遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
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才能の無駄使い?

2018-11-12 00:56:40 | 


宿野かほる「ルビンの壺が割れた」新潮社 2017年刊

帯に第一位とあるが、なにの第一位なのかよくわからない。そしてこの著者はかなりの才能の持ち主だと受け取れるが、エンターテイメントだけに費やして欲しくないと思わせるほど、もったいない内容である。

物語は、結婚式当日忽然と姿を消した相手と思われる人物とフェイスブック上で再会、メールのやりとりという形で進む。はじめのうちは手探りで確認しあい、少しずつお互いの境遇、心情に近づいてゆく。その距離感の描き方が微妙でよく練られている。

お互い演劇の道で知り合い、大学の演劇部で演出、監督と女優という間柄で関係を深めていく。その時代の思い出や、お互いの関係、など心の襞に分け入るようなメールのやりとりだが、まだるっこい私小説風である。それが最後の40ページ位からストーリーは急展開を見せる。男の遍歴、女の遍歴どちらもドロドロしたものを抱えており、ぺーじをめくった最後の一行(太字で書いてある)を叩きつけるようにして終わる。この終わり方もテクニシャンだと感じさせる。

それなりに面白いのだが、やはり小説の枠内の遊びのような趣だ。これだけの才能があるのだから、人生について真正面から取り組んだら、かなりの著作が出現するのではないかと期待できそうだ。表紙カバーの裏に読者の感想を印刷してあるのも、試みとして面白い。

ストーブ開き

2018-11-10 00:02:19 | 雑感


めっきり冷え込んできた。11/7は立冬だから、寒くなっても不思議ではない。最低気温が零度を記録するようになった山ではストーブを焚くことが多くなってきた。

江戸時代には「炬燵開きの日」というのがあったんだそうだ。炬燵をだすのは旧暦十月の初亥の日と決まっていた。十月は亥の月で、亥は五行では火を司る水の気とされている。火事が多かった江戸の世では、この日に炬燵開きをすれば火事にならずにすむ、という縁起担ぎが行われていたということです。

ストーブは焚付、小枝、薪の用意、バケツ、火掻き棒、の整備、ガラス窓、灰の清掃、など結構手が掛かるが、チロチロと燃える炎にはなぜか癒される。

今年は煙突掃除を頼まねばならぬ年だが、今夜もお付き合いをお願いしよう。

大気澄む

2018-11-08 06:35:32 | 雑感

雲ひとつない空をバックに阿弥陀岳

奥穂高岳(左)と北アルプス大キレットと槍ヶ岳(右)

阿弥陀岳(左)から権現岳への稜線

権現岳

今朝は啄木鳥に起こされた。トントントンとリズミカルな打撃音がするなあ、と頭の奥の方で音が響いて徐々にはっきり聞こえてきた。夢の中ではないと認識して耳を澄ますと、どうやら近くの林の中に音源があるらしい。近くの落葉松の大木の上の方で、コンコンと音がする。この鳥はかなり勤勉である。

移動性高気圧が本州を覆っているせいか、気持ちのいい快晴の日が続く。所用で外へ出る時があり、真っ青な空に聳える八ヶ岳連峰を眺める機会があった。雲ひとつない空に聳える八ヶ岳のはるか左霧ヶ峰の向こうに北アルプス、さらにその左に乗鞍、中央アルプスなどが雪を頂いているのがくっきりと見える。

落葉松林はすっかり黄金色に染まり徐々に葉を落としつつある。栗の葉はもうすでに大方茶色に変わっている。冬支度万全といったところか。ここらあたりの紅葉の季節が終りを迎え、落ち葉がハラハラと落ちてモノ寂しさが募ってくる。

空気が澄んでいるのが良く分かり、車山のレーダーの丸いドームもはっきりと見える。こんな日に山歩きをしたらどんなに気持ちがいいだろうと思う半面、それだけの体力が備わっているだろうかと不安になるのが寂しい。

