自在コラム

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☆日本は「カーボンニュートラル先進国」になれるのか

2021年11月02日 | ⇒ニュース走査

   選挙に勝って勢いがついたのだろうか。イギリスで開かれているCOP26の首脳会合で岸田総理が演説し、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減するなどとした日本の目標を説明した。そのうえで、先進国が途上国に年間1000億㌦を支援するとした目標に届いていない現状を踏まえ、これまで日本政府が表明した5年間で官民合わせて600億㌦規模の支援に加え、今後5年間で最大100億㌦の追加支援を行う用意があると表明。「気候変動という人類共通の課題に日本は総力を挙げて取り組んでいく決意だ」と強調した(2日付・NHKニュースWeb版)。

   去年10月26日、当時の菅総理は臨時国会の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と声高に述べた。さらに、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力するとし、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではない」と強調した。そして、石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換し、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、脱炭素社会に向けてのイノベーションを起こすため、実用化を見据えた研究開発を加速させると述べていた。

   二人の総理が力強く脱炭素を宣言したことで、日本は「カーボンニュートラル先進国」の評価が国際的に高まるかもしれない。ただ、矛盾も見えている。経産省がまとめた第6次エネルギー基本計画が先月22日に閣議決定された。第5次エネルギー基本計画(2018年7月)と比較する。第5次では2030年度の電源構成を火力56%(LNG27%、石炭26%、石油3%)、原子力22-20%、再生可能エネルギー(水力、太陽光、風力など)を22-24%としていた。それが、第6次では火力42%(LNG20%、石炭19%、石油2%、水素・アンモニア1%)、原子力20-22%、再生可能エネルギーが36-38%となっている。

    この数字を見て、再生可能エネルギーの割合が高すぎると感じる。2030年までに建設可能な再生可能エネルギーとなると、水力と風力よりも太陽光が手っ取りばやいだろう。しかし、これまではFIT(固定価格買取制度)で建設が順調に伸びてきたが、これまでのペースさらに伸びるだろうか。また、原子力の割合も高いのではないか。「20-22%」というのは、第5次エネルギー基本計画をベースにした試算でこれを実現するには、原発27基が必要だとされている。現実に再稼働している原発は10基だ。カーボンニュートラルのための原発再稼働は地域住民の理解を得られるとは思えない。

   カーボンニュートラルに反対するつもりはまったくない。ただ、日本の取り組みに実現可能性はあるのかどうか、社会的な混乱を招かないのか。

⇒2日(火)夜・金沢の天気      くもり時々あめ


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