遅いことは猫でもやる

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抜群のスピード感

2018-05-14 03:02:40 | 


相場英雄「追尾」小学館文庫 2010年刊

私の好きな社会派ミステリーの旗手・相場英雄の「みちのく麺食い記者宮沢賢一郎シリーズ第五弾である。前4作は社会的背景からくる事件の必然性が迫真のリアリテイを感じさせる一方、作品全体としてはなにかリズム感がわるく、麺食いの場面などは余分だと感じられるほどであった。

今回は、相棒とも言うべき警察内部の理解者が強制停職中という制約をつけ、ファッション誌編集者の奥さんも事件解決に一役買うという展開が目新しい。しかし何より事件の進展、ストーリーの展開のスピード感が素晴らしい。

事件は子どもたちの合宿勉強会のバスジャックで幕を開けるが、その裏でもう一つの恐喝事件が進行する。「完黙」でも著者の金融工学の取材力の確かなところを見せていたが、今回も国際金融に及ぶからくりをキチンと描いている。ストーリーの最後に「はぐれ刑事人情派」なみのほろっとさせる場面を持ってくるところなど、作家として脂が乗ってきている感もする。

傑作と言っていい作品だ。