2013年5月29日の北海道新聞室蘭・胆振版を偶然見て、大きな衝撃を受けている。
私は、北浦さんががんで闘病中だったことも、亡くなったことも知らなかった。
北浦さんは室蘭在住の画家。
76歳だった。
北浦さんほど、知的で、整序された風景画を制作する人を、私は知らない。
写実的な風景画を描く画家は数多い。北浦さんの絵も、一見すると、明るい色彩の、よくある穏健な風景画と受け止められるかもしれない。しかし、よく見ていくと、構図の切り取り方といい、直線の絶妙な導入といい、すみずみまで細心の注意が払われて構図が成り立っていることがわかり、目が離せなくなる。
写実的にして、しかも構築的な風景画とでもいえるだろうか。
色彩も、日勝峠附近の山林を題材に描いていた90年代半ばは、モノトーン調であったが、21世紀に入るあたりから、明るい黄緑を多用した濁りのない色彩が全面を覆っていく。
暗い色調がともすれば「重厚」と評価されがちな中で、この色合いの明るさ、明快さも、北浦さんの絵画の美質といえる。
北浦さんは1936年(昭和11年)、栃木県安蘇郡堀米町(現佐野市)生まれ。
39年に赤平に渡り、41年に美唄に移住した。おそらくご家族が炭鉱の仕事についたためと推測するが、このあたりの事情については、確認できぬままになってしまった。
美唄東高校在学中に、第9回全道展に入選した。
全道展については、58年の第13回展で札幌市教育長賞を受けている。ただし、このときは版画部門での受賞である。
63年に会友。64年に会友賞を得て(版画)、75年に会員に推挙されるが、97年に退会している。
北海道学芸大(現道教大)に進み、58年卒業。67年まで美唄中の教壇に立った。その頃の教え子に、彫刻家の安田侃さんがいる。
67年に室蘭に移住。文化女子大室蘭短大の教授として後進を育てる。
それ以降の略歴については、下のほうにコピーペーストしておいた。
北浦さんは風景画に取り組む以前には人物を描いていたこともあったし、版画制作も決して片手間とはいえない仕事であったと思う。
自動車の運転免許を持っていないため、列車やタクシーで風景を探しにいっていた。
札沼線のひなびた駅でおりて、プラットフォームでスケッチブックを広げ、次の列車で帰ったこともあると聞いた。
北浦さんは、展覧会のおりにはかならずご案内を下さったほか、あるとき、飯田善国の「彫刻家」(岩波新書)を贈ってくださったことがあった。
まだまだ新作に、腕をふるっていていただきたかった。
残念で、これ以上書くことがかなわない。
ご冥福をお祈りいたします。
1970年●札幌時計台ギャラリー個展(以後札幌個展14回)
1975年●札幌時計台文化会館美術大賞展出品(90年同展出品)
1984年●北海道の美術84イメージ「道」展優秀賞(北海道立近代美術館)
1984年●室蘭市文化連盟芸術賞受賞
1988年●「鏡の国の美術館」展出品(北海道立近代美術館)
1991年●東京銀座・文藝春秋画廊個展(94、04年同個展)
1992年●「生まれ出づる悩み」展出品(岩内町、荒井記念美術館)
1996年●油絵自選展(室蘭市文化センター)
1998年●蒲原静子・山田一夫・北浦晃三人展「11月の風」(以後室蘭で隔年開催)
1999年●横浜市、ギャラリー伊勢佐木町個展
2000年●第7回新作家展出品(東京セントラル美術館)(以後同展出品)
2002年●第9回新作家展K氏賞受賞(東京都美術館)
2002年●自選による油彩画展(美唄市総合体育館)
2003年●札幌市、ギャラリーどらーる個展
2003年●自選による版画100展(美唄市民会館大会議室)
2004年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅰ・人物(美唄市民会館大会議室)
2005年●札幌時計台ギャラリー個展
2005年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅱ・静物(美唄市民会館大会議室)
