マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

泣かせてよ、とろりとからしそばで。

2018-04-22 00:16:32 | 京都

京都の中華料理については、姜尚美さんの力作「京都の中華」(幻冬舎文庫)に詳しいが、

さかのぼると、大正13年創業の「支那料理ハマムラ」に始まるという。

港があり、居留地のあった神戸や大阪に比べて、京都は雑居地となるのが遅れたそうな。







関西人にはおなじみのマーク。宣伝のため一般公募、たしか立命館の学生の作。

このハマムラで料理長を務めた王華吉という方が、「飛雲」、「第一楼」を経て「鳳舞」という店を持った。 

この「鳳舞」系と、祇園の路地奥にある「盛京亭」系の二つの流れがある京都中華。


瀟洒な「鳳舞」の建物。中華料理店に見えない。

鯉が泳ぐ池のある庭園のある個人店が2009年まであった。



 



ここから多くの店が独立しているが、もっともよく特長を残す一軒が、

河原町二条にある「鳳泉」。

王さんの下、42年もの間、鳳舞で厨房を務めたのが、ここのご主人。



 



我ら鳳舞に間に合わなかったので、ここからしか偲ぶことが出来ないが、

まず油の匂いがしない。 掃除が行き届いている。 床や壁、メニューなどのべたつきが無い。



本格的な夜の時分どきには早いので、のんびりやらせてもらうことに。

となりには常連らしき高齢のご婦人がラーメンなぞ食べてらっしゃる。 いいな。 

まずは紹興酒を常温でもらう。


 
  



 ピータンなぞ、もらうことにした。

 何の変哲もない、化粧っ気のないのがよござんす。



 


 
 さて、と、何をもらおうか。

 

 
 


 来訪の目的は、からしそばと決まっている。

 あとは当てずっぽうだが、焼売なんぞを。 

 

 



 後で知ったのは、このメニューの書き方も鳳舞ゆずり。

 品数を絞り込み、盛り付けがシンプルなのも鳳舞ゆずりだそう。 

 それに驚いたのは、厨房が静かなこと。

 我らが知る中華の厨房は中華鍋にお玉の音がカンカンして、炎はボーボー、

 その間に中国語の破裂音が飛び交うというもの。

 その騒がしさが一切感じない。

 どうも、その辺もまた、京都の中華の特長のようだ。


 
 焼売が来た。

 この不揃いなところも、手造り感満載。

 あとで知ったが、これもここの看板メニューなんだって。



  
 


 クワイのカリッとした食感が心地よい。

 酢醤油に溶き芥子を加えて、あっさりとした持ち味。

 6時過ぎなのに、後から来た客には「もう売り切れてしまって…」と弁解している。

 まだ夜はこれからなのに、品切れは早過ぎるんぢゃないの?

 
 胸騒ぎがして、早めの注文をした。

 「からしそばありますか?」

 と問うと、「あります。ローメン一丁」と通した。

 暫くして、持ってきたのがこれ。

 

  



 「エビカシワそばです」

 と言われ、間違いかと思い、

 「え?カラシそばを頼んだんだけど」

 というと、若いホール係、不安になったのか聞きに戻った。

 そして「これがカラシそばです」

 こっちが物知らずだった、と赤面。


 イメージではもっと芥子色を想像してた。 
 
 しかし食べるとほんのりと和芥子の風味が立ち昇って来る。

 辛味はあくまでも抑えめ。

 もっとツンと来るのかと思ってた。

 手元で芥子を増量した。

 

 あっさりしてるが、鶏・海老は多くて食べ応えあり、

 途中で酢や醤油を足したり、好みで塩梅を替えるのもいいだろう。


 
 花街で着物に匂いが移ることはご法度として、ニンニクニラ、ラードなどは不使用。

 芸者衆が一口で食べられるようにしたり、あっさり食べられるように

 タケノコを多用したり、鶏ガラスープに利尻昆布を足してベースとした。

 花街のおかあさんたちにうるさく叱られたと「一之船入」や「斎華」からも聞いたことがある。

 独自の進化を遂げている京都中華。 頑固なまでに残っているのもこれまたおもしろい。




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