(長文です)
北海道新聞2009年4月17日夕刊社会面から。
なお、この記事は、早版(締め切りの早い版)には大きく出ていましたが、印刷所から近い札幌、旭川市内などに配布される遅版ではボツになりました。
このこと自体は、早版でニュースが少なく、遅版からたくさんニュースが入ってくる場合には、よくある話です。
記事は、共同通信の配信のようです。
引用部分にはありませんが、くだんのコラージュは、1986年に富山県立近代美術館で展示されたところ、右翼に攻撃されたり、県議会で問題となり、作品は撤収、図版の掲載された図録は焼却されたという経緯があります。
(美術関係者で、知らないというのは許されない、有名な事件です)
筆者は、実物を見たことはありませんが、印刷物で見る限りは、昭和天皇の顔が用いられているというだけで、その顔を愚弄しているとか、ひどく傷つけているとか、その手のものではありません。
アンディ・ウォーホルがマリリン・モンローや毛沢東の肖像をたくさん複製したことが問題になったとは寡聞にして知りませんから、1986年当時は、
「天皇陛下のお顔をコラージュするなんて!」
という理由だけで問題になったものと思われます。
あのころは、天皇・皇室タブーというのが根強くありました。
もちろん、今もあるでしょうけど、その強度はかなり弱まっていると思います。
この作品が、東京などで昨年展示されたときに、右翼がおしかけて騒ぎになったという話もききません。
先の天皇を歴史的人物と呼ぶにはちょっと早いかもしれませんが、昭和天皇ご存命のおよそ四半世紀前と似たような対応に走るというのは、沖縄県立美術館さん、あまりに腰がひけすぎでないかい? という気もします。
というか、「表現の自由」がどうの、という以前の、しょぼくて情けない対応だと思うのです。
これが、天皇制を激しく論難する作品だとか、裕仁氏を侮蔑しており名誉棄損の可能性があるとか、そういうレベルであれば、「表現の自由」をめぐって議論が起きるのはまだわかりますが(それでも、一般論では、作品を引っ込めるべきではないと思いますが)、大浦さんの作品はそういうものではないでしょう。
沖縄在住の芥川賞作家、目取真(めどるま)俊さんのブログ「海鳴りの島から」では
と、厳しく批判しています。
たしかに、公務員は憲法に従うべきですから、県立美術館が自ら言論・表現の自由をあらかじめ奪うようなことはすべきではないでしょう。
そして、目取真さんは
とも指摘されています。
なお、「風のまにまに」というブログにもくわしく報じられていますので、関心のある方はごらんください。
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20090414
大浦さんへのインタビューはこちら。
http://www.cinra.net/interview/2008/08/05/215300.php
「平成」も21年。
まだ「皇室タブー」が生き残っていることには、あらためてビックリです。
北海道新聞2009年4月17日夕刊社会面から。
なお、この記事は、早版(締め切りの早い版)には大きく出ていましたが、印刷所から近い札幌、旭川市内などに配布される遅版ではボツになりました。
このこと自体は、早版でニュースが少なく、遅版からたくさんニュースが入ってくる場合には、よくある話です。
記事は、共同通信の配信のようです。
沖縄県立博物館・美術館(那覇市、牧野浩隆館長)で開催中の憲法9条をめぐる戦後美術展に出品予定だった、昭和天皇をモチーフにした版画作品について、県教育委員会と同館が教育的見地を理由に展示から除外していたことが分かり、表現の自由や公立美術館のあり方について物議を醸している。
作品は昭和天皇の写真と、原爆のきのこ雲や裸婦、人体解剖図などをコラージュした14点の連作版画「遠近を抱えて」。川崎市の美術家大浦信行さん(60)が30代のころ制作した。
同館で今月11日から始まった「アトミックサンシャインの中へ」沖縄巡回展に、東京とニューヨークでの先行展と同様に展示予定だったが、企画者の渡辺真也さんによると、開催決定前に館側から「この作品を出すなら展覧会は開けない」と自粛要請を受け、応じたという。
