伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」新潮文庫H28年刊
7篇の短編からなる物語ではあるが、それぞれの登場人物は関連があったり、同一人物であったりする。この著者の特徴であるが、なにか余裕綽々で物語を操っているような趣だ。
ある意味安心して読み進められ、なにかお釈迦様の掌で遊んでいるような安定感を感じる。ストーリーの展開、登場人物の会話、シチュエーションの説明、どれをとっても無理がなくスムーズである。
物語というのはある種異常な世界を描くのが、正に話の種となるのだが、この作家にかかるとごく普通の状況のように見えてくる。確かに語りも淡々としている。その意味では物足りなく感じる人もいるかも知れない。
しかし、全盛期の大鵬や巨人が勝ち続けるのが当たり前のように、今この作家は書き続けるのが当たり前なのだろう。血湧き肉躍る物語ではないが、それなりに面白い小説ではある。