散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

近づくギリシャの「Xデー」~田中理 第一生命経済研究所

2015年04月19日 | 経済
ギリシャの「Xデー」で一体何が国際経済において起きるのか?
存外に、ギリシャとその周囲の国だけの問題かもしれない。それについての論点は何も提示されていないが、状況だけはロイターが以下に示している。

財政資金の枯渇や支援提供国との改革案をめぐる合意期限が刻一刻と迫るなか、ギリシャ情勢が再び緊迫の度合いを増している。13日付けの英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、「我々の命運は尽きた。(4月末までに)欧州諸国が救済資金を拠出しなければ、ギリシャはデフォルト(債務不履行)を宣言する以外にない」とする与党・政府関係者の発言を伝えた。

こうした発言は、月内合意に向けた交渉が大詰めを迎えるなか、支援提供国から最大限の譲歩を勝ち取ることを狙ったギリシャのお決まりの交渉戦術と見る向きもある。だが、これまでの交渉過程で、ギリシャの新政権と支援提供国との関係は、かつてないほどに冷え込んでしまっている。デフォルトの可能性をちらつかせたところで、支援提供国側の態度が一変する望みは薄い。

ギリシャの改革案はすでに二度にわたって支援提供国から突き返されており、15日に再開したユーロ圏の財務次官級会合では、再修正案の協議が続けられている模様だ。24日のユーロ圏財務相会合での合意を目指すならば、今週中にも妥協点を見出す必要がある。

だが、最低賃金の引上げ、団体賃金交渉の導入、貧困層への年金支給増額、税捕捉強化に依存した代替財源の捻出方法などをめぐり、両者の主張は平行線だ。報道によれば、ドイツのショイブレ財務相は15日、「来週中に改革合意が実現すると考える者は誰もいない」と発言した。月内合意のハードルは高い。

どうにか改革合意にたどり着いたとしても、支援提供国のギリシャへの不信感はすでに相当なものだ。もはや口約束では不十分として、ギリシャが改革関連の法案を議会で可決するまでは融資を再開しない姿勢を強めている。新政権が緊縮見直し路線を軌道修正するとなれば、与党の分裂や連立政権の崩壊など、政治リスクが噴出する恐れが高い。昨夏以来中断している総額72億ユーロの次回融資分の早期実行は難しい情勢だ。

政府の財政資金は枯渇寸前と言われて久しいが、社会保障基金や政府関係機関からの一時的な借り入れ、一部の納入業者への支払い延期などで、これまで何とか資金をやり繰りしてきた。5月の対外債務の支払いは、国内銀行による借り換えが見込まれる総額28億ユーロの政府短期証券の償還を除けば、12日に国際通貨基金向けに7.7億ユーロの融資返済を控えているだけだ。このまま月内に改革合意ができなくても、さらなる埋蔵金の捻出などで財政破綻を回避できる可能性も残されている。

だが、危機再燃による経済活動の停滞や税滞納の増加などを受け、年明け以降、税収の下振れが続いている。このままでは昨年ようやく黒字化した基礎的財政収支が再び赤字に転落する可能性がある。国債利回りの再上昇で市場調達に復帰する道も完全に閉ざされており、追加の資金支援を受けない限り、財政資金が枯渇するのは時間の問題と言える。

このまま支援融資が再開されないまま、埋蔵金を含めた財政資金が枯渇した場合、ギリシャ政府は月々の税収など限られた財政資金の使い道を取捨選択する必要に迫られる。この時、国内向けの支払いを優先し、対外債務の支払いを停止すれば、30日間の猶予期間を経て、ギリシャは2012年の債務交換時以来のデフォルトに陥ることになる。支援提供国の通例として、返済が滞っている間は財政支援を再開することはない。次回融資の再開どころか、7月以降の新たな支援プログラムの策定も暗礁に乗り上げる。

また、デフォルトと認定された場合、欧州中銀がギリシャの銀行に供給している緊急流動性支援を打ち切ることが予想される。これは返済能力のある銀行への一時的な流動性供給策であり、デフォルトした国債を大量に保有するギリシャの銀行はもはや健全な銀行と見なすことができなくなるためだ。欧州中銀の資金供給に資金繰りを完全に依存するギリシャの銀行破綻は避けられない。

ギリシャの銀行監督の一端を担う欧州中銀としては、流動性供給策を打ち切るのと同時に、銀行の預金封鎖、海外送金の停止などの資本規制の導入、銀行の資本増強などを行う必要がある。ここで問題となるのは、日々の財政資金に窮するギリシャ政府がどのように銀行の資本増強資金を捻出するかだ。

      
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