「下山の哲学」ではこのあたりをどう考えるのだろうか。


チェルトの森入り口の落葉松林

阿弥陀岳(右)から横岳の稜線

冠雪消える  

2018-11-06 07:13:36 | 雑感

快晴の阿弥陀ヶ岳

すすきの穂先も真っ白だ

晩秋の散歩道

外気温22度、快晴、微風すこぶる気持ちの良い秋の一日、散歩に出る。山の清浄な空気を吸いながら歩くのは天国だ。
見上げる八ヶ岳は一昨日雲が湧き、冠雪に覆われていたのが嘘のように雪が消えている。このところ明け方の気温は零下を下回り、マイナスを報じてたのにどうしたことなんだろう。

24節気は立冬。冬の気配が山にも里にも感ぜられて来る頃だ。それなのに季節が逆戻りをしている。まだあの夏の暑さが影響しているのだろうか。ただ季節は確実に進み、木々の葉はどんどん枯れ始めている。赤→茶色、黄色→茶色と進んでいる。

11/7日は鍋の日だという。外が寒くなってくると温かいものが欲しくなる。「いいなべのひ」という語呂合わせである。湯豆腐、ちゃんこ、石狩鍋、しょっつる、チゲ鍋、水炊き、しゃぶしゃぶ、思いつくだけでもいろいろ候補はある。

今日はどんな鍋が食べられるだろうか。


悲劇の確認

2018-11-04 06:21:20 | 


横山秀夫「出口のない海」講談社文庫 2004年刊

社会派サスペンス作家が手がける戦争青春小説(というジャンルがあるかどうか不明だが)である。同じような設定で神風特攻隊で出征した、確か巨人軍の投手を描いた小説があったような記憶(映像化もされた)がおぼろげながらある。

本書はやはり大学野球選手をモデルに、人間魚雷回天に搭乗し華々しくとは決して言えない状況で、理不尽にも命を散らす人間をかなり綿密に描く。知覧の特攻記念館?で数々の遺書を読んだが、その一つ一つにこうした物語が付随していることなのだろう。

個人の命を捨てるという葛藤と、軍隊、或いは軍国主義社会の組織的な有形無形の圧力をかなりバランスよく描写している。この著者のこうした社会性が私は好きだが、翻って現代をみると、国民会議を代表とする右翼は安倍首相を筆頭として自民党の幹部を動かし、戦前の軍部優先社会の再現を図ろうとしている。

そのことを考えると決してこの小説が二番煎じではなく、何度でも警告を鳴らす役目を果たしてもらいたいと思う。小説という体裁を取るため、どうしても情緒的に流れる部分があるが、それを最小限におさえて、人間として生きる意味、死ぬ意味、湧き上がる恋心、野球に対する情熱、周りの人間との関わり、などを的確に描ききっている。佳作と言うべきだろう。

黄金郷

2018-11-02 00:06:34 | 雑感

デッキ近くの紅葉

落葉松林の黄葉






見事な錦繍

昨日夕方、山小屋についたとき、来る道がぼんやり明るかった。黄金色の照明に照らされているようにぼーっと明るく、秋の夕暮にしては日が落ちるのが遅いと思っていた。

朝デッキに出ると、隣に生えている楓が盛りを少し過ぎてはいるが真っ赤に色づいている。かろうじて間に合った、というところか。

近くの病院の厚生寮へ見に行ったらさすがに手入れが行き届き、まだ綺麗に真っ赤な枝が残っていた。見事なものである。落葉松と白樺や栗を始めとする黄色の葉がピークを迎え、この辺りを黄金郷としている。この辺りは気温差のせいか空気が綺麗だからか桜の葉も綺麗に紅葉する。

殆んどの樹樹が色づき、遠くから見ると黄金色を基調とした錦を織りなしまさに錦繍である。「黄金の国ジパング」はまさにこんな風景を言うのではないかと思う次第である。


落葉のモザイク

白樺の黄葉