遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

才能の無駄使い?

2018-11-12 00:56:40 | 


宿野かほる「ルビンの壺が割れた」新潮社 2017年刊

帯に第一位とあるが、なにの第一位なのかよくわからない。そしてこの著者はかなりの才能の持ち主だと受け取れるが、エンターテイメントだけに費やして欲しくないと思わせるほど、もったいない内容である。

物語は、結婚式当日忽然と姿を消した相手と思われる人物とフェイスブック上で再会、メールのやりとりという形で進む。はじめのうちは手探りで確認しあい、少しずつお互いの境遇、心情に近づいてゆく。その距離感の描き方が微妙でよく練られている。

お互い演劇の道で知り合い、大学の演劇部で演出、監督と女優という間柄で関係を深めていく。その時代の思い出や、お互いの関係、など心の襞に分け入るようなメールのやりとりだが、まだるっこい私小説風である。それが最後の40ページ位からストーリーは急展開を見せる。男の遍歴、女の遍歴どちらもドロドロしたものを抱えており、ぺーじをめくった最後の一行(太字で書いてある)を叩きつけるようにして終わる。この終わり方もテクニシャンだと感じさせる。

それなりに面白いのだが、やはり小説の枠内の遊びのような趣だ。これだけの才能があるのだから、人生について真正面から取り組んだら、かなりの著作が出現するのではないかと期待できそうだ。表紙カバーの裏に読者の感想を印刷してあるのも、試みとして面白い。