goo blog サービス終了のお知らせ 

北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

『赤れんが庁舎の絵画集』

2020年08月04日 21時46分19秒 | つれづれ読書録
 地元の図書館に珍しい本が開架で並んでいたので借りてきたシリーズの第2弾。
第1弾『太平洋戦争名画集』はこちら

 道庁赤れんが庁舎の中に、北海道ゆかりの画家に依頼して描いてもらった、開拓の歴史の絵がたくさん掛かっているのは知っていましたが、北海道がそれをまとめた画集を出版しているとは知りませんでした。
 最終ページに
「昭和46年3月発行  編集発行 北海道総務部管財課  印刷 株式会社須田製版」
と記されています。価格などの記載はないので、非売品と思われます。

 なお、赤れんが庁舎のことを「旧庁舎」と呼ぶ人がときどきいますが、いまも現役で道庁の一部として使用されているので、その呼称は正しくありません。

 正直なところ、庁舎の内部は薄暗く、スポットライトなどもないので、何が描かれているのか判然としない絵も多いので、こういう画集は助かります。

 道のサイトにも「北海道開拓の歴史を題材にした絵画」( http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/sum/sk/akarennga-kaiga.htm )というページがありますが、画像はなく、タイトルと作者名、「掲額場所」が書かれているのみです。
 このサイトと本の間に、作者名・題などの食い違いはありません(掲載順は前後しています)。

 また、本で興味深いのは、森田沙伊「明治天皇の行幸」の図版がないことです。

「再調整によりお持ち帰りのため、本紙 ママ発行まで未着ですので掲載できませんことをおわびいたします。」

と書いてあります。お持ち帰りって、みよしのギョーザじゃないんだから…。

 「絵画一覧」と題された目次ページを以下に書き写します。


前  史
 阿寒湖畔の松浦武四郎 安政2年3月(旧暦) 阿寒湖畔 200号(日本画)  岩橋 英遠

開拓政策を進めた人たち
 札幌本府の建設   明治2年11月(旧暦) 札幌市円山の丘 100号(洋画)   岩船 修三
 開拓計画を練る  明治6年春 東京芝の開拓使出張所の一室 150号(洋画) 久保 守
 島松での別離   明治10年4月16日 島松元駅逓附近 150号(洋画)   田中 忠雄
 明治天皇の行幸   明治14年9月5日 森町海岸 80号(日本画)      森田 沙伊

開拓の先駆者たち
 屯田兵の開墾   明治24年9月 永山町 100号(洋画)          武田 範芳
 伊達に入った人びと 明治7年夏 伊達町長流川流域 120号(洋画)      小川原 脩
 入植地の測設   明治19年秋 新十津川町 80号(洋画)         亀山 良雄
 晩成社の開拓   明治20年代秋 帯広市 120号(洋画)          橋本 三郎

産業をおこす
 北にのびる稲作   明治6年秋 恵庭市島松沢 100号(日本画)      尾山 幟
 畜産の導入     明治10年夏  札幌市真駒内 150号(洋画)       中村 善策
 冬山造材     明治30年代冬 天塩川流域(中川・下川) 50号(洋画)  田辺三重松
 鰊漁の盛況      明治30年代4月 積丹半島(古宇郡) 120号(洋画)    国松 登
 ビール醸造所の開業 明治9年9月23日 札幌市 50号(洋画)         今田 敬一
 石炭をはこぶ    明治15~20年代夏 幌内炭山 120号(洋画)      菊地 精二
 小樽港の築港     明治30年代春 小樽港 150号(洋画)         松島 正幸
 札樽間道路の開さく 明治12年春 小樽市張碓附近 80号(洋画)       一木万寿三
 いなごとのたたかい        明治13年夏 白老郡社台附近 80号(洋画)  小谷 博貞

住みついた人々の生活
 函館街頭風景   明治20年代 函館市 200号(日本画)        片岡 球子
 開拓地の教育   明治30~40年代  北見枝幸地方 50号(洋画)     小寺 健吉


 「前史」はないでしょ、「前史」は。
 なんですか、この章立て。

 もし、いま北海道が似たような企画をたてれば、ここまでアイヌ民族を外した歴史を組み立てるようなことはないでしょう(ないと思いたい)。

 岩橋英遠の名誉のためにいっておくと、画面下方に描かれている8人のうち6人はアイヌ民族で、武四郎に指さして道を教えるさまが威厳ある様子に描かれています。これは、アイヌ民族からも異論はない描写だと思われます。
 画集で見た限りでも、筆者としては、この作を一位に置きたい、そんな思いに駆られる優作といえます(総じて洋画勢は、ふだん註文画など手がけないせいなのか、人物の描写が硬い)。

 この20人は、いずれも戦後道内の美術界で重きをなした画家。
 ただし、すべて日本画家と洋画家で、一原有徳さんのような版画家は選ばれていません。一原さん、抽象だしな~、と思ったんですが、小谷博貞さんの具象画って、考えてみたら珍しいよな。
 委嘱から半世紀を経て、みなさん故人となっています。
 筆者がお目にかかったことがあるのも小谷さんと小川原脩さんだけです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。