牧野館長は「美術館は県教委の下にある教育施設であり、公正中立を求められる。作品は教育上ふさわしくないと判断した。企画者とは合意しており問題ない」と話す。(以下略。引用終わり)
引用部分にはありませんが、くだんのコラージュは、1986年に富山県立近代美術館で展示されたところ、右翼に攻撃されたり、県議会で問題となり、作品は撤収、図版の掲載された図録は焼却されたという経緯があります。
(美術関係者で、知らないというのは許されない、有名な事件です)
筆者は、実物を見たことはありませんが、印刷物で見る限りは、昭和天皇の顔が用いられているというだけで、その顔を愚弄しているとか、ひどく傷つけているとか、その手のものではありません。
アンディ・ウォーホルがマリリン・モンローや毛沢東の肖像をたくさん複製したことが問題になったとは寡聞にして知りませんから、1986年当時は、
「天皇陛下のお顔をコラージュするなんて!」
という理由だけで問題になったものと思われます。
あのころは、天皇・皇室タブーというのが根強くありました。
もちろん、今もあるでしょうけど、その強度はかなり弱まっていると思います。
この作品が、東京などで昨年展示されたときに、右翼がおしかけて騒ぎになったという話もききません。
先の天皇を歴史的人物と呼ぶにはちょっと早いかもしれませんが、昭和天皇ご存命のおよそ四半世紀前と似たような対応に走るというのは、沖縄県立美術館さん、あまりに腰がひけすぎでないかい? という気もします。
というか、「表現の自由」がどうの、という以前の、しょぼくて情けない対応だと思うのです。
これが、天皇制を激しく論難する作品だとか、裕仁氏を侮蔑しており名誉棄損の可能性があるとか、そういうレベルであれば、「表現の自由」をめぐって議論が起きるのはまだわかりますが(それでも、一般論では、作品を引っ込めるべきではないと思いますが)、大浦さんの作品はそういうものではないでしょう。
沖縄在住の芥川賞作家、目取真(めどるま)俊さんのブログ「海鳴りの島から」では
日本の憲法には表現の自由や検閲の禁止も謳われていたはずだが、憲法九条を主題とした美術展でそれを侵害するのだから、呆れはてる弾圧事件である。
と、厳しく批判しています。
たしかに、公務員は憲法に従うべきですから、県立美術館が自ら言論・表現の自由をあらかじめ奪うようなことはすべきではないでしょう。
そして、目取真さんは
牧野浩隆館長は、稲嶺恵一前沖縄県知事の時代に副知事を務めていた。今回の記事に接して、10年前の1999年に起こった沖縄県平和祈念資料館の展示内容改竄事件を思い出した人も多いはずだ。日本軍による住民虐殺や壕追い出しなどを表した展示に対し、監修委員や専門委員を無視して、勝手に内容を改竄しようとした県三役の一人が、当時の牧野副知事だった。
とも指摘されています。
なお、「風のまにまに」というブログにもくわしく報じられていますので、関心のある方はごらんください。
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20090414
大浦さんへのインタビューはこちら。
http://www.cinra.net/interview/2008/08/05/215300.php
「平成」も21年。
まだ「皇室タブー」が生き残っていることには、あらためてビックリです。
で、そういった風潮は、何かと「マスゴミ、マスゴミ」と連発してさもメディアリテラシーに強いそぶりを見せながら、その実、自分にとって都合が良く耳障りのいい言説にしか触れようとしないヘタレ右翼どもがネットに乗っかって補強しているように思いますね。
もっとも、今回の措置は、熱湯欲じゃなかったネット右翼がどうたらというより、美術館長が保守的な地元財界出身者で、以前にも別の施設で沖縄戦の展示内容を改変したことがモンダイになった人物だとのことです。
気を回しすぎなんですよね。
だいたい。