一昨日書いた村上春樹の「ノルウエーの森」は上下巻ある長編小説だけど、実はこれはもともと「螢」というタイトルの短編小説として世に出ていた。それを深く掘り下げて書いたものが「ノルウエーの森」なんだけど、この短編もいいんだよね。重なる文もあれば、ちょっと違うところもあるので読み比べてみると興味深いと思う。ついつい長い文あるいは詩を書いてしまう私のような人には無駄なく言葉を選りすぐって文を書くにはどうしたらいいかを教えてくれる。って足元にも及ばないけどね(苦笑)この2つの小説のテーマは螢のあの儚げな緑色の光なんだと思う。どちらにも書かれているシーンにインスタントコーヒーの空き瓶に螢を入れて友達が主人公にくれるというところがある。何気ない一節なようで、これがすごく心に残った。実はずっと前に私自身同じことをしたことがあったから。よくあるネスカフェとかそういう感じのインスタントコーヒーの空き瓶に螢を入れて飼ったことがある。近くにすごく螢が飛び交うきれいな場所があって、そこでついつい捕まえて持ち帰ってしまった。螢には申し訳ないけど、人間のエゴだろうな。瓶の中には木の枝とか葉っぱとかなぜかきゅうりとか入れて蓋には穴を幾つも開けて自分の机の上に置いていた。夜中、目を覚ますと真っ暗な部屋のはずなのに明るい場所がある。そう螢が光を放っていたんだ。その光が緑色なんだ。すごくきれいで思わず見とれてしまった。でも、なんか寂しい光にも感じた。どうやってなのか、その螢たちは脱走を図った。ある日気付くと部屋の壁で光っていた。そのうち彼らはどこかに行ってしまった。あの緑の光が今も忘れられない・・・ほんのり灯す静かな光を。
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