自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆コロナ禍「ステージ4」 試される知事の行動力

2021年01月15日 | ⇒ニュース走査

   最近、「ステージ4」という言葉が新聞・テレビなどで目につくようになってきた。けさの北陸中日新聞(1月15日付)でも一面の見出しでも、「石川県の病床使用率『ステージ4』」と出ていた。感染ピーク時における確保想定病床の使用率が50%以上に達し、緊急事態宣言の対象となるステージ4(爆発的感染拡大)の目安に達したというのだ。

   ひっ迫しつつある病床の確保をどうするか。厚生労働省はきょう、感染症の専門部会を開き、通常国会に提出する感染症法改正案について議論し、新型コロナウイルス感染者の病床を確保し、受け入れを促進するため、国や都道府県知事が医療機関に「協力を求めることができる」という現在の感染症法の規定を「勧告できる」に強化する方針を政府が固めた。勧告に従わなければ公表できるようにする(1月15日付・共同通信Web版)。

   病院に対して「協力」要請から「勧告」「公表」へと知事権限を強化するには背景があるようだ。厚労省公式ホームページに掲載されている「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について」をチェックすると。前回の緊急事態宣言(4月7日-5月25日)で確保病床は1万7290、確保想定(見込み)病床は3万639だった(5月13日まとめ)。感染者が拡大し、緊急事態宣言の再発令が議論になっていた今月は確保病床は2万7650、確保見込み病床は2万7635だった(1月6日まとめ)。つまり、確保見込み病床数が減っているのだ。コロナ禍の第1波、第2波に比べれば大きな第3波が来ているのに、病床数が減っている。なぜだ。

   全国で8400余り(病床数156万)ある病院のうち、民間病院が占める割合は82%とされる(平成28年度・総務省まとめ)。公立病院の場合はすでに都道府県知事などから命令に近いカタチで新型コロナの患者の受け入れが要請されている。以下憶測だ。この1年、民間病院関係者は公立の医療現場での新型コロナの患者への対応を見て、医師の負担の大きさや看護師の数が足りなさなど様々な問題を認識した。さらに、病院でクラスターとなれば経営のリスクを抱えることにもなる。当初は医療機関の使命として患者の受け入れを心づもりしていたが、ここに来て躊躇し始めているのではないだろうか。

   日本の医療制度は、医療機関の自主的な判断を尊重するうえ、これまで民間病院に対する行政の介入の余地は小さかった。とは言え、患者がこのまま増えれば公立病院の病床数はひっ迫する。民間病院でも、いわゆる大病院でなければ受け入れは難しい。今後、受け入れ可能な民間病院を都道府県が調査し、知事は自らの責任で決定を下し、予算をつけて必要な人材を手配して、体制を整える。その上で、知事が直接出向いて民間病院側に要請することになるだろう。勧告には法的な拘束力はない。受け入れられなければ、その事実を公表することになる。

   病床がひっ迫して、他の病気の患者の受け入れに影響が出るという事態を避けながら、今後さらに増えるであろう新型コロナの患者がたらい回しにならないように事態を収める。知事は「ワード(言葉)」ではなく、「行動」が試されることになる。

⇒15日(金)午後・金沢の天気    はれ


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