2006年●絵葉書集「スケッチ美唄」美唄新聞社より発行(07年第2集発行)
2006年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅲ・風景(美唄市民会館大会議室)
2007年●個展「北海道の風景」(室蘭市文化センター)
2007年●油彩画展「北海道の風景・美唄の風景」(美唄市民会館大会議室)
2008年●第1回道内在住作家洋画展出品(DAIMARU札幌店)(09、10年同展出品)
2008年●個展「北海道の四季」(札幌時計台ギャラリー)
2009年●個展「北海道の風景」(ギャラリー八重洲・東京)
2009年●油彩画展「北海道の風景」(美唄市民会館大会議室)
2010年●日本山岳画協会会員となり、同協会展(東京交通会館)出品
2010年●自選による絵画展「1966~1986」(美唄市民会館大会議室)
●新作家美術協会委員・日本山岳画協会会員・日本美術家連盟会員
【告知】北浦晃絵画展・木版画旧作小品展 (2012年)
■北浦晃個展 (2011年)
■日本山岳画協会の創立75周年画集をご恵送いただきました
■北浦晃油彩画展「北海道の風景」(2009年)
■美唄市民会館に来ています(2009年12月)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年7月、画像なし)
■北浦晃個展「北海道の四季」(2008年8月)
■北浦晃「北海道の風景・美唄の風景」 (07年9月、画像なし)
■北浦晃自選による油彩画展 テーマ別III・風景(06年9月)
■北浦晃 自選による油彩画展テーマ別・1・「人物」 (04年)
■北浦晃 自選による版画100選 (03年10月)
■北浦晃個展 (03年8月、画像なし)
■北浦晃油絵個展(01年、画像なし)
私は、北浦さんががんで闘病中だったことも、亡くなったことも知らなかった。
北浦さんは室蘭在住の画家。
76歳だった。
北浦さんほど、知的で、整序された風景画を制作する人を、私は知らない。
写実的な風景画を描く画家は数多い。北浦さんの絵も、一見すると、明るい色彩の、よくある穏健な風景画と受け止められるかもしれない。しかし、よく見ていくと、構図の切り取り方といい、直線の絶妙な導入といい、すみずみまで細心の注意が払われて構図が成り立っていることがわかり、目が離せなくなる。
写実的にして、しかも構築的な風景画とでもいえるだろうか。
色彩も、日勝峠附近の山林を題材に描いていた90年代半ばは、モノトーン調であったが、21世紀に入るあたりから、明るい黄緑を多用した濁りのない色彩が全面を覆っていく。
暗い色調がともすれば「重厚」と評価されがちな中で、この色合いの明るさ、明快さも、北浦さんの絵画の美質といえる。
北浦さんは1936年(昭和11年)、栃木県安蘇郡堀米町(現佐野市)生まれ。
39年に赤平に渡り、41年に美唄に移住した。おそらくご家族が炭鉱の仕事についたためと推測するが、このあたりの事情については、確認できぬままになってしまった。
美唄東高校在学中に、第9回全道展に入選した。
全道展については、58年の第13回展で札幌市教育長賞を受けている。ただし、このときは版画部門での受賞である。
63年に会友。64年に会友賞を得て(版画)、75年に会員に推挙されるが、97年に退会している。
北海道学芸大(現道教大)に進み、58年卒業。67年まで美唄中の教壇に立った。その頃の教え子に、彫刻家の安田侃さんがいる。
67年に室蘭に移住。文化女子大室蘭短大の教授として後進を育てる。
それ以降の略歴については、下のほうにコピーペーストしておいた。
北浦さんは風景画に取り組む以前には人物を描いていたこともあったし、版画制作も決して片手間とはいえない仕事であったと思う。
自動車の運転免許を持っていないため、列車やタクシーで風景を探しにいっていた。
札沼線のひなびた駅でおりて、プラットフォームでスケッチブックを広げ、次の列車で帰ったこともあると聞いた。
