遅いことは猫でもやる

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情熱か狂気か

2013-10-20 11:31:59 | 


小野裕史著「マラソン中毒者(ジャンキー)」文藝春秋刊 2013年

長男が先日来た際「これ1時間くらいで読めるよ」と置いていった本。仕事上著者と多少の面識があるらしい。
著者は東大大学院卒業後、IT企業に就職しその後独立し、現在はベンチャー投資家。2009年よりランニングを始め、この4年で北極、南極、砂漠、日本横断などの世界の過酷レースに参加,完走している。本書はビジネス書ではない。ランニング体験書である。

しかし、ビジネスに取り組む姿勢というか、人の生き方について強烈なインパクトを与えられた。著者のレースに参加する姿勢というと、そのレースがどれだけ過酷な条件,未知の体験であろうと、そこに何らかの前向きの意義を見出し(本邦初とか、日本代表になるはず、とか)、できそうかどうかより、どうやって実現するかに一心不乱に取り組む。忙しい本業のビジネスの間を縫ってである。

ベンチャーの創業者にはこの姿勢が必須なのだろう。当事者は事業が成功するかどうかを心配するより、どうやり遂げるか、に全力を集中すべきである。そんなことを理屈でなく、行動で示しているようである。そういえば、私の高校時代の級友は優秀な奴が多かったが、東大に何人か合格したが頭がとびきり良かった者は別として、ボート部やラグビー部の体力抜群なのが3年後半からひたすら頑張って合格したのと若干似ている。

極地のレースも、砂漠のレースも走りながら色々考える。その前にまずエントリーしてしまうのが凄い。又過酷なレース中どうこの苦しさから逃れるかを考えるのではなく、客観的な立場(自分の位置、競争者の状況)、第三者がどう見ているか、などを意識し行動する。多く試みているコスプレランニングもそこを意識させる手段だ。あまり触れられていないが、最低一人は理解者、協力者(たいていは奥さん)がいるのも必須条件だろう。
世の中理性だけでなく、狂気に近い信念が切り開くことも多くある。とにあれ、世の中を変えてゆく創業者にはこれくらいの覚悟(情熱又は狂気)が必要なのだろう。

最近読んでいる本とは毛色の変わった、刺激的な本だった。