明るい午後の日差を受けて、屋根の甍がそれぞれの表情を作る。

向こう山の裾の家々の間に広がる葡萄畑も秋の装いを始めた。

自分のことなのだが、慌しく過ぎた一夏が終わって、ようやく集落に落ち着きが戻ったように思われる。

向こう山の松林は松茸がよく出るらしい。

今年は長く続いた残暑 が影響してか大幅に出遅れて、10月に入ってようやく出始めたという。

松茸採名人は代(シロ)と呼ばれる茸が良く出る場所は、自分の子供にも絶対教えない。

早朝 暗いうちに出かけ、一人占めしてほくそ笑む、その気持ちが解らないでもない。

ある知恵者が、暗いうちに茸山の対面に陣取って、名人の入山を待った、しばらくすると向こうの山の中腹に小さな灯がともった。

しばらくして消えた灯は、少し離れた場所で蛍のように又瞬いた、名人が松茸を掘りだすときだけ明かりを必要とすることを知恵者はその時初めて知った。

こうして極秘の松茸代は知恵者の術中に落ちた。

それから後の事は知らないし、また物騒な事件が起こったという話も聞かない。

 

 

 

 

 

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