自在コラム

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☆能登半島地震 注目の坂茂「仮設住宅」 急がれる漁港復旧

2024年02月18日 | ⇒ドキュメント回廊

   地元紙などメディア各社のニュースをチェックしていると、復旧に向けてようやく着手が始まった印象を受ける=写真・上=。北国新聞(2月17日付)によると、世界的な建築家で知られる坂茂(ばん・しげる)氏が半島の尖端の珠洲市で木造2階建ての仮設住宅の建設に近く着工する。場所は見附島を望む同市宝立町の市有地で、6棟で計90戸が建つ。小さな棒状の木材を差し込んでつなげる「DLT材」を使用する。DLT材を積み上げ、箱形のユニットを形成し、これを組み合わせて6、9、12坪の住戸をつくる。内装は加工せずに木のぬくもりを生かす。

   坂氏は1995年の阪神大震災を契機に世界各地で被災地の支援活動に取り組んでいて、去年5月5日に珠洲市で起きた震度6強の地震の際も、避難所となっていた公民館に間仕切りスペースを造って市に寄贈した。間仕切りはプラスティックなどではなく、ダンボール製の簡単な仕組み。個室にはカーテン布が張られているが、プライバシー確保のために透けない。中にあるベッドもダンボール。まさに環境と人権に配慮した間仕切りだった。(※写真・中は、坂茂建築設計公式サイト「令和6年能登半島地震 被災地支援プロジェクト」より)

   また、去年秋に同市で開催された「奥能登国際芸術祭2023」(9月23日-11月12日)では、ヒノキの木を圧縮して強度を上げた木材を、鉄骨などで用いられる「トラス構造」で設計した「潮騒レストラン」が評判を呼んだ。何かと注目される坂氏の建築物、新たな工法で造られる仮設住宅は震災復興のシンボルになるかもしれない。

   石川県内で最大の漁港でもある輪島漁港の海底が隆起し、港内の200隻余りの漁船が出漁できなくなっている。今月5日に港を見に行くと、冬場はタラやブリ、ズワイガニなどの水揚げでにぎわうのだが漁港が静まり返っていた=写真・下=。北國新聞夕刊(2月16日付)や北陸中日新聞(同17日付)によると、震災前は漁港内は浸水が3㍍から4㍍だったが、現在は1㍍から2㍍前後の隆起が確認されていている。漁船が移動するには水深2.5㍍から3㍍が必要とされ、今月16日から海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業が始まっている。当面の工期は3月28日までだが、さらに延長される見通しのようだ。

   漁港の海底隆起は輪島漁港だけではない。能登半島の北側、外浦と呼ばれる珠洲市、輪島市、志賀町の広範囲で海岸べりが隆起した。隆起があった3市町22漁港の漁協の組合員は2640人、年間漁獲高は69億円(2022年実績)になる(北陸中日新聞調べ)。

   「板子一枚、下は地獄」は漁師がよく口にする言葉だ。自然への恐れや畏怖の念を抱きながら、海から恵みを得ようと生業を続けてきた。懸念されるのは、船が出せないとなると漁業就労者が激減するのではないだろうか。浚渫作業は北陸地方整備局が所管している。漁港の復旧の展望をはやく示してほしい。

⇒18日(日)夜・金沢の天気     はれ 


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