自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆波高し 日本海のイカ釣り漁 

2020年06月09日 | ⇒ニュース走査

   日本海のイカ釣り漁が始まった。能登半島の尖端、能登町の小木漁港からはきのう8日、中型イカ釣り漁船が4隻が出港したと報じられている。目指すは能登半島の沖300㌔のEEZ(排他的経済水域)にある大和堆(やまとたい)、スルメイカの漁場だ。ただ、EEZであったとしても、違法に北朝鮮や中国の漁船も入り乱れ、一触即発の状況がここ数年続いている。

   昨年不穏な動きがいくつかった。8月23日、不審船2隻を水産庁の取締船が見つけ、EEZを離れるよう伝達した。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船の2隻で、高速艇には小銃を持った船員がいた。海上保安庁の巡視船が駆け付け警戒監視を続けたところ、不審船2隻は去った。毎年のようにEEZには北の木造漁船が数百隻も押し寄せているが、武装船となるとただ事ではない。

   10月7日にはEEZで、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突する事故があった。取締船が北の漁船に放水して退去するよう警告したところ、漁船が急旋回して取締船の左側から衝突してきた。通常、船同士がぶつかりそうな場合、左側の船が衝突をよけるルールとなっているが、避けることなく衝突し沈没した。さらに、日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ。2019年は全国で158件(18年225件)、生存者は6人、遺体は5体だった(第9管区海上保安本部まとめ)。

   悲惨な事件もかつて起きた。小木の漁業関係者では「八千代丸銃撃事件」が忘れられないだろう。1984年7月27日、小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕されるた。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   当時私は新聞記者で船長の遺族や漁業関係者に取材した。関係者は無防備の漁船を銃撃したこの事件に憤りと恐怖心を抱いていた。「イカ釣りは続けられないですね」と言うと、ある漁師は「板子(いたご)一枚 下は地獄だよ」と反応した。漁師という職業は船に乗るので常に危険と隣り合わせにいる。初めて知った言葉だった。確かに日本海で漁をする危険はあるものの小木はいまでもイカ漁の日本海側の拠点の一つである。

   日本側のイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに北の漁船はEEZに入り漁を始めている。5月中頃から取り締まりに入っている水産庁の退去警告は延べ54隻(うち放⽔措置4隻)の上っている(6月1日現在・水産庁公式ホームページ)。日本漁船の漁の安全と、豊漁を祈る。(※写真は、日本のEEZで違法操業する北朝鮮の漁船=海上保安庁の動画から)


⇒7日(火)午前・金沢の天気     はれ

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★内閣不支持「50%」どう読むか

2020年06月08日 | ⇒メディア時評

   読売新聞社の全国世論調査(今月5-7日)の結果がきょうの紙面で掲載されていた。内閣支持率は40%で前回(5月8-10日)より2ポイント減らした。不支持は50%と前回48%と2ポイント増えている。政権批判の数値が他社より比較的安定している読売の調査で、この数字をどう読むか。

   なにより、不支持が50%を超えたことだ。読売の調査で2012年12月の第2次安倍内閣発足以降これまで3度、不支持が50%を超えている。直近では2018年4月調査で53%。森友学園への国有地売却や財務省の文書の改ざんをめぐる問題が沸騰したころ。2017年7月調査で52%。森友・加計学園問題などでの批判の高まりと、小池都知事が率いる都民ファーストの会の都議選で圧勝で、不支持が前回から11ポイントも跳ね上がった。2015年9月調査で51%。このときは安全保障関連法で世論が揺らいだ時期だった。

   では、今回4度目となる不支持の高まりの理由は何なのか。目立つ数字が、新型コロナウイルス対策について「あなたは、政府の経済対策に、満足していますか、満足していませんか」の問いだ。「満足」が27%、「満足していない」が64%もある。この不満は何か。簡単に言えば、特別定額給付金「10万円」が行き渡っていないということだろう。安倍総理が「ウイルスとの闘いを乗り切るため」と5月中の支給を目標に実施した給付金が全国に行き渡っていないのだ。ネットで調べると、宮城県の対象世帯101万世帯のうち今月1日時点での支給は17万世帯、支給率はわずか17%だ(5日付・河北新報Web版)。休業要請などに応じた事業者への支援金についても、申請書類の不備などで給付件数が伸び悩んでいる。個人、事業者ともに不満がうっ積している現状がこの「64%」ではないだろうか。

