mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

沢歩きの醍醐味、棒ノ折山・白谷沢コース

2016-07-07 11:59:48 | 日記
 
 いや、実に面白い山行であった。棒ノ折山(棒の嶺)。難しい山ではない。以前にもこの山の会として別のルートで上ったこともある。だから、今回も、次回苗場山のトレーニング山行として採用した。だが、同じルートを登っては面白くないので、目に留まったこの白谷沢ルートを選んだ次第。
 
 5月1日に、このコースで滑落事故があって死亡したニュースがあった。あれっ? そんな難しいところがあるのか、と思った。このときは、曇った眼鏡を拭いていて転落した、という。年寄りはバランスに注意しなくちゃならない、と思った。あとで調べていると、2013年6月にも埼玉県山岳連盟が「棒ノ折山登山中に遭難救助の連絡があり、それっきりで連絡が取れない75歳男性がいる。心当たりの方は、情報を寄せてください」と広報していることを知った。確かに、山は深い。
 
 飯能駅のバス停に向かうと上尾の方々がすでに顔をそろえて待っていた。「あれっ? Odさんは?」と訊くと「一緒じゃないですよ」と返事。そうか、Odさんは上尾といっても伊那町だからニューシャトル経由。いつも一本早めに現地に来ているような方だから、河又で会うのかもしれないと思う。河又名栗湖入口のバス停にはKwrさんが待っていた。彼は車を登山口の「さわらびの湯」に置いて、バス停前で待っていたわけだ。林道を登りはじめるところの壁面に、「……一揆」と書きこんだ、大きな壁画がある。Kwrさんが「幕末にこのあたりで一揆があった。この下の方の人たちを集めて飯能の方へ押し出す、10万人の一揆だったそうだ」と話す。そういう「謂われ」と一緒にまだ時を過ごしているということか。登山口の少し先にある農産物販売所のトイレをつかってから出発。8時41分。
 
 と、Odさんから電話があった。「いまどこにいるんですか?」と訊くと、「駅のバス停にいますが、誰もいないので……」と。1時間バスの時刻を間違えたのだ。「いや、こちらはもう歩き始めるところ」と説明。後を追うのは無理、もし来るなら下山口から逆に登ってくると会える、と応える。彼女は、今日はここから帰ると応答する。どなたかが「駅まで来たのなら、どこか登って帰ればいいのに」とつぶやく。Kwrさんが「天覧山があるよ」と地元らしく応じている。翌朝Odさんからのメールに、天覧山と多峰主山を登って帰ったと記してあった。「せっかく」のセンスはどなたも同じなんだね。今日のリーダー、Msさんが「では、いきましょう」と声をかけて出発。
 
 栗山湖に向かう舗装林道を歩く。大きなダムに突き当たる。有馬ダム。巨大な石組みの、いわゆるロックフィル・ダムである。名前はたぶんこの湖の北東側に位置する有馬山に因んでいるのであろう。水位が低い。今年は水不足だ。ダムの傍らにある施設で電源の修理をしている。その脇の看板に「洪水吐」の説明がある。「洪水のときに安全に水を流せるように」、水の吐き出し口を「シュート式(すべり台)」ではなく「地下水路式」にした日本初の方式と説明している。その周回道路は周りから迫る山に囲まれ、湖の水が減ったところへそのまま押しつぶされそうに見える。けたたましい鳥の声が響き渡る。はじめ、シジュウカラにしては声が大きいと思った。前奏が終わってから、チョットコイ、チョットコイに変わり、コジュケイだと分かる。ツバメが飛び交う。
 
 名栗湖の南西端に注ぎ込む白谷沢の左岸に「棒ノ折山登山口」があり、舗装路を外れて登山道に入る。曇り空、気温が上がるというが、夏の山歩きは曇りの方がよい。湿度は高いから汗をかかないわけにはいかないが、陽ざしにさらされる暑さはない。白谷沢沿いに高度を上げていく。樹林の中。ところどころにマタタビの葉が白くなって点在する。霧が立ち込める。山全体が雲の中に取り込まれたようだ。沢を左岸から右岸へ、右岸から左岸へと何度か渡り返す。沢を渡ったところに「白孔雀の滝」と標柱が立つ。ここまで1時間。私のみたコースタイムと1時間も違う。Msさんの足も速いが、でも、これほどではない。すぐ後ろを歩くMrさんが急き立てるからだよとちゃちが飛び、2番手がOtさんと入れ替わる。彼はMsさんと距離を置いて付いていく。
 
 両側に大きな崖が現れ、沢そのものを登るかのように、高度を上げる。Msさんは迷うことなく、流れの中の石を踏み、沢の脇の苔生した石を踏んで斜面を登り、上部の沢を横切りながら、下の人たちが着いてくる様子をうかがっている。その背中にあるさらに上部の岩と森とが深山幽谷の風情を醸す。水のせいか涼しいとさえ思う。皆さん緊張しているが、危なっかしそうにない。この会の4年間で、ずいぶん上達したのだと思う。この沢の様子を知ると、転落すると死に至るということも納得がいく。
 
 沢歩きが終わりかけたところで、「それ、ギンバイソウですよ」と声を聴いた。関東より以西、西日本に多い植物。白く突き立った1本の茎の先に何輪もの小花をつけてすっくとしている。大きな緑の葉っぱの先がツバメの尾のように割れているのが、特徴だそうだ。そう言われて周りを見回すと、ガクサジサイが静かに花をつけている。葉を従えて(マムシ草の実のような、しかし赤くない)緑の穂? をつけている花もある。下山のときには、タマアジサイの群落を観た。花も咲いていたが、その傍らに丸い玉のような蕾をつけている。とりわけ梅雨のシーズンに元気に花開くのであろう。
 
