散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

円安と株高に関する「私たちの経済学」~アベノミクスとは異なる目線から~

2013年03月03日 | 経済
円安と株高がアベノミクスの効果であり、日本の経済成長を牽引し、それが私たちの生活を豊かにするというストーリーが喧伝され始めたのは、つい最近である。しかし、通貨も株も持たず、ごく普通の生活を送る一般人にとって、灯油、ガソリン代が値上がりしていることが一番感じる直接的影響なのだ。

期待感を高め、国の財布から巨額な資金を繰り出すことによって、痛みも無く、バリヤを乗り越えることもなく、経済成長が可能であるのか、はたまた、それが生活の質を上げるようになるのか、これが基本的は問いかけになるはずだ。ここに、アベノミクスというエコノミクスではなく、「私たちの経済学」を必要としている所以である。

では「円安と株高」で何が起こるのか?上述のように、石油などの輸入品は値上がりするはずである。電気料金の値上げは、原発を稼働中止にしたことに相乗して効いてくる。ガス料金もしかり。ようやく、マスメディアは報道するようになった。例えば、朝日(2/28付)「アベノミクス、じわり家計圧迫」と書かかれている。

続いて、冷凍食品、石油製品が値上げの一群に入ってくるようだ。企業は値上げすることによって、収支バランスをとることになるが、最終消費者の家計はその打撃を一身に受ける。ここで注目すべきは、輸入では最終製品に負担が掛かる故に、国民全体に広く浅く影響を与える。

これに対して輸出は当然、輸出企業に利益が集中する。それは今年度の収益よりも「コマツ、14年3月期の営業利益は3000億円超」と、あるように来年度に本格化する。今年度の収益は+150億円程度で計2300億円であるから相当な額だ。

コマツだけでなく自動車、電機等の輸出中心の大企業も恩恵を受け、その傘下の関連会社も含めて、従業員もパイの分け前に預かる。しかし、輸入の国民的負担に対し輸出の特徴は大企業中心の配分に止まり、限定的になる。

上記の非対称性は大企業の従業員にとって優位で有り、おそらく、格差は拡大する方向に動くと思われる。また、輸入品及び輸入品を利用する製品の値上がりは先にも示したように、比較的早く、一方、輸出企業の業績の従業員への反映は次年度以降であるから、時間のずれも発生する。従って、ここ半年は、物価は通常よりも上がるはずである。これが安倍首相のいうインフレ2%目標なのだろうか。

次に株高である。株価そのものは株主の資産の高低を表し、企業活動の反映である。また、それが時価として表現され、期待値として見られる処が心理的要素によって大きく左右される所以である。ともあれ、株高で売却すれば、瞬時に富が増加し、それを使用すれば、実体経済へ還元される。

しかし、資金が余って、かつ、リスクが取れるリスクオンの経済状況になったとの判断で、世界的にも株高であり、アベノミクスは単にその時流に乗り、日本の株高を加速させたとの判断が妥当であろう。当然、期待値を実現できないと判断されること、あるいは、欧州でのイタリア等のリスク要因が顕在化すれば、不安定感は増し、状況は逆に回ることは充分に考えられる。

では、実体経済はどうなるのだろうか。そもそも実体経済という言葉がおかしい。実体以外に虚構経済があるかのようで、それが金融経済なのだろうか。何年か前に金融工学がはやり、理工学部にも学科が新設され、理工系学生が銀行、証券会社へ就職することも話題になった。それが現在も日本経済にとって良かったのだろうか?

閑話休題。実体経済として「鉱工業生産2カ月改善」との指標が出ている。ここから「大型補正は不要だった」との説も出ている。国家予算のバラマキに相当する部分が予算の多くを占めているからだ。特にアベノミクスを待つまでもなく実体は回復基調だ。

更に、財政政策や金融政策など裁量的なマクロ安定化政策そのものに、新たな付加価値を生み出す力はない。財政政策は「将来の所得の先食い」、金融政策は「将来の需要の前倒し」を可能にするだけで、モルヒネ中毒と同じだ。

筆者の回りをみて感じるのは、ソフト系の仕事等、忙しい処は残業に追われて、人手不足が著しい。その一方で、若者の就職難が恒常化している。シャープ、ルネサス等では経営危機から大量の退職者を生む。このような産業・雇用構造の硬直化が問題なのだ。教育(再教育含む)を充実し、規制緩和撤廃等も含めて転換を図ることが必須だ。問題はそのバリヤを乗りこえる意思が重要なのだ。既に論じたように少子高齢化は進み、30年後には人口が1億人を切り、65歳以上は人口の40%になる。
バリヤフリーの政策は崖っぷち」へ私たちを導く結果を招くことになる。

         
         
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