   一方で、コロナ対策の政府の対応に関しては「評価する」が42%で前回34%を上回り、「評価しない」49%は前回58%から下がった。コロナ対策の全体評価は上昇傾向にあるで、給付件数が高まれば不満も和らいでくるのかもしれない。

   今回の読売調査で内閣支持は前回から2ポイント下がったとは言え、40%もある。内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とされる。第2次安倍内閣での支持率の最低は2017年7月調査の36%だ。第1次安倍内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%だった。これに比べるとまだまだ余裕があるのかもしれない。

   ただ、香港をめぐるアメリカと中国の摩擦、白人警官による黒人男性暴行死をきっかけにした抗議デモの世界的な広がりと11月のアメリカ大統領選挙の行方、東シナ海での中国の軍事活動の活発化など、緊張関係がいつ日本に飛び火してくるか分からない。安倍内閣の真価が問われるのは、こうした国際情勢や世の中の流れといったダイナミズムにどう対応するか、だろう。
(※写真は今月5日の横田滋氏の死去について安倍総理の会見の模様=総理官邸公式ホームページから)


⇒8日(月)朝・金沢の天気    はれ

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☆拉致事件は終わっていない

2020年06月07日 | ⇒ニュース走査

   北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの救出活動を続けてきた父親の滋さんが今月5日亡くなったことがメディアで報じられた。横田めぐみさんのポスター写真があったのを思い出し、パソコンの画像ファイルを探した。

   政府の拉致問題対策本部がつくったポスターだ=写真・上=。「必ず取り戻す!」。ポスターの右下には、横田めぐみさんが12歳のときに初めて母親の着物に袖を通し、新潟市の自宅前で撮った写真との説明がある。なんともあどけな少女の姿である。撮影者は父の滋さん、撮影日は1977年1月と記されている。赤と白の市松模様の羽織を着ているので、雪が積もった自宅前の風景にちょうどいいと滋さんが考えたアングルだったのだろう。めぐみさんが新潟市の海岸から拉致されたのはこの10ヵ月後だった。

   1977年9月に拉致1号事件が能登半島で起きていた。9月19日、東京都三鷹市役所の警備員だった久米裕さん(当時52歳)が石川県能登町宇出津(うしつ)の海岸で失踪した。地元では今でも「宇出津事件」と呼ばれている。久米さんは在日朝鮮人の男(37歳)と、国鉄三鷹駅を出発した。東海道を進み、福井県芦原温泉を経由して翌19日、能登町(当時・能都町)宇出津の旅館「紫雲荘」に到着した。午後9時、2人は黒っぽい服装で宿を出た。

   旅館から通報を受け、石川県警は捜査員を現場に急行させた。旅館から歩いて5分ほどの小さな入り江、通称「舟隠し」=写真・下=で男は石をカチカチとたたいた。数人の工作員が船で姿を現し、久米さんを乗せて闇に消えた。その後、同行した男は外国人登録証の提示を拒否したとして、駆けつけた捜査員に逮捕された。旅館からはラジオや久米さんの警棒などが見つかった。

  自分自身もこれまで何度か現地を訪れたことがある。そして、当時事件を取材した元新聞記者のK氏からこの事件にまつわる話を聞いた。K氏によると、この事件で石川県警察警備部は押収した乱数表から暗号の解読に成功したことが評価され、1979年に警察庁長官賞を受賞している。当時、この事件は単に朝鮮半島に向けて不法に出国をした日本人がいたという小さな事件としてしか報道されなかった。警察は、乱数表およびその解読の事実を公開した場合は、工作員による事件関係者の抹殺など、事件解決が困難になるリスクもあると判断し、公開に踏み切れなかったともいわれる。

  宇出津事件の以降、日本海沿岸部から人が次々と消える。この年の11月15日、横田めぐみさんが同じ日本海に面した新潟市の海岸べりの町から姿を消した。あれから43年、願いかなわず他界された父親の心情を察すると、言葉が出ない。拉致事件は終わっていない。

