真保裕一「遊園地に行こう!」講談社 2016年刊
ご存知「デパートへ行こう」、「ローカル線で行こう」のシリーズ第3弾。躍動感は「ローカル線・・」の方に軍配があがるが、この作品は職場への密着感、リアリティはなかなかのものである。
最初はアルバイト社員とベテラン社員の、勤務状態の掛け合い物語かと思いきや、途中の配電盤事故から急展開を見せる。ミステリー仕掛けも少し見せるが、ここはあんまり著者の得意ではなさそうだ。
このシリーズの特徴であるが、いつものように悪人がでてこない。みんないずれも善人である。そこにリアリティが欠ける原因があるのではないか。むしろ夢を旗印にアルバイトにも階層を付け、モチベーションを維持し、低コストで人を使う仕組みなどの描写の部分が光っている。どうもこの著者にはミステリーは向いていないようだ。
もう一歩何かを超えれば作品に深みが加わると思うのだが、エンターテイメントにいろいろ求め過ぎなのだろうか。面白い作品であることには違いない。