鈴木るりか「さよなら、田中さん」小学館 2017年刊
14歳の中学生が書いた小説として巷で話題になった本。私も気になっていたので、どんなものかと手にとって読み始めて驚いた。5篇からなる連作短編集であるが、とても中学生とは思えない描写力、ストーリー展開だ。連作短編集と行っても、1編と言ってもいいくらいである。
主人公は小学6年生の女の子。ビンボーな母子家庭だが、佐賀のがばいばあちゃんのような、たくましく明るいお母さんと暮らす。毎日大食らいで過ごし、ジメジメしない。いろいろな小事件を前向きに、明るく、鮮やかに描いている。宣伝文句を読んでいなければ、立派な大人の作品だと言っても十分通用する作品だと思う。
母親、大家さん、フリーター、クラスメートなどをきちんと描き分けして紛れがない。決して幼稚ではない筆致だが、読みやすく5時間位で一気読みしてしまった。帯の紹介によれば、「12歳の文学賞」を3年連続大賞受賞したとあるが、たしかに力量ある作家である。勉強塾での授業について行けない場面の描写など、臨場感溢れて面白い。
最近読解力が衰えてきたので、14歳位が私の頭にはちょうど合っているのかもしれない。それは別にしても面白い才能の登場である。