北浦さんは、展覧会のおりにはかならずご案内を下さったほか、あるとき、飯田善国の「彫刻家」(岩波新書)を贈ってくださったことがあった。
まだまだ新作に、腕をふるっていていただきたかった。
残念で、これ以上書くことがかなわない。
ご冥福をお祈りいたします。
1970年●札幌時計台ギャラリー個展(以後札幌個展14回)
1975年●札幌時計台文化会館美術大賞展出品(90年同展出品)
1984年●北海道の美術84イメージ「道」展優秀賞(北海道立近代美術館)
1984年●室蘭市文化連盟芸術賞受賞
1988年●「鏡の国の美術館」展出品(北海道立近代美術館)
1991年●東京銀座・文藝春秋画廊個展(94、04年同個展)
1992年●「生まれ出づる悩み」展出品(岩内町、荒井記念美術館)
1996年●油絵自選展(室蘭市文化センター)
1998年●蒲原静子・山田一夫・北浦晃三人展「11月の風」(以後室蘭で隔年開催)
1999年●横浜市、ギャラリー伊勢佐木町個展
2000年●第7回新作家展出品(東京セントラル美術館)(以後同展出品)
2002年●第9回新作家展K氏賞受賞(東京都美術館)
2002年●自選による油彩画展(美唄市総合体育館)
2003年●札幌市、ギャラリーどらーる個展
2003年●自選による版画100展(美唄市民会館大会議室)
2004年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅰ・人物(美唄市民会館大会議室)
2005年●札幌時計台ギャラリー個展
2005年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅱ・静物(美唄市民会館大会議室)
2006年●絵葉書集「スケッチ美唄」美唄新聞社より発行(07年第2集発行)
2006年●自選による油彩画展・テーマ別・Ⅲ・風景(美唄市民会館大会議室)
2007年●個展「北海道の風景」(室蘭市文化センター)
2007年●油彩画展「北海道の風景・美唄の風景」(美唄市民会館大会議室)
2008年●第1回道内在住作家洋画展出品(DAIMARU札幌店)(09、10年同展出品)
2008年●個展「北海道の四季」(札幌時計台ギャラリー)
2009年●個展「北海道の風景」(ギャラリー八重洲・東京)
2009年●油彩画展「北海道の風景」(美唄市民会館大会議室)
2010年●日本山岳画協会会員となり、同協会展(東京交通会館)出品
2010年●自選による絵画展「1966~1986」(美唄市民会館大会議室)
●新作家美術協会委員・日本山岳画協会会員・日本美術家連盟会員
【告知】北浦晃絵画展・木版画旧作小品展 (2012年)
■北浦晃個展 (2011年)
■日本山岳画協会の創立75周年画集をご恵送いただきました
■北浦晃油彩画展「北海道の風景」(2009年)
■美唄市民会館に来ています(2009年12月)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年7月、画像なし)
■北浦晃個展「北海道の四季」(2008年8月)
■北浦晃「北海道の風景・美唄の風景」 (07年9月、画像なし)
■北浦晃自選による油彩画展 テーマ別III・風景(06年9月)
■北浦晃 自選による油彩画展テーマ別・1・「人物」 (04年)
■北浦晃 自選による版画100選 (03年10月)
■北浦晃個展 (03年8月、画像なし)
■北浦晃油絵個展(01年、画像なし)
北浦さんは誰とでも分け隔てなく気さくに話してくださる、ほんとうにいい方でした。
ただ、近作の話はずいぶんしたんですが、70~80年代の緊張感にみちた空間構成の作品についてはほとんど聞く機会が無いままで、残念でなりません。
もっといろいろお聞きしておけばよかったなと、思います。
知っている方が亡くなると、いろんなことを考えさせられます。時間の不可逆性についても。
なんか、小津安二郎の「小早川家の秋」のラストを思い出してしまった…。