⇒7日(日)午前・金沢の天気    はれ

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★WHOの今さらマスク

2020年06月06日 | ⇒ニュース走査

           WHOの公式ホームページによると、新型コロナウイルスの感染が確認された人は世界全体で653万6354人で、亡くなった人は38万7155人となっている(6月5日現在)。きょうのニュースでも、死亡者がもっとも多いのはアメリカの10万9143人、イギリス(4万344人)、ブラジル(3万4021人)と続く。パンデミックの勢いは時間がたっても衰える気配がない。このような数字を見るたびに、WHOはいったい何をやっているのか、素人ながらに気にかかる。

   WHOが5日に行った記者会見でのテドロス事務局長の発言内容が掲載されていた。意外な内容だった。「In light of evolving evidence, WHO advises that governments should encourage the general public to wear masks where there is widespread transmission and physical distancing is difficult, such as on public transport, in shops or in other confined or crowded environments. 」(意訳:エビデンスの進展に照らして、WHOは、公共交通機関や店舗、あるいは他の閉ざされた、あるいは混雑した環境など、感染が広範囲に及び、物理的な距離が困難な場所では、各国政府は一般市民にマスクを着用するよう奨励すべきであると勧告している)

   今さら何をか言わんや、である。そもそも、WHOはこれまで、マスク着用に関して、健康な人が着けても感染を予防できる根拠はないとしていたのである。それを今回、エビデンスが得られたとして、大幅に修正して、感染が広がっている地域で人との距離をとることが難しい場合はマスクを着けるよう、各国政府が勧めるべきだという方針を示したというのだ。

   WHOの機能不全を感じたのは1月23日だった。中国の春節の大移動でフランスやオーストラリアでは感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合は時期尚早と「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、渡航制限勧告は見送った。このとき、日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府はすでに武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。

   WHOは保健衛生の制度が比較的貧弱な国々に感染が広がることを懸念しているのは間違いない。1月30日の緊急事態宣言とのときも、テドロス氏は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べた(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。途上国にパンデミックが広がるまで待つという、「タイムラグ」感が逆にパンデミックを増長させてきたのではないだろうか。あるいは、中国への「配慮」に途上国を使ったのか。

⇒6日(土)夜・金沢の天気    はれ

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☆アメリカ 負の連鎖のただ中で

2020年06月05日 | ⇒ニュース走査

         アメリカ・ミネソタ州で黒人男性が白人警官に拘束され死亡してから10日たったが、抗議デモは各地に飛び火して治まる気配がないようだ。むしろ煽ったのは、「法と秩序」を重視するトランプ大統領で、過激化する抗議デモを抑えるために軍の動員を指示したことがさらなる反発を招いた。

   5日付のCNNニュースWeb版は「Trump shares letter that calls peaceful protesters 'terrorists'」(トランプ氏、平和的な抗議者を 「テロリスト」 と呼ぶ書簡を公開)の見出しで、月曜日(今月1日)ホワイトハウスの門の外にいた平和的な抗議者たちに催涙弾など浴びせて解散させて、トランプ氏が彼らを「テロリスト」と書簡で綴っていた、と記事にしている=写真=。

   今月2日の「ロイター/イプソス世論調査」によると、抗議デモが全米に広がっていることについて、抗議活動参加者に「共感する」と答えた人の割合が64%に達し、否定的な27%、「分からない」の9%を大きく上回った。トランプ大統領の対応を支持しないという割合は55%を超え、このうち「強く反対」が40%となり、支持は33%だった。共和党員に限っても、トランプ氏の対応に肯定的だったのは67%だった。ただ、大統領としての職務全般を評価する声を82%だった(6月3日付・ロイター通信Web版日本語)

           連日報道される抗議デモやこうした世論調査を見ると、多くの日本人は「トランプは終わった」と読むだろう。むしろ、大統領選挙が本格的に始まったと読む方が正解かもしれない。トランプ氏はおそらく民主党のバイデン氏が票固めをするために、抗議デモを利用していると考えているだろう。有権者の気を引くためのトランプ氏の次なる一手は、香港に国家安全法を導入し一国二制度を形骸化された中国に対する制裁だろう。ドルと人民元の交換停止といった強烈な一撃もあるかもしれない。そうなると中国だけでなく、世界経済がさらに大揺れになる。

