
空知管内栗山町生まれで、同町在住の版画家、古林玲美(れみ)さんが「mosaic」のシリーズに取り組んでほぼ10年。
それを機に、北広島郊外のギャラりーで個展を開いています。
古林さんの「Mosaic」シリーズは、数センチ四方の正方形の銅版を、並べて刷った作品で、最大の「Mosaic kiwa」は、10×17個刷った紙3枚組みです。つまり、すべて異なる模様が510あることになります。
「Mosaic みなみ10」は9×7=63、「Mosaic 森の種」の3点は10×15=150と、たくさんの版が使われているので、見飽きるということがありません。抽象的な模様が多いですが、葉や、人の脚などのような線画が描かれている場合もあります。
時々、版がなく紙だけの部分があったり、傾いて刷られていたりして、変化をつけています(そこが、整然と正方形が並ぶジェニファー・バートレットの作品と最も異なるところ)。
3×3=9枚、4×4=16枚の小品は、比較的安く販売しています。

版は、異なる作品では使い回すこともあります。
同一の作品中では同じ版は使っていません。
色もさまざまですが、今回は青や緑系を用いた作品が多いようです。
「あらためて自分の作品を見直してみて、赤系統よりもこっちのほうが好きだということに気づきました」
というようなことを話していました。
会場の周囲が森なので、作品の緑と呼応しあっているようでもあります。
16の版からなる作品でも、それぞれの小さな版に大きな世界があり、それが16もあるわけで、小さいながら広大な世界を包含しているのです。
版画は、最初にエディション(刷り部数)を決めて、一定以上は刷らないように、制作後は版を処分するのが正式なやり方なので、ときに古い版も再利用する古林さんの手法は、まっとうな版画家の目からだと、邪道に見えるそうです。
でも、筆者からすれば、おもしろいんだからいいんじゃないかと思うんですけどねえ。

今回は、mosaicシリーズに至る以前の作品「いぶきうごめく原種」(2005年)、「空の槍」(06年)も展示しています。
モノトーンの抽象的な作品で、精神的なもの(苦悩や衝動など)を反映させたようにも見えます。そう思って画面に近づいてゆくと、グレーの渦にこちらが巻き込まれそうにもなってきます。
古林さんによると、版画を作る人からはこちらの方が評価が高いことがあるとのこと。作る立場としては、つらい面もあるそうです。自らの精神をさらけ出すような感じだからでしょうか。
さて、今後、「Mosaic」シリーズは続いていくのでしょうか。10年を区切りにして新しい作品に挑戦していくのでしょうか。注目の個展でした。
2016年5月23日(月)~25日(水)、30日(月)~6月1日(水)午前10時30分~午後3時30分
黒い森美術館(北広島市富ケ岡509)栗山町在住。mosaicシリーズ以前の作品も。
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■【告知】古林玲美展 mosaic days (2012)
■古林玲美展 mosaic (2008)
●黒い森美術館への道順
・中央バス「広島線」で「竹山」降車、約680メートル、徒歩8分