内閣府から3/9に公表された第二次GDP速報の暦年データ(対前年比)を示す。各値は%で表示されている。
2011 2012 2013 2014
GDP -0.5 1.8 1.6 -0.0
GNI 1.3 1.5 1.8 -0.2
雇用者報酬 1.4 0.9 0.6 -1.0
また、これらの値を評価する際に、長期的な「GDP成長率」の推移を以下の様にまとめておくのが便利である。その年度間の平均成長率は以下になる。
1956―73;9.1% 1974―90;4.2% 1991―2013;0.9%
控訴成長期から安定成長期を経て、現在まで20年井以上に渡って低成長(停滞)期になっており、マイナス成長の年は5回ほどを数える。それでも、リーマンショックを乗り越え、2010年以降はプラス成長を維持し、2013年の実質GDPは過去最高の529兆円を示した。
しかし、1)年金世代が増え、それと共に、2)超高齢化世代の介護、医療の需要も急激に増加する。一方、少子化による3)労働人口の減少も著しく、この“三重苦社会化”は想像の域を超えているかにみられる。
この状況の中で、成長戦略とは何か?との厳しい問いかけもなく、あいまいなままに、言葉だけがアベノミクスという空気の中を漂っているままだ。従って、異次元金融緩和も趣旨も、目的も、この2年間で曖昧模糊となったのも不思議ではない。今では、「地方創生」が話題の中心をなすようになった。
表題の対決は、日経・経済教室(3/30,31)において展開された。
「円安・株高定着 大きな成果 企業収益・雇用が改善」北坂・同志社大教授
「持続的な成長 展望描けず 円安、人手不足に無策」翁・京大教授
それぞれ図が一つ掲載されており、両者の論点を主張するための様である。
〈北阪氏のポイント…図1参照〉
○日銀緩和は市場や投資家行動の変化促す
○物価目標年限を2年に区切る必要は薄れる
○マイナス金利追求や政府との距離が焦点
図1 株価と円相場(北阪) 図2 潜在成長率推移(翁)
〈翁氏のポイント…図2参照〉
○潜在成長率の向上への寄与は期待できず
○超高齢化社会に対応した成長戦略が必要
○財政への副作用は「高橋財政」より大きく
図1の説明は奇妙だ。マネタリーベースを2年で2倍に拡大する金融緩和以前、衆院解散の少し前の2012年秋から円安・株高が始まる。緩和が契機ではない、としている。その通りで、円・ドル相場は、金融緩和以降、ほぼ一定を保持し、追加緩和の前から更に円安に動いている。
そこで、北阪氏は、安倍政権の主張に沿っての金融緩和であり、それを下支えしたのが、黒田金融緩和であったと述べる。しかし、それなら特に異次元というほどのことは不要であったとも云える。問題は、この後始末にあるからだ。
その当時にも指摘した様に、円安によって、一部の輸出企業が巨額の利益を得て、また、株高によって一部の富裕層の資産を増加させた。しかし、それは既に指摘するように、一部の企業・人に冨を偏在させ、格差の拡大にも寄与しているのだ。
『円安と株高に関する「私たちの経済学」130303』
結局、冒頭のデータに戻れば、実質GDPは前年比において、2013年は1.3%伸びているが、2013年度は横這いであり、雇用者報酬は、実質で2014年は-1.0%に下がっている。マクロの数値からは、金融緩和の効果は認められず、見え隠れする財政ファイナンスと出口戦略の不安定性が目立つ結果になっている。
なお、翁氏の議論については次回報告する。
2011 2012 2013 2014
GDP -0.5 1.8 1.6 -0.0
GNI 1.3 1.5 1.8 -0.2
雇用者報酬 1.4 0.9 0.6 -1.0
また、これらの値を評価する際に、長期的な「GDP成長率」の推移を以下の様にまとめておくのが便利である。その年度間の平均成長率は以下になる。
1956―73;9.1% 1974―90;4.2% 1991―2013;0.9%
控訴成長期から安定成長期を経て、現在まで20年井以上に渡って低成長(停滞)期になっており、マイナス成長の年は5回ほどを数える。それでも、リーマンショックを乗り越え、2010年以降はプラス成長を維持し、2013年の実質GDPは過去最高の529兆円を示した。
しかし、1)年金世代が増え、それと共に、2)超高齢化世代の介護、医療の需要も急激に増加する。一方、少子化による3)労働人口の減少も著しく、この“三重苦社会化”は想像の域を超えているかにみられる。
この状況の中で、成長戦略とは何か?との厳しい問いかけもなく、あいまいなままに、言葉だけがアベノミクスという空気の中を漂っているままだ。従って、異次元金融緩和も趣旨も、目的も、この2年間で曖昧模糊となったのも不思議ではない。今では、「地方創生」が話題の中心をなすようになった。
表題の対決は、日経・経済教室(3/30,31)において展開された。
「円安・株高定着 大きな成果 企業収益・雇用が改善」北坂・同志社大教授
「持続的な成長 展望描けず 円安、人手不足に無策」翁・京大教授
それぞれ図が一つ掲載されており、両者の論点を主張するための様である。
〈北阪氏のポイント…図1参照〉
○日銀緩和は市場や投資家行動の変化促す
○物価目標年限を2年に区切る必要は薄れる
○マイナス金利追求や政府との距離が焦点
図1 株価と円相場(北阪) 図2 潜在成長率推移(翁)
〈翁氏のポイント…図2参照〉
○潜在成長率の向上への寄与は期待できず
○超高齢化社会に対応した成長戦略が必要
○財政への副作用は「高橋財政」より大きく
図1の説明は奇妙だ。マネタリーベースを2年で2倍に拡大する金融緩和以前、衆院解散の少し前の2012年秋から円安・株高が始まる。緩和が契機ではない、としている。その通りで、円・ドル相場は、金融緩和以降、ほぼ一定を保持し、追加緩和の前から更に円安に動いている。
そこで、北阪氏は、安倍政権の主張に沿っての金融緩和であり、それを下支えしたのが、黒田金融緩和であったと述べる。しかし、それなら特に異次元というほどのことは不要であったとも云える。問題は、この後始末にあるからだ。
その当時にも指摘した様に、円安によって、一部の輸出企業が巨額の利益を得て、また、株高によって一部の富裕層の資産を増加させた。しかし、それは既に指摘するように、一部の企業・人に冨を偏在させ、格差の拡大にも寄与しているのだ。
『円安と株高に関する「私たちの経済学」130303』
結局、冒頭のデータに戻れば、実質GDPは前年比において、2013年は1.3%伸びているが、2013年度は横這いであり、雇用者報酬は、実質で2014年は-1.0%に下がっている。マクロの数値からは、金融緩和の効果は認められず、見え隠れする財政ファイナンスと出口戦略の不安定性が目立つ結果になっている。
なお、翁氏の議論については次回報告する。