屯田物語

フォレスターとα6000が
旅の仲間
さあ、カメラを持って
出かけよう!

炎熱をゆく

2020年03月04日 | 春を呼ぶ朝

絵手紙サークルのカレンダー

はやくも三月になったが、此冬、除雪車出動回数は昨冬の半分に減った。
それは有難いことだが、コロナ騒動がいつ終息するのかわからないまま春を迎えそうだ。
しかし、マスク(トイレットペーパーも?)の悪質転売ヤ―が跋扈して、そんな薄汚い連中はコロナウイルスと共にこの世から消えてほしい。

昨日、突然マウスのスクロールが利かなくなって、設定等を確認して更にドライバーを更新してみたが直らなかった。
どうやらホイル部分が故障したようだ。


大村正次著「春を呼ぶ朝」―稱名瀧―

 炎熱をゆく

九十度の炎熱が
越えず 額から背筋から
気味悪いものを垂れさげる。
八月の路傍の草のやうに
萎れきつた心に
自動車が砂煙をぶつかけていく。
ああ! たまらなくなつた俺は
靜かな裏街へ走りだす。
樹立をむかえてほつとする。
とこゝでも右から左から
一斉に鳴き喚く油蝉。
蝉よ
終日ひねもす高い木の上で鳴き喚いてゐるがよい。
俺は
干乾びた喉さへ潤さぬ犬のやうに
気が遠くなるおもひで
貸家いえを探して歩くのだ。

雪の山を歩く

2020年03月03日 | 春を呼ぶ朝


大村正次著「春を呼ぶ朝」―故郷の電車―

 雪の山を歩く

どこまでも僕達を靡くのは
足跡一つなお清浄な山の雲、
なだらかな純白のスロープ、
行手の空を割り
雪また雪の圓らかな孤線、
そしてこゝかしこ頭をもたげ
緑の顔を覗かせる松のむれ
 
ふゆ、溌剌のスキー場を
一山越えた山ひだの 何といふ静寂しづけさだ。
友よ 耳を澄ませ かすかに響くもの
眼には見えこず響くもの、
おゝ谷底だ。
雪の下ゆく瀬の音だ。
そして この雪原の裾を消し
直下ました濃青あおい淵ののぞいてゐる厳粛おそろし
かすかなものは その川上から來るのだ。

友よ この
浮世の外の世界に腰を下さう
息の根がとまつたやうに。
しらじらに仄くは
静寂しずかさに身ぶるひする樹々の
ふりこぼす粉雪である。

雪の消えた風景

2020年03月02日 | 春を呼ぶ朝


2012年3月 大沼公園
エゾフクロウの巣を探しながら林道をゆっくり走行したが、巣は見つからない。
途中で行き交う人も車もなく、迫りくる夕暮れのなか、あてもないのんびりとした時間が楽しかった。

大村正次著「春を呼ぶ朝」―故郷の電車―

 雪の消えた風景

世界を俺達のものにしようと
くれから勇敢に降り積もった雪。
寒風に躍りくるひ
どこもかも眞白にぬりこめた雪。
ちつぽけな人間の文明を嘲笑し
吹雪の凱歌をあげ
屋根を越えてもりあがつた雪。
踏みにじられて かんかんに凍てついた雪。
北国の雪。
雪は春の報せが来ても 泰然として積み上がり
四月の南風をきいてはじめて季節を知り
漸くあの獰猛どうもう相貌すがたをうしなひかけると
朝起きるごとにがつさり、、、、と減り
それでもこの世から消え失せた。
雪よ 俺はいま
暗然としておまへの行方をかんがへる。

おまへが荒して去った俺達の庭
漸く春を迎へて輝く眸に
それはなんといふ痛ましい風景であらう。
梅、松、黐木もちのき等ひし折れた枝をぶら下げ
納屋の軒は半ば傾き、雨樋は弓のやうに折れ曲り
落ちた屋根、石、枝、藁屑、菜つ葉、人参の切株、鰯の頭、カレンダー 
おまへの惨虐の切片
おまへと戦つた生き物の籠城生活の切片が
いりみだれ 雑然として
大地はいま 醜い負傷者達で一ぱいだ。

やがて 北国の春は
綺麗に掃き清められた庭で
晴れやかに迎へられるであらう。
だが雪よ 俺はいま
悄然としておまへの偉力をかんがへる。 

太陽を呑むもの

2020年03月01日 | 春を呼ぶ朝


大村正次著「春を呼ぶ朝」―奔流―

 太陽を呑むもの

大空の瑠璃の階段きざはし
辷りおり 真紅にふと
波上によろめいたお天道様。
あゝそれを呑まうと
さかさまに魚族うををどり、
潮の香よ 夕風よ。
光おがめば
赤子萬匹 岸へ寄る