散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

自然消滅する「アベノミクス」~「アスノミクス」へ向けて(1)

2015年08月27日 | 経済
二年半前の記事で「私たちの経済学」と書いた。アベノミクスではないエコノミクスが必要との趣旨だ。「円安」で何が起こるのか?国民的負担を招き、大企業・資産者が得をすると!結果は実質GDPが増えない中での格差拡大だ。
 『円安と株高に関する「私たちの経済学」~アベノミクスとは異なる目線から130303』

輸出企業に利益が集中し、その利益は大企業中心の配分に止まる。一方、石油等の輸入品は値上がりし、最終消費者の家計はその打撃を一身に受け、国民全体に広く浅く影響を与える。「株高」は資産を有する人たちに利するだけだ。

筆者の経済に対する見方は今も変わらない。
語呂合わせになるが、“アスノミクス”のアスは「US(私たち)」と「明日(将来を含めて)」を掛けた表現だ。

政府側及びマスメディア側からの経済情報の中で、最近になって顕著に感じられるのはアベノミクスとの表現が消えていることだ。それは、低調なGDP成長率・円安物価値上げ・株価乱高下のパンチによるものなのだろうか。

我が国の実質GDP成長率(2015/8/17発表)は、今年の第2四半期において、対前期比マイナス0.4%(年率マイナス1.6%)となった。それに呼応するかのように、中国経済に関して、上海市場の変調をキッカケに、成長率の鈍化に注目が集まるようになった。更に、中国政府の強引な元切り下げ政策、天津市の大爆発事故に世界中が不気味さを感じたのか、世界の株式市場での株安連鎖が続く。

ところが、アベノミクスの提灯持ち役を務める日経新聞は、つい最近、次の記事を掲載している。
「高収益の日本株、独歩高の可能性も」(前田昌孝編集委員2015/8/12)との表題で株買いを煽る記事を掲載する。株価を巡って楽観、悲観の情報を並記しながら、楽観の内容を比較上位に置き、少しずつ株買いに誘導する典型的なマスメディア記事の手法を用いる。以下だ。

先ずは、輸出企業株の売りを過剰反応と示唆する。
「8/11の東京市場では輸出関連のトヨタ、日産から食品株まで最近の人気銘柄が幅広く下げた。元切り下げの動きに中国経済の深刻さを感じたせいかもしれない。…過剰反応ではないのか。何しろ日本企業の4~6月期決算は絶好調だ。」

続いて企業の体質改善による高収益化を示唆する。
「日本企業が単なる循環を超えて構造的に強くなった可能性もある。企業統治の強化を背景に、資本コストを意識した経営に乗り出している企業も多く、外部環境に振り回されない高収益の確保を目指している。売上高損益分岐点比率は長年の経営努力で着実に低下してきた。これまでの技術開発が実り、製品の国際競争力が高まっているかもしれない。

最後に、株価の高値維持を示唆する。
「日経平均が年初来高値圏で推移しても、不思議ではない。週足チャートを見ると「比較的幅広いセクターで新たな上昇波動が期待できる銘柄が増えつつある」(大和証券・木野内栄治)という。東証1部の平均株価収益率は17.8倍とNY市場の19.5倍を下回る。利益の上方修正が見込めるのならば、買いどころだ。」

この語り口は、マスメディア側が、現政権へ向かって行うリップサービスの典型版がある。

アベノミクスの政策失敗を指摘する論考も、特に政治的思惑に支配されたわけではなく、学的業績を認められた経済学者の間からも多く提出されているのが、現状だ。

しかし、政府の政策は、統計等をしっかりと読み込んだ経済学徒(官庁エコノミストを含めて)によって、それらの資料を駆使し、構成されているとは見えない処に重大な問題がある。

今更、言うまでもないが、高度経済成長を牽引した当時の池田首相は経済学者とも論争した。それを支えたのが下村氏を始めとしたエコノミストであった。そこで、佐藤内閣時代に経済企画庁で活躍した金森久雄氏が経済学者・吉川洋氏の著作「高度経済成長」にコメントを付けられるのだ。
 『経済成長の過程と帰結、社会変動の視点~「高度成長」吉川洋140529』

安倍内閣を支える学者は、リフレ派と呼ばれるグループらしいが、説得力のある議論にぶち当たったことがない。また、批判に正面から論争をしたようにも見えない。これで確かな国策が実施されているとは思えない。

      
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