自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆感動の東京五輪から1年、ただあえて言うならば

2022年07月28日 | ⇒トレンド探査

   1年前のいまごろ、東京オリンピックで日本勢は金メダルラッシュだった=写真・上=。卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が強豪・中国チームを破って五輪卓球で日本に初の金メダルをもたらした。シニア世代には卓球は中国のお家芸というイメージがあるので、この「チャイナの壁」を突破した快挙だった。

   卓球とは違って、オリンピックの醍醐味を新たな視覚で楽しんだのがスケートボードだった。当時はスケートボードがオリンピック競技になっていることすら知らなかった。女子ストリートで、13歳の西矢椛(もみじ)選手が優勝し、日本史上最年少の五輪メダリストになった。2位のブラジル選手も13歳、3位の中山楓奈選手は16歳、表彰台に10代の選手が並んだ姿は新鮮なイメージだった。

   地元選手の活躍もあっぱれだった。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手がベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダル。さらに、川井選手の妹・友香子選手も62㌔級で金メダルを獲得。姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えられた。

   ここから論調は一変する。いまさら論にもなるが、人口減少が続き、膨れ上がる赤字国債を誰が返済するのかという議論が出ている中で、1兆4530億円もの開催経費をかけてまでオリンピックを開催した意義はどこにあったのか。世界は「オリンピック・ノー」に動き始めている。2024年のパリ開催は決まっているが、立候補を表明していたドイツのハンブルグやローマ、ブタペストでは開催費が財政を圧迫するとの住民の反対が根強く、最終的に撤退している。28年のロス、32年のブリスベンも競争相手の都市がなくすんなりと決まったように思われているが、他の都市は住民の反対で立候補に至らなかったというのが経緯のようだ。

   日本も国民は東京オリンピックを待ち望んでいたのか。開催前のNHK世論調査(2021年2月8日付)で、オリンピックをどのようなカタチで開催すべきかとの問いで、「中止する」が38%で最も多く、「観客の数を制限」29%、「無観客」23%だった。コロナ禍でもあり、中止の声は3分の1を以上を占めた。世論が割れたことで、オリンピックの大口スポンサーだったトヨタは関連のテレビCMを見送らざるを得なかった。

   札幌市が1972年に続き2度目の開催を目指す2030年冬のオリンピック・パラリンピック。同市が作成した「2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会 概要(案)」(2021年11月発行)=写真・下=によると、開催経費は最大で3000億円を見込んでいる。うち、大会運営費が2000億円から2200億円、施設整備費が800億円としている。巨額な経費はかかるにしても、オリンピック開催による経済効果はそれを払拭するというのが市側の建前論だろう。

   オリンピックの開催に反対ではない。ただ、イベントの開催でレガシーや経済効果を期待する時代はもう終わったのではないか。2025年の大阪・関西万博にしてもしかり。インターネットで情報が飛び交う時代に、万博で何か得るものがあるのだろうか。時代に合わなくなった「オワコン」(終わったコンテンツ)にしがみついて、「夢よ再び」の時代ではない。オリンピックや万博はもう他国に任せて、新たなグローバル・コンテンツを創り出すことに価値を見出すべきではないだろうか。

⇒28日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ


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