   一方で、抗議デモは必ずしも評価されているとは限らない。それは新型コロナウイルスの感染拡大というもう一つの側面がある。事件が起きたミネソタ州や、ニューヨーク州の知事は、デモ参加者に対して、ウイルス検査を受けるよう呼びかけている。とくに、ニューヨーク州は抗議デモの参加者数は最大規模で、1人から多くの人に感染を広げる「スーパースプレッダー」になる可能性がある。不都合な真実ではある。

   コロナ禍の渦中にある国民的なストレス、黒人貧困層のうっ積、そして失業の不安と怒りなどがこの抗議デモに集約されていると考えると根深さを感じる。まさに、アメリカは負の連鎖のただ中にあることだけは読める。

⇒5日(金)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

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★そのシーンは演出なのか、局側は会見を

2020年06月04日 | ⇒メディア時評

   共同生活をテーマにした、いわゆるリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが先月23日に自死したとされる事件で、SNS上で誹謗中傷を受けたことが原因との議論が今も続いている。番組では、女子プロレスラーが大切にしていたプロレスのコスチュームを同居していた男性が誤って乾燥機にかけてしまったことが原因で、プロレスラーが男性を強く叱責した場面があり、これに対して、SNSから「死ね」「消えろ」といった誹謗中傷の批判が相次いだとされる。番組はシナリオ台本のないことがウリなのだが、テレビ局側の責任は免れるのだろうか。

  問題は、シナリオ台本はないとは言え、そのシーンが「台本なき演出」ではなかったか。番組には必ずディレクターが立ち会い、視聴者の反応を意識した番組の構成が練られる。その優先順位があるから番組を時間通りに納めることができるのだ。今回、女子プロレスラーの叱責のシーンが番組のクライマックスのシーンとして位置づけられ番組が構成された可能性が高い。現場のディレクターはむしろ、SNSでの投稿を煽ることをあらかじめ意識していたかもしれない。

   そう考えると、局側の責任がむしろ問われるのではないだろうか。ところが、番組側はいっさいのこの点について釈明していない。局側あたかも番組の放送中止をもって贖罪(罪滅ぼし)としているようにも思える。むしろ、制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見して、その点を説明すべきではないだろうか。そのシーンをあえて演出したのかどうか。したのであれば、出演者にどのよう指示を出していたのか。

   番組を制作したフジテレビの社長の月末の定例記者は新型コロナウイルスの影響で見送りとなっている。記者からの書面での質問にこの問題を以下回答している。

   「今回の木村花さんの痛ましい出来事に対して、改めて心からのお悔やみを申し上げます。同時に番組制作の私共がもっと細かく、継続的に、彼女の気持ちに寄り添うことができなかったのだろうかと慙愧の念に堪えません。『テラスハウス』はリアリティーショーであり、主に若者の恋愛を軸に、それにまつわる葛藤や喜びや挫折など様々な感情を扱うものですが、刻々変化する出演者の心の在り方という大変デリケートな問題を番組としてどう扱っていくか、時としてどう救済していくかということについて向き合う私どもの認識が十分ではなかったと考えております。以上のことを考慮したうえで、今回、既報の通り、同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります。」(5月29日付・フジテレビジョン公式ホームページ)

   「十分な検証」と述べているが、そのシーンが演出であったのかどうかぜひ知りたい。はやり制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見すべきだと考える。もちろん、SNSで批判を投稿した人たちをかばうつもりは一切ない。亡くなられた本人の尊厳を守る意味でも、ぜひ知りたいところだ。また、記者会はなぜ会見の開催をフジテレビ側に要求しないのだろうか。

(※写真はイギリスのBBCニュースが報じた女子プロレスラーの死=5月23日付・Web版=)

⇒4日(木)夜・金沢の天気     はれ

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☆ウイズコロナの日常、マスク忘れの日々

2020年06月03日 | ⇒メディア時評

   緊急事態宣言が全面解除になったとは言え、きのう20日、東京都は新型コロナウイルスの感染状況に悪化の兆候が見られるとして、警戒を呼びかける「東京アラート」を出した。北九州市ではきょうも5人の感染が確認され、12日連続での感染拡大と報じられている。

