自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「G20」 信なくば立たず

2019年07月02日 | ⇒ニュース走査

     「G20」大阪サミットが閉幕した。読売新聞がサミット期間中の先月28-30日実施した全国世論調査は、安倍内閣の支持率が53%で前回5月の調査の55%とほぼ横ばいだったと報じている。議長としてG20サミットを仕切った安倍総理への国民の評価は「なんとか無難に乗り切りましたね。お疲れさま」というイメージだろうか。それにしてもG20の成り行きをウオッチしていて、いくつか違和感を感じた。

  その一つ。来年、サウジアラビアの首都リヤドで行われるG20サミットについて、ムハンマド皇太子が仕切り役となっていることだ。2018年10月、サウジアラビア政府を批判してきた同国のジャーナリストがトルコにあるサウジアラビア総領事館で殺害された。事件当初から皇太子の関与が取りざたされてきた。今月に入り、皇太子と政府高官の関与を示す調査結果が国連人権理事会に報告された(6月20日付「BBCニュース」Web版)。その皇太子と会談した安倍総理は「サウジでのサミット成功に向け、引き続き日本としても取り組む」と述べた(総理官邸HP)。

  G20サミットは加盟国のGDPが世界の8割以上を占めるなど、「国際経済協調の第一のフォーラム」(Premier Forum for International Economic Cooperation)であり、取り上げられる議題は世界経済や貿易・投資のほか、気候・エネルギー、雇用、デジタル、テロ対策、移民・難民問題などだ(外務省HP)。人権とは正面から向き合っていない。「信なくば立たず」という古くからの言葉がある。孔子が、政治を執り行う上で大切なものとして「軍備」「食糧」「民衆の信頼」の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことに由来する。国際政治も同様だ。国連人権理事会でも取りざたされている人物をどう信頼すればよいのか。

   次は日本のことだ。G20サミットで議長国の大役を担った。「国際貢献度」というバロメーターがあるとすれば、国際的な注目度を含めて瞬間的にトップだろう。しかし、国際政治の中で日本はどう位置付けかというと、国連憲章第53条と107条に「敵国条項」があり、いまだに第2次大戦の敗戦国である日本とドイツが対象になっている。実態として敵国条項は「死文化」しているため、1995年に削除する決議があったものの、国連憲章から削除されていない。この理不尽な敵国条項をいつまで引きずっているのか。確かに敵国条項があるから、日本はアメリカに外交と安全保障を任せて経済発展ができた、との意見もある。

   G20サミット閉幕後に記者会見を行ったトランプ大統領は、アメリカの対日防衛義務を定めた日米安全保障条約について「不公平な合意だ」と指摘し、条約の見直しの必要性を安倍総理に伝えたと述べて波紋が広がった。これはある意味で、敵国条項と安全保障を両国で考える、よい機会かもしれない。

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