越水招いた太陽光発電施設 パネル復活 営農できぬ 心情逆なで 水害半年、茨城県常総市
日本農業新聞 2016/3/10
鬼怒川が決壊し、甚大な被害が出た関東・東北豪雨から10日で半年。自然堤防を掘削して発電用の太陽光パネルが設置された茨城県常総市の若宮戸地区では、掘削が越水の原因になったとして住民らが抗議を続ける中、業者がパネルの再設置を進めている。堤防がまだ建設されていないにもかかわらず、「被災者の心情を逆なでする」として、現場は行き場のない憤りを募らせている。
・行政の権限外 怒り 行き場なく・・・
水害を機に、同地区の小林恵一さん(62)は40年以上続けた農業をやめた。越水で自宅は全壊。新調したばかりの田植え機とコンバイン、軽トラック、トラクターなど全てが水に漬かった。
助成金を考慮しても、ゼロから農機をそろえると3000万円の借金をしなければ営農を再開できないことが分かった。先祖代々の農家で耕作放棄は考えたこともなかったが、苦渋の決断だった。
昨年は2.7ヘクタールで米を作付けしたが、今年は田植え準備もしない。例年のように忙しくない春が、寂しくてならない。越水の後も、新たに設置されていくパネルを見ると悔しさが込み上げる。「農業を続けたかった。行政はなぜ、何も対応してくれないのか」
国土交通省によると、同地区では2014年3月から太陽光発電の事業者が、高さ3メートル、幅約200メートルに及ぶ、自然堤防の役割を果たしていた土手を掘削。同省の専門家による調査では、15年9月の水害で業者が掘削した箇所から鬼怒川の水があふれ出し、同地区に押し寄せたことが判明した。
住民らは当初から同省や市、県に工事をやめるよう抗議していたが、覆ることなくパネルは設置された。設置場所は河川法の区域外の私有地に当たり、同省には掘削を制限する権限がないためだ。
同省は水害を受け、新たな堤防を建設する方針を示しているが、半年たっても着工していない。一方でパネルの再設置は本格化しており、業者から住民への説明や謝罪はない状況だ。
そうした対応に憤る住民らは「常総市水害・被害者の会」を結成。メンバー170人が、太陽光発電の業者にパネル再設置をやめさせるよう、市に申し入れをしてきたが、工事は日々、進んでいるという。
共同代表の逆井正夫さん(67)は「農地も家も元通りになっていない、堤防も建設が始まっていない中で、パネルだけが再設置される。被災者の感情を無視している」と憤る。水害の再発を恐れ、地区から引っ越した住民も出てきた。
借金を背負って営農を再開し、3ヘクタールで米を作る小林喜美子さん(70)は「住民は誰もがこの水害は人災だと思っている。このまま泣き寝入りするしかないのかなと思うと悲しい」と明かす。
今回のケースは法律に違反している事例ではないだけに、行政が業者を指導するのは難しいのが実態だ。同省下館河川事務所では「業者に対し、工事差し止めを求める権限はない。ただ、早急に堤防を整備する」と説明。市も「市議会で議論する。被災者の声に寄り添いたいが、私有地での経済活動を止めることはできない」と対応に苦慮している。(尾原浩子)
2016年3月2日(水) 茨城新聞
関東・東北豪雨の被災者らでつくる「常総市水害・被害者の会」は1日、同市若宮戸の越水現場で進められている大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の再設置の中止と、被害住民への謝罪を事業者に求める請願書を市議会に提出した。
請願書には1033人分(同会集計)の署名を添えた。同所では一昨年、メガソーラーの設置に伴い、民間業者が自然堤防を掘削。昨年9月の豪雨で同所から水があふれ、甚大な被害が出た。
2015年12月25日 東京新聞
関東・東北水害で被災した常総市民らでつくる「常総市水害・被害者の会」は二十四日、同市若宮戸地区に太陽光パネルを設置するため、自然堤防を掘削した大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設業者にパネルの再設置をやめさせるよう求めて市と市議会に申し入れを行った。
国土交通省や市によると、昨年三月以降、業者が自然堤防を高さ最大約三メートル、幅約二百メートルにわたって掘削した。水害では、掘削した箇所を鬼怒川の水が越えて市内に押し寄せた。二つある業者のうち一社は撤退する意向を示したが、もう一社はパネルを再設置する工事を進めている。
