遅いことは猫でもやる

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等身大の紀行文

2018-05-10 05:44:00 | 


先日といっても数ヶ月前になるが、東京で家人の兄弟夫婦会があった折、次兄から頂いた自費出版の本があった。喜寿の記念にと一念発起して四国のお遍路八十八箇所めぐりをした折の紀行文をまとめたものだそうだ。彼は以前から東海道五十三次、中山道なども歩いており、私も愛知県内は一緒に歩いたこともある。本は頂いたが、野暮用に紛れて、広げずにいたが、読み始めたら一気に読めた。

彼は私より5つ以上も年上だが、ゴルフのドライバーは未だに飛距離はおいていかれるほどの元気者。元々技術系の方なので、几帳面な記録集かと予測して読み始めたら、これがなかなか面白い。足で歩く旅ならではの、行く先々での宿の方とのやり取り、お遍路仲間との交流、お接待という土地それぞれの方の遍路をする人への応援、などの記述が面白い。気負ったところや、構えたところもなく、一緒に旅しているような等身大の記述である。

加えて、空海はもちろんのこと、真念、紀貫之(土佐日記)、林芙美子、獅子文六、司馬遼太郎、伊能忠敬、ジョン万次郎など、さすがに博学でいろいろな人の引用も玄人はだしである。途中から食べ物の紹介も増え、いろいろ美味しいもののことの記述も増え、読む方も楽しい。八十八箇所目のお寺が近づくに連れ、今までの苦行に思いを馳せ、目の前の仏像や生身の人間にもお大師様を見る体験をしたそうな。出会った女性が皆美人に見えるというのもそんな影響かもしれない。

すごいなと思うのは、四国のお遍路を終えたその足で、空海が開いた高野山へも足を伸ばしていることだ。全行程を振り返って、一日平均二十五キロを歩いているのもすごいパワーである。お遍路というイベントを擁する四国全土がテーマパークだという記事を読んだことがあるが、この本を読む限り、こうした文化がこれからも続く保証はない。

お遍路を支える「お接待」という文化が四国全土に広がっているのはとても感心するが、後どれくらい続くのだろうか、いつまでも残ってほしい風習である。本の構成、記述の仕方は並みの自費出版よりはるかに良く出来ている。