mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

見事な混淆林の御正体山

2016-07-20 10:42:20 | 日記
 
 「ぜひ生かしてください梅雨の晴れ間」と天気予報が呼びかけている。たしかに、月の第1週に棒ノ折山に登ったあとは(ほかの用事もあったのだが)、天候が不安定で2週間近く山へ行っていない。ではではというわけで、御正体山に出かけた。じつは、今年度後期の山の会の山行計画を建てていて、12月に御正体山をとりあげていた。私はまだ、登ったことがない。下見もかねて歩いてみようというわけ。
 
 御正体山は丹沢山塊の北、大月を挟む中央沿線の山並みの南、山中湖平野の北東数キロのところに位置する。先月歩いた倉見山の南東に位置する大きな山である。二百名山にも入っている。調べてみると御正体山の登山口は、4カ所ある。都留市の方から2カ所、道志村の方から2カ所。そのどこから入っても、山頂まで3時間余かかるほど、奥が深い。当初の計画では、都留市側の2カ所の登山口に車を止めて登り、山頂でキーを交換してそれぞれ別のルートへ下山するという「交差登山」を考えていた。三輪神社からの標高差が1000mを超えるが、まあ、このくらいは頑張れるとみた。ところが、もう一つの登山口である池の平登山口に冬季は車が入れないことがわかった。そこでもう一つ別の山伏峠登山口から歩いてみようというわけ。
 
 藤野駅近くで高速路を降りて「道志みち」と名づけられた道志村を抜けて山中湖に至る道を走る。「荒天のときには通行禁止となります」という表示がしてある。道志村の道の駅でトイレを借りたとき、ちょうどお巡りさんがいたので、冬の交通状況を訊ねる。12月でも雪が多いときの山伏峠越えはスノータイヤでも不安を感じる、と。御正体山では滑落などもあるから十分気を付けてくださいとアドバイスを受ける。山中湖からアプローチするよりはこの道志村を抜ける方がよい、とも。
 
 山伏峠はトンネルの上にある。トンネル西側からの登山道は、閉鎖されたホテルの敷地内にあって、通ることが出来ない。トンネルの東側へ戻って登りはじめる。8時半。緩やかだが細い山道をたどること7分。「山伏峠」の標示がある分岐に出る。標高1100m、今日登る標高差は約600m。南へ「丹沢 大棚の頭」、北へ「石割山分岐・御正体山」とあり、その脇に(距離が長い健脚向き)とコメントが加えてある。上り3時間、降り2時間15分のコースタイム。足元が凍りついているとそれぞれ30分くらい余計にみておく必要があるか。
 
 その登りが、けっこうな急登で滑りやすい。厳しいところにはロープが垂らされている。冬だと最初から軽アイゼンをつけた方が歩きやすいかもしれない。石割山分岐に45分、そこから5分で奥の岳1371mにつく。木柱の標示がぽつんと立っているだけ。背の高いササが生い茂り、木々は広葉樹が多い。いわゆるスギやヒノキの植林はなされていない。針葉樹はツガやモミ。広葉樹はミズナラやブナの混淆林。木の紅葉時期に歩くといいのかもしれない。10分ほどで送電鉄塔に着く。周りは木々が切り払われて見晴らしがいい。遠く下の方に山中湖がみえる。上方はすっかり厚い雲に覆われて見晴しは利かない。
 
 下っては上る稜線沿いの道はブナなどの木々が多い。帽子をとってザックに仕舞う。中の岳1411m。ベンチが据えてある。ブナの巨木もところどころにみえる。雲の中にいるように、霧が舞う。いつしかササはなくなり、バイケイソウが花をつけている。それを取り囲むようにヤブレガサに似た草が花をつけている。帰って調べてみたら、ヤワタソウのようだ。
 
 前の岳1471mも木柱の標示が一本立っているだけ。稜線の両側が切れ落ちて、ちょっとひやりとするところが1カ所あるが、気を引き締めて通過すれば問題ない。山頂部は少し広くなり、テーブル付きのベンチが一つある。すでにひとり登山者がいて、写真を撮っている。彼も同じ山伏峠から登ってきたらしい。ひょっとするとあの古いマークツーか。そうだ、まもなく20万キロだという。この後、どこかの温泉に行って湯治をすると話す。若いのに優雅ですねと応じると、いやそうでもない。じつは肺癌なんです。ほかにも転移していてね、と苦笑いするように、だが、坦々と口にする。67歳だそうだ。がんと診断された60歳から山歩きを始めた。放射線治療も行わず、残された人生を楽しむつもりと、さっぱりとしている。そうか、こういう山歩きをしている人もいるんだ。私が到着してまもなく彼は山伏峠へ向けて出発した。私はそれから食事をし、20分ばかり経ってから下山を開始したが、前の岳の手前で追いついた。彼の荷につけた熊錫がカランカランと鳴っているのが、ずいぶん手前から聞こえてくる。あまり追いつかないようにと歩いたが、彼が一休みしていたので、「お先に」と挨拶をして先行した。
 
 そうそう、クマに注意を払うことをしなかったが、送電鉄塔がみえたところの背丈よりも高いササが、ちょうど私が通過したときに、ざざざっと大きな音を立てて揺れ動き、ドキッとさせられた。足元というよりも私の胸の高さ。シカかクマか。ひょいと出くわしていたら、大きな熊パンチを食らったかもしれない。送電鉄塔の見晴しからは、富士山の3合目以下の長い裾野がはっきりと見えた。それより上は、五里霧中。
 
 快適に下って、13時15分に車のところに到着した。歩き始めて4時間45分。お昼タイムを除くと4時間25分で往復している。コースタイムより、40分ほど早い。まずまず。さて冬にふさわしいかどうか。富士山がはっきり見えるのは冬。軽アイゼンをつかえば、あんがい楽勝かもしれない。そんなことを考えながら帰途に就いた。