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北海道美術ネット別館

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会田誠氏の絵に反対するのは自由だが、「撤去せよ」という要求は必ず自分たちに返ってくるだろう。

2013年02月05日 07時46分06秒 | つれづれ日録
 先週、2013年1月28日あたりから、Twitterのアート関係者あたりで話題になっているのが、森美術館 http://www.mori.art.museum/jp/index.htmlで開かれている会田誠展に対し、ポルノ被害と性暴力を考える会 http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/ が、抗議と撤去を申し入れたという件である。

 とくに問題となっているのが「犬」という作品である。
 上の抗議ページを読めばわかるが、四肢を切断されてそこに包帯を巻かれた全裸の若い女性が雪の上で四つん這いになり、首には首輪を巻かれているという絵である。
 画像を貼り付けるわけにもいかないので、検索結果のURLを貼っておく。人によっては、グロテスクに感じるかもしれないので、閲覧には注意してください。(個人的には、たいしたことないと思うが)

□ “会田誠 犬”の画像検索結果 http://images.google.co.jp/search?sourceid=navclient&ie=UTF-8&hl=ja&rlz=1T4MXGB_jaJP511JP511&q=%e4%bc%9a%e7%94%b0%e8%aa%a0%e3%80%80%e7%8a%ac&biw=1264&bih=492&sei=UFQPUefkMM7IkQWuy4C4CA&tbm=isch

 ここで筆者は、会田誠の作品についてあれこれ論じるつもりはない。
 そこが問題の鍵ではないと、筆者は考えるからだ。

 結論を言ってしまうと
「その作品を批判すること」と「その作品の撤去を求めること」とは、全く次元の異なる話である、ということだ。

 筆者は、くだんの会田作品を擁護するつもりはさらさらないし、抗議団体の言うことはもっともな部分も多いと思う(いろいろ細かい事実誤認はあるようだが)。
 「四肢欠損などの身体障がい者に対する差別と侮蔑の行為です。先天的であれ後天的であれ四肢ないしその一部を失っている人々を全裸にして犬扱いすることが許されるでしょうか?」
といわれれば、ごもっともとうなずくしかない。

 しかし、この作品は、誰でも広くアクセスできるところに公開されていたわけではない。
 森美術館という、お金を払って、それなりの心の準備ができている人が入館する場所に掲示されていたものである。
 筆者はこの展覧会は見ていないが、見た人によると、「18歳未満入場禁止」のコーナーを設けて、くだんの「犬」もその中に陳列するなどして、さまざまな配慮をしていたそうである。
(ゾーニングについては、ブログ「Parsleyの「添え物は添え物らしく」」が非常にわかりやすい)

 百歩譲って、これが公立美術館であれば、「税金の使い方としてうんぬん」という議論が成立しそうだが、森美術館は私立の施設である。

 見たい人だけが行く施設の中に展示されている絵を、自分たちがだめだと思うから撤去せよというのは、どんなものだろう。
 見たい人の見る権利はどうなるのだろう。

 筆者が懸念するのは、会田作品の撤去を求める団体が、別の展覧会で、例えば「反天皇制」をテーマにした絵があったとして、撤去を求められたらどう対処するのだろうということだ。

「天皇制は日本の根幹であり、われわれ日本人の精神と伝統の骨格をなすものです。これを否定し、侮辱する絵画が存在することすら、想像できず、屈辱的な事態であります。日本人全てに対する侮辱であり、断じて許されません」
 

 これは、仮にいま筆者が作ってみた文である。
 筆者個人としてはこの文の内容には同意しない。
 しかし「天皇陛下を侮辱するのは、筆舌に尽くしがたい苦痛だ」という人がいてもおかしくはない。

 「障害者に対する差別と侮辱」という理由で絵が撤去され、表現の自由が制限されるのであれば、「天皇陛下に対する差別と侮辱」という理由で表現の自由が制限されてもなんらおかしくはないという理屈になってしまう。

 だから、会田作品に反対する人たちは、言論の力でこきおろすべきであって、表現そのものを否定するような行為に走ってはいけないと、筆者は考える。
 その行為は、かならず、わが身に返ってくるだろう。



 なお、まさかそんなのはいないとは思うが、会田誠の絵の撤去を求める自分たちは反体制派であるから絵を撤去させても言論・表現の弾圧にはならず、天皇制を奉祝する側は体制側なので彼らが絵の撤去を求めれば言論・表現の自由の弾圧になると考えている左翼が万一いたとしたら、その人は左翼でもなんでもなく、単なる馬鹿です。



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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (あさの)
2013-02-06 09:12:00
>会田作品に反対する人たちは、言論の力でこきおろすべきであって、表現そのものを否定するような行為に走ってはいけないと、筆者は考える。

そのとおりだと思います!
最近とかく、反対意見を全否定する傾向が右も左も強すぎますね(もともとかもしれないけど)
返信する
あさのさん、こんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2013-02-06 21:35:35
ありがとうございます。
とりあえず、犯罪に触れないかぎり、言ったり表現したりする自由は、誰にでもあるのが基本だと思うのです。
返信する

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