   きょう午後、2ヵ月に一度通っている金沢市内の総合病院に行くと、全面解除とは言え、ある意味で緊張感が漂っていた。玄関入口でセンサーでの体温検査があり、内科の受付に行くと、「血圧はご自身で測ってください」と言われた。これまで担当の医師が血圧測定のバンドを腕に巻いてくれたのだが。窓口のスタッフに尋ねると、「医師と患者さんがお互い触れ合わないために血圧測定をお願いしています」と。廊下の血圧測定機で測り、そのメモ紙を受付に出した。

   診察室に入ると、マスク姿の医師から「お変わりありませんか」と尋ねられ、「とくにありません」と答える。その後、次回の診察日を調整して終わり。時間的には90秒ほどだった。いつもなら、医師が血圧を測りながら、「きょうは(血圧が)高いですね」とか言いながら、若干ながら会話がある。今回は実に淡々とした診察だった。

   支払いのため待合所に行く。新聞を読もうとしたが、いつものラックに新聞がない=写真=。ことわり書きが貼ってあった。「新型コロナウイルス感染対策のため、当面の間、新聞は撤去させていただきます。病院長」。何人かが新聞を広げると、それだけで感染リスクが発生する。そこまでしなくてもと一瞬思ったが、これが「ウイズコロナ」の日常なのだろう。会計の窓口と薬の受け渡しカウンターもすべてビニールシートで仕切られていた。キャッシュカードで支払いを済ませ外に出る。

    昼ご飯がまだだったので、近くのラーメンのチェーン店に入る。5人がけのカウンターに案内されたが、それぞれ透明プラチックで仕切られていた。何だか窮屈そうだったので、テーブル席にさせてもらった。ここも新聞、雑誌が撤去されていた。スマホを左手で見ながら、右手で箸をとってラーメンをすする。

    支払いを済ませて外に出る。するとラーメン屋の店員が追いかけてきて、「お客さん、マスク忘れてますよ」と。「また忘れた」とあわてて、テーブル席のイスに置いたマスクを取りに戻る。マスク忘れが常態化しつつある、ウイズコロナの日常ではある。

⇒3日(水)夜・金沢の天気    はれ

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★コロナ後の社会・経済の構造変化とは

2020年06月02日 | ⇒トレンド探査

   証券会社の知り合いから一冊のリポートが送られてきた。手書きの添え状にこう書かれていた。「コロナ禍、人のマインドが180度変わり、日本にとって良い変化が起きているように感じております」と。リポートのタイトルは「日本:コロナ後の世界~マクロ経済・社会構造に予想される変化」。このテーマに関心があったのでさっそく読んでみる。果たして、「良い変化」かどうか。

   リポ-トは証券会社のチーフエコノミストによる分析だ。リポートではコロナ禍による日本と世界の価値観の転換を4つの視点で述べている。1)人の動きに関わる様々な変化、2)広義の社会保険機能の強化、3)国境・県境など「境界」の存在価値の上昇、4)効率第一主義の見直し、についてだ。

   1番目の人の動きに関わる変化は顕著だ。「ソーシャルディスタンス」というという言葉が当たり前のように使われるようになった。この視点でリポートでは、これまで国や自治体が推進してきた「コンパクトシティ」という、人口を中心市街地に集積するという政策は見直しが必要になってくるかもしれない、と述べている。また、人が動くことによって付加価値が生み出されてきた観光や文化・芸術などの施設では、その場に行くなくても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術の進化でより実感が増すかもしれない。観光やエンターテイメントの分野も変わるかもしれない。

   2番目の広義の社会保険は多様な解釈を提案している。これまで福祉国家としての日本では、医療や介護の「高齢者中心」の社会保障だったが、これからは生活保護や雇用保険といったセーフティネットの拡充にも力点が注がれる。これによって、日本は北欧型の高福祉・高負担モデルに接近していく可能性があると指摘している。国民の合意が大前提だが、さらなる消費増税に向かうことにも。また、企業の経営理念は利益優先の株主重視から、消費者や社員、社会の安全を重視するステークホルダー重視へと切り替えが始まりそうだ。

