2012年3月 大沼公園
エゾフクロウの巣を探しながら林道をゆっくり走行したが、巣は見つからない。
途中で行き交う人も車もなく、迫りくる夕暮れのなか、あてもないのんびりとした時間が楽しかった。
大村正次著「春を呼ぶ朝」―故郷の電車―
雪の消えた風景
世界を俺達のものにしようと
寒風に躍りくるひ
どこもかも眞白にぬりこめた雪。
ちつぽけな人間の文明を嘲笑し
吹雪の凱歌をあげ
屋根を越えてもりあがつた雪。
踏みにじられて かんかんに凍てついた雪。
北国の雪。
雪は春の報せが来ても 泰然として積み上がり
四月の南風をきいてはじめて季節を知り
漸くあの
朝起きるごとに
それでもこの世から消え失せた。
雪よ 俺はいま
暗然としておまへの行方をかんがへる。
おまへが荒して去った俺達の庭
漸く春を迎へて輝く眸に
それはなんといふ痛ましい風景であらう。
梅、松、
納屋の軒は半ば傾き、雨樋は弓のやうに折れ曲り
落ちた屋根、石、枝、藁屑、菜つ葉、人参の切株、鰯の頭、カレンダー
おまへの惨虐の切片
おまへと戦つた生き物の籠城生活の切片が
いりみだれ 雑然として
大地はいま 醜い負傷者達で一ぱいだ。
やがて 北国の春は
綺麗に掃き清められた庭で
晴れやかに迎へられるであらう。
だが雪よ 俺はいま
悄然としておまへの偉力をかんがへる。