「被害者の会」共同代表世話人の逆井(さかさい)正夫さん(67)ら四人が市役所を訪れ、高杉徹市長に申し入れ書を手渡した。高杉市長は「市民感情もあり、単なる法律論では解決しない重大な問題。早急に対応を検討していきたい」と答えた。逆井さんは「掘削が判明した昨年三月時点で、市と議会が手を打たなかったことがミス」と話した。 (増井のぞみ)
毎日新聞 2015年12月25日
「常総市水害・被害者の会」の逆井(さかさい)正夫・共同代表世話人ら4人は24日、茨城県常総市若宮戸(わかみやど)の鬼怒川越水地点で太陽光発電施設の再設置を進めている業者の工事を中止させるよう求める「緊急申し入れ書」を高杉徹市長に提出した。法的問題はないとされるが、高杉市長は「法律論だけで片付く問題ではなく、住民感情もある。市内部で検討する」と述べた。
現地では水害前に2社が太陽光発電をしていた。水害で施設が壊滅し1社は撤退したが、残る1社が再稼働を計画している。この業者が最初に施設を設置する前の昨春、堤防代わりの砂丘を崩し、そこで越水した。
申し入れ書では「被害者はソーラーパネルを二度と見たくない。(業者の)傍若無人に憤っている。謝罪と被害の弁償も求めてほしい」と訴えている。同会は風野芳之・同市議会議長宛てにも提出し、同内容での市議会の決議を求めている。【去石信一】
※常総市水害・被害者の会の窓口は「常総市吉野サポートセンター」が行っています
3月1日(火)晴れ 強風 北国などでは猛吹雪の被害・・・
どう考えても常総市は全国一と言って良い、住みよい恵まれた地域ではないかと思うのだが・・・水害がなければ・・・・
今日は「若宮戸メガソーラーの再設置を中止・撤退し、業者は『水害元凶の間違いのない一つなのだから』被害者に謝罪せよ」の請願書を提出しました。常総市議は22名いますが,この請願の紹介議員となったのはたったの3名。つくば市では筑波山メガソーラー設置反対で満場一致取り組み、茨城県も「許可しない」方針を出したというのにだ。19人の言い分はこうだ。「民有地だから法的権限がない。議員だから慎重に考えたい・・・etc」
私たちは法的な問題でなく道義的責任を許せないと言っているのだ。この情勢では請願は採択されない可能性がある。
ところで,私たちの署名運動は実質8日間だった。印鑑が押された(サインだけで良いと思うが常総市では印鑑がないとカウントされない)分が950名、サインのみが122名、合計1072名の署名簿を提出できた。市議会の結果が「請願採択」『不採択」となるかはどうであれ署名運動を取り組んだ評価は ①『水害元凶の間違いのない一つなのだ』を1000人以上に知ってもらったことだけでも良かった。②被害者と支援者がこの署名簿を行動したことが主体的、物質的な力となる。③たった8日間で1000人以上の賛同者を得る行動ができるなんて凄い、と確信が持てたこと。
などではないだろうか? 主要新聞5社が取材したから明日の茨城版では紹介されることでしょう。
(管理人より)
常総市のメガソーラー問題については、ブログ記事を9つ書いています。カテゴリーに分類しています。こちら
驚くのはメガソーラーが崩壊して大量の産業廃棄物になったにも関わらず、また同じ業者がソーラーパネルを再設置していることです。その業者名も報道で明らかにされていません。
周辺住民が自治体に、ソーラーパネルの再設置をやめさせるように申し入れているのに、行政は動かず、結局、再設置工事が進んでいます。
住民の命と健康を守るのが自治体や議員の役目ではないのでしょうか?請願書の紹介議員に、たった3人しかなってくれなかったそうです。
そういう市議を選んでしまったのは市民ではありますが、それにしても、あまりの住民軽視ぶりに驚きます。
さて、水害があった常総市は、福島第一原発事故で放射能の雲が流れた放射能汚染地域でもあります。これは事実です。
鬼怒川の川底に溜まった放射性物質を含む土砂が、川が氾濫したことにより、畑や田んぼにばらまかれてしまったわけです。しかし今回の水害報道の中で、その事実に触れるメディアを見たことがありません。
タブー化しているのでしょうか。
そこに、メガソーラー再設置です。常総市の問題は、結果的に原発にも再エネにも、痛めつけられている状況だと言えると思います。いわば二重の災害なのです。
国策・再生可能エネルギーで、東日本にもメガソーラーなど大量に作られていますから、台風や水害によって、今後はこういった”二重の災害”が引き起こされることが懸念されます。
堤防も出来ていませんので、大雨が降ってまた鬼怒川が越水決壊すれば、再設置されたメガソーラーもまた流れてしまうのではないでしょうか。
このように☟
常総市の水害のがれきについて 次の記事に書きます。
では今日はここまで・・・