
「どんな事があっても撃沈させて帰ってくるからね」
「じゃっどん、どげんして帰っとな?」
「ホタルになって帰ってくる」
「だからホタルが来たら僕だと思って、追っ払わないで、よく帰ったと迎えて下さい」
華のときは悲しみのとき 著者:相星雅子
・・・
出撃前夜、
宮川軍曹と知覧の母(島浜トメさん)の最後の会話であった。

特別攻撃隊で散った若者たち・・
「崇高な死」か「無意味な死」か、
ただ云えることは軽々しく二者択一で彼らの死を決めつけることはできない。
もちろん、「崇高な死」と断じることにためらいはあるが、「無意味な死」とする論調はあまりに冷酷で心がない。
わたしは、時代の悲劇に翻弄された痛ましい死としか捉えられなかった。
戦争は許しがたい行為だが、
平和を無傷で手に入れることはできない、それは残酷な現実なのである。

出撃前夜は知覧の宿で最期のご馳走を頂いたそうだが、
それまでは、この三角兵舎で過ごしていた。
そのときのことを思いながら、兵舎のなかを見渡すとこみあげるものがある。
バスツアーでご一緒のご婦人が、眼をうるませて白い枕をやさしく撫でていた。