 林道を横切ると、少し広い、木のベンチを置いたお休みどころがある。10時20分。歩き始めて1時間40分足らず。いいペースだ。「早いよ」という人もいる。大きな、いい響きの小鳥の鳴き声が聞こえる。遠方の針葉樹の上に鳥影が見える。双眼鏡を出してみると、オオルリ。霧の合間に、青い背中と白いお腹がはっきりと見える。その上へすすむと、キビタキだろうか、にぎやかな歌声が森の中にこだまする。緩やかにトラバース道を辿ると、「岩茸石」の分岐に出る。霧の中に巨大な大岩が姿を見せる。これがキノコにみえるというわけか。Kwrさんが「ここからが急登なんだよ」と皆さんを励ます。10時40分。
 
 登りはじめる。木の根が露出している急斜面。右に左に、踏み跡は広がる。これは山を荒らすなあ、と思う。相変わらず両側に生えるスギやヒノキは枝打ちがなされ、よく手入れされている。Kwrさんが「西川材の産地。むかしはたいへん潤っていた。飯能市と合併というときにも、栗山村は財政が潤沢だから合併は不要と拒んでいた」と付け加える。いまでもそこそこの収入にはなっているのであろうか。
 
 20分ほどでゴンジリ峠に着く。以前この会で歩いた黒山からの道と合流する。やはり雲の中。あとから柴犬を連れた人が登ってくる。犬は飼い主同様に小太り、元気がいい。「いや、引き摺られて登ってますよ」と、飼い主は屈託ない。去年の暮れに飼い犬を失くしたMrさんが近づいて撫でてやっている。犬はテツというそうだ。尾を振りながらMrさんにじゃれついている。この後私たちが登りはじめると、テツもあとを追ってきた。後ろを振り返りつつ上るMrさんに、鉄と一緒に来ればというと、そうしますと、すぐに後ろに回って、テツに話しかける。テツは四本脚。すぐに私たちを追い抜く。最後の斜面は、右のルートに入り込まないように山頂までロープを張っていた。右側の広い登山道は、目下「植物の養成中」とのこと。そのために、今度は左側の登山道が踏み荒らされ、広がっている。どうやったら、植物の養成ができるのだろう。
 
 11時20分ごろ山頂に到着。まだすっかり雲の中。すでに3人ほどの人がそれぞれに座を占めて、お昼にしている。食事をしていると、少しばかり空の青さが広がり、北の方の山頂部が黒い頭を雲の上に出しているのが、くっきりと見える。それもしかしすぐに、雲に覆われた。方向指示版には、谷川岳から奥日光、筑波山まで見えると絵にして示してある。棒ノ折山は人気の山のようだ。上がってくる人に聞くと、たいていの人が「さわらびの湯」からだという。そこに車を置いて白谷沢を登り、岩茸石の横を通って、河又栗山湖入口に下るルートをたどるのであろう。以前にそこを歩いたKwrさんは、なだらかな下山道だよ、という。面白味はないそうだから、やはり白谷沢の沢登りが何よりも目玉なのだろう。
 
 12時5分、下山にかかる。テツと別れを惜しんでいたMrさんはしんがりの一つ手前だ。手入れの行き届いたスギ・ヒノキ林の急斜面を、どんどん下る。霧が巻いて、先頭の姿がときどき見えなくなるほど。MsさんのあとをKwrさん、Onさんの健脚3人組がついている。少し遅れてFttさんとOtさん、Mrさん、そのあとの私の後ろに、「しんがりを歩きたい」というAさんがゆっくりとついてくる。大きく尾根筋からそれるところ、標高550mの地点で、一息入れる。まだ皆さんの元気はいい。そこからすぐのところで舗装林道に降り立つ。それを突っ切り、また山道の下山道に入る。ここからも急斜面の下りだ。スギの樹林のあいだに広葉樹も葉を広げている。陽ざしがみえてきた。ハルゼミが鳴き始める。正直だな、お日様に、と思う。タマアジサイの群落を観たのも、この辺りだ。
 
 ほどなく舗装の湯基入林道に出る。地図を見て、林道をこのまま降ると知ったMsさんが「これで(ガイドは)終了です」と声を出す。「良かったね、今日のコース」「ご苦労さん」「皆さん、(歩くのが)早いよ」とてんでに話しながら、落ち葉もある、雨に濡れたすべりやすい舗装路を、のんびりと下る。林道が大きく屈曲した地点に、バイクで入ってきている若者がいる。私たちは名栗川沿いに林道を下る。すぐに大松閣という温泉施設の前を通る。駐車場には何台もの車が止まっている。結構人気の施設なのだろうか。萩が白い花をつけて、満開の様子。おやおや、もう秋が来ているのだと思った。
 
 ほどなく、広い車道が見え、川の向こうの旧道に「名栗川橋」のバス停があった。13時40分着。歩き始めから5時間。山頂で40分もとっているから、ペースはずいぶん早かったことになる。このバス停、トイレも備えている。「熊が出ます」と登山者向けの注意書きもある。こちらから登る人も、多いのかもしれない。
 
 Kwrさんは「さわらびの湯」に向かうバスに乗り、私たちは、そのバスが折り返してきたのに乗って飯能に向かう。14時25分。気分のいい帰路であった。
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