散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

「派手な空体語」と「隠せぬ現実」~3年目のアベノミクス

2015年12月22日 | 経済
「異次元金融緩和」と「三本の矢」から始まった。
それが現在、「量的・質的金融緩和(QQE)補完策」と「新三本の矢」に変わっている。これが何を意味するのか。声高に言葉を並べた政策はイザヤ・ベンダサンの云う空体語として機能しているだけのことを示している。
 (「日本教について」(文藝春秋社1972)。

実際、GDPは3年間で実質2.3%増、年平均では0.76%増にしかならない。金融緩和を中心に円安・株高をもたらし、一見は華々しいが、実質的な成果に乏しい。所謂、デフレ心理が和らいだが、それは所詮、気持ちの問題だけだろう。
この間の状況を日経は要領よくまとめている。

最近、言われるのは、働き手の減少や低い生産性など供給面の制約のため成長率は高まらないことだ。完全雇用に近いため、働き手は容易には集まらない。人員不足感はバブル崩壊直後以来、23年ぶりの強さ。団塊世代の退職があり、現役世代(15~64歳)の人口はこの1年で99万人減ったとのことだ。しかし、政権もそれに気づいてはいるが、参院選を控え、痛みを伴う供給面の改革に及び腰だ。

働き手の減少によって、潜在成長率は下がる。内閣府試算では実質0.5%で米国の2%弱を下回る。潜在成長率からみると政府が目指す実質2%成長は、はるかかなた。供給制約が解けて成長期待が高まらない限り賃金上昇も続かない。

「新3本の矢」のうち子育て・介護支援は働き手を増やす狙いがある。経団連に設備投資を要請したのも生産性を高める狙い。新3本の矢は需要重視からの軌道修正になる。しかし、その取組は及び腰だ。
低所得の高齢者らに3万円の給付金を配るのは、選挙にらみの単なるバラマキだ。法人実効税率を下げても、投資機会に乏しい。経団連の「3年後に10兆円増」の投資予測は茶番劇を越えている。

成長力向上のために必要な労働市場の改革。
「職業訓練を拡充する」
「金銭支払いで社員を解雇する際のルールを作る」
「同一労働、同一賃金を徹底し女性や高齢者の労働参加を促す」

設備投資拡大のカギは規制改革。
「豊かな高齢者に多額のサービスを買ってもらうのは介護労働者の賃金増と事業者の採算性向上にプラス」
「あらゆるものをネットにつなぐ「IoT」構築でも規制改革が不可欠」

日銀の身の振り方はどうなるか。
緩和の効果が弱い一方でその副作用が懸念され、財政規律を緩めてもいる。見直し論が出るのは当然だ。

成長率の低迷は財政健全化計画の見直しをも迫る。
政府は実質2%、名目3%の成長を前提に5年後、財政再建の第一歩となる基礎的収支均衡を目指す。だが成長力を高める改革には何年もかかる。2%より低い成長でも財政が改善し、社会保障も回るよう改革を急ぐしかない。成長に向け企業の投資資金を確保するためにも国債発行額を早く減らすべきだ。

安倍首相の頭を支配するのは来夏の選挙。人々の関心事はずっと先までの生活。それに影響する成長力や財政・金融の健全性に、もっと気を配るべきだ。

      
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