   3番目の国境・県境など「境界」の存在価値では、マイナス材料としては、出入国や国境検疫の高いハードルが続き、旅行業や宿泊などのサービス産業にも影響が出てくる。一方で、境界をつくることで域内の住民の安全を守るという発想は、自治体の連携による広域行政、あるいは都道府県を超えた道州制といった自治体再編の動きを加速させるもしれないと指摘している。

   4番目の効率第一主義の見直しでは、在庫と供給網の在り方を問うている。ジャスト・イン・タイム型の在庫を極端に圧縮する生産体制や、コンビニに見られる小量高頻度配送は自然災害にその弱さを露呈している。さらに、企業価値は投資と株主還元というこれまでの「アメリカ型」の姿勢から、内部留保の蓄積と並行して一定の手元流動性を手元に置く「日本型」の企業財務が再評価されるかもしれない。以上は、野村證券「ANCHOR REPORT」(5月12日号)=写真=からの引用である。

   これに自己流の予想も加えてみたい。5月24日付のブログでも紹介したが、コロナ禍で日常の変化がある。それは「人が触ったものには触らない」という衛生観念が共有されている。ドアノブやエレベーターのタッチボタンのほか、紙幣や硬貨も非衛生的だと指摘は以前からあった。この意識変化によってキャッシュレス化がさらに進むとみている。さらに、国がデジタル法定通貨の実現に向けて動く可能性が見えてきた。2024年に予定している新札発行を、デジタル法定通貨へと舵を切るのチャンスではないだろうか。「デジタル円」の可能性がコロナの後押しで加速する。そんなふうに憶測している。

⇒2日(火)夜・金沢の天気      はれ

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☆アベノマスクが届く

2020年06月01日 | ⇒メディア時評

   きのうのブログで、「起死回生の一発がない限り、アベノマスクの風評とともに内閣支持率は今後も下がり続けるだろう。読売調査で20%台に落ちるのはあと半年、12月まで持つか持たないか。『アベノマスク解散』もありうるのではないか」と書いた。すると、知人からきょうメールがあり、「それはない。安倍総理は来年9月までやる。なぜなら、来年の東京オリピックを誰が引き継いでやるのか、そんな政治家はいないよ」と。なるほど、混沌とした中で誰も来年のオリンピックの面倒までみる政治家はいない。なんとなく理解できる。ということは安倍総理は来年9月まで続投か。

   きょう午後3時ごろ、郵便受けの入り口部分がカチャンと音がした。郵便物かと思い玄関に取りに出た。すると、ビニール袋に入った布マスク2枚、「アベノマスク」が届いていた=写真=。待ち焦がれていただけに、しげしげと手に取って眺めた。表側に「みなさまへ」とメッセージが書かれている。

「みなさまには、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた取組にご協力をいただいていることに、感謝申し上げます。感染拡大を防ぐため、これまでどおり、『3つの密(密閉、密集、密接)』を避けていただくとともに、『新しい生活様式』を実践いただくようお願いします。その際、自分は感染者かもしれないという意識をもっていただき、症状がない人でもマスクの着用をお願いします。この度、一住所あたり2枚の布マスクを配布いたします。十分な量でないことは承知しておりますが、使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで、再利用可能ですので、ご活用ください。」

   差出人は厚生労働省医政局経済化(マスク等物資対策班)、となっている。右下にはQRコードがついていて、スマホを読み取りアプリを当てると、厚労省公式ホームページの「布マスクのに関するQ&A」のページに飛ぶ。さらに、ビニール封筒の裏を見ると、「新しい生活様式」の実践例が書かれていて、「身体的距離の確保」「マスクの着用」「手洗い」といった、基本的な感染対策がイラスト入りで記されている。当初はマスク2枚が送られてくるだけかと思っていたが、全体になんとも丁寧な仕様になっている。

   さっそく使おうかと考えたが、恐れ多く、もったいない気がしたので記念にとっておくことにした。というか、金沢の気温は25度を超えていて、布マスクをする気にはなれなかった。夕方のローカルニュースでは、石川県ではきょう3日間連続で感染者がゼロだったという。アベノマスクの出番が再び来ないことを祈りつつ、そっと机の引き出しに仕舞う。

⇒1日(月)夜・金沢の天気      はれ

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