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北海道美術ネット別館

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■宮地明人展 それぞれの情景 2023年12月4日~24年1月13日、岩見沢)

2024年01月12日 22時33分44秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 宮地明人さんは1974年生まれ、岩見沢の画家。 
 今回の特別企画展では、2003年から近作まで大作14点と小品26点を展示していますが、とにかくうまい。
 最初に展示してあるのは03年「Black Eye」(キャンバス、アクリル。1940×1620ミリ)。寒冷地用とおぼしき大きな帽子をかぶった女性を画面の下半分に配し、上方には、板などが張り渡されているように描かれています。

 薄手のテープで写真が表面に貼り付けられているように見えると思いますが、実はこれ、描いているのです!
 まさにトロンプユイル、超絶技巧といっていいでしょう。
 20代でここまで描く技倆を有していたのです。

 ただ、宮地さんのすごいのは、単にリアルに描けるというところではないのです。
 
 
 次の「paradox」は2006年の作品。
 このあたりからだんだん顕著になってくるのは、まるで生き写しのように描写された女性のすぐ横に絵の具を厚く塗った部分があるなど

 「これが絵画だ

ということを、あえて表示しているのです。
 メタ的とも自己言及的ともいえるでしょう。

 この作品も、トマトの落下する様子は、透視図法の描写法とは異なり、まるで壁の上を落ちているようです。
 板の青く塗った部分がはげかけているあたり、非常にリアルなのですが。

 ほかにも13年の「paradox」は、女性の顔に、白い霧のように絵の具が薄く重ねられて、まるで写真みたいな描写をわざと壊しています。
  
 同年の「そこに在るということ」から、描法が変化します。

 人物はセピア調のモノトーンで描き、イチゴや果実などをパートカラーで赤く描写するようになりました。
 いわば「これは絵だよ」と主張する仕方が変わったのです。

 18年からは、背景が抽象画のような描き方になり、21年からは果実の色も消えてほぼ全面的なグリザイユ(単色)の絵になってきています。

 その結果、画面からは
「人間の存在とは何か」
という哲学的な問いかけを強く感じるようになったと、筆者には思われます。


 一方、「プルーンと水」「夏の記憶」「マルメロとラズベリー」といった小品は、描写力の高さをシンプルに楽しめる作品です。
 静物画も人物画も、ごたつくところがまったくなく、少ない要素でうまくまとめられています。

 宮地さんは独立展と全道展の会員。


2023年12月4日(月)~24年1月13日(土)午前10時~午後6時(木曜は午後1~6時)、水曜休み、12月29日~1月3日休み
岩見沢市絵画ホール・松島正幸記念館(岩見沢市7西1)
一般210円、高大生150円(中学生以下無料)※案内状を持参すれば無料です


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第11回サッポロ未来展 RENEWAL (2012)
第8回サッポロ未来展 (2009)
第7回サッポロ未来展 (2008)
第6回サッポロ未来展 (2007)





・JR岩見沢駅から約1.06キロ、徒歩14分

・中央バスの都市間高速バス「高速いわみざわ号」に乗り「市民会館前」から約620メートル、徒歩8分

岩見沢市絵画ホール・松島正幸記念館への道順(アクセス)


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