遅いことは猫でもやる

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等身大の現実

2015-11-05 03:18:19 | 


竜田一人「いちえふ(2)」福島第一原発労働記 講談社 2015年刊
いちえふとは福島第一発電所のことを指す。えふいちとは言わない。先に出版した(1)に続いての報告。
(1)では休憩所という謂わば付帯施設での勤務体験だったのが、今回はいよいよ建屋内作業につくことになった。マスメディアにありがちな、やたら危機感を煽ったり、電力会社、政治家の発表のように「大過ない」というような、政治的な色彩を帯びること無く、正に事実のレポートである。反原発でもなく、原発擁護でもない、淡々とした作業現場レポートである。

貸家、レンタカーの現状と差別、なん重曹にもなっている下請構造など、我々が知らない現実が展開している。勤務外での、入浴、食事、ボランティア活動、など肩に力が入っていない活動報告が現実感を増す。しかし淡々とした行動、描写がかえって真実味を醸し出している。

放射線を浴びる危険は確かにあるのだが、問題地点に身を挺して飛び込む勇気と好奇心に敬意を評すべきだろう。それとも売れない我が身を振り返って捨て身の冒険なのだろうか。それほどのケレン味は感じさせられない。現在進行形の福島原発の現状を理解するには格好の書だと思う。