ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [8月26日(金)~8月28日(日)]と人気順位 ►「ココスニ」は米国に残る慰安婦たちの資料を点検した監督の執念のドキュ ►北朝鮮物コメディ「6/45」、劇場内は笑いの連続とか

2022-09-04 06:53:36 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事でまず注目の韓国映画は「ココスニ」。慰安婦関係のドキュメンタリーです。1944年8月連合軍はミャンマー北部の州都ミッチーナーを陥落させた後その地の日本軍慰安所の朝鮮人慰安婦たち20人と経営者の夫婦2人の捕虜尋問報告書が写真と共にアメリカ戦時情報局(戦後はアメリカ合衆国情報局)に残されています。タイトルの「ココスニ」は、20人の慰安婦中その後の足取りが分かるただ1人の名前です。
 この<日本人戦争捕虜尋問レポート No.49>は、ウィキペディア(→コチラ)にかなり詳しく説明されていますが、最下段の<評価>欄にもあるように秦郁彦・小林よしのりといった韓国の主張を否定する側の有力な論拠となり、また産経もこの資料等を根拠に2014年「米政府の慰安婦問題調査で「奴隷化」の証拠発見されず…日本側の主張の強力な後押しに」(2014)と題したウェブ記事(→コチラ)を公開し「日本に関する文書の点検基準の一つとして「いわゆる慰安婦プログラム=日本軍統治地域女性の性的目的のための組織的奴隷化」にかかわる文書の発見と報告が指示されていた。だが、報告では日本の官憲による捕虜虐待や民間人殺傷の代表例が数十件列記されたが、慰安婦関連は皆無だった」と結論付けています。
 本作のイ・ソクチェ監督はその<日本人戦争捕虜尋問レポート No.49>を読みますが、「これは歪曲されている!」と考え、各人の話せた言葉等を考察し、さらにはその後ミャンマーのミッチーナーやインドのレド等を訪ね、現場踏査と証言確保等を通じて20人の帰国経路の調査を行います。またイギリス国立文書保管所やスイス国際赤十字委員会等を探し、未公開資料の発掘を通じて名前と出身地域をもとに実際に強制動員されたおばあさん1人の存在も確認しました。
 さらに、→ハンギョレの記事によると、ココスニと記録に残る1人が咸陽(慶尚南道の郡)に住んでいた朴スニさんであったことを突きとめます。さらにスニさんの子や孫たち、そして連合軍報告書を作成した当時の連合軍幹部たちの子孫を訪ね、その記録の比較作業を進めたとのこと。
 いや、私ヌルボ、イ・ソクチェ監督がここまでココスニこと朴スニさんがその後たどった足取りを明らかにした熱意と執念は称賛に値すると思いました。ただそれでもなお、「はたして上記<日本人戦争捕虜尋問レポート No.49>のこれまでの読み方は180度覆されたのか?」という疑問は残ります。また、なぜ監督が尋問レポートを見て「これはデタラメだ!」と断じたか?ということも。これまで「鬼郷」(2016)や「雪道」(2017)いった慰安婦関係のドラマは明らかに事実とは思えない場面がありましたが、やっぱり教育やメディアを通じて形成された固定観念はそう簡単には揺らぐものではないということか・・・。「私たちは歴史を記憶しなければならない。過去にも現在でも彼らは嘘を言っている!」とありましたが、そもそも1944年当時の尋問レポートで誰かが嘘をつく理由があるのでしょうか? いずれにしろ、ぜひ本作を観てみたいものですが、日本公開もありそう、かな?
 ※私ヌルボ、決して<慰安婦映画>を忌避しているわけではありません。土井敏邦監督「“記憶”と生きる」(2015)や朴壽南監督「沈黙-立ち上がる慰安婦」(2017)は良い映画でした。日本人&在日コリアンの監督だからか(??)過度の思い込みがなかったから、かも・・・。
          
【 「ココスニ」のポスター(左)と、1944年ミャンマーで捕虜となった朝鮮人慰安婦たち[アメリカ合衆国情報局蔵] 】

▶観客動員ランキング2位の韓国映画「6/45」は北朝鮮物なのですが、意外なことにジャンルはコメディなんですね。韓国の兵士が偶然拾ったロト1等の当たり券をうっかり落としたら風に飛ばされて南北間の軍事境界線を越えて北朝鮮側に言っちゃって・・・という話。よくこんなストーリーを考えついたものです(笑)。ネチズンの寸評を見ると「웃김(笑い)」「웃었다(笑った)」といった言葉がゾロゾロ。ある映画ジャーナリスト氏も「笑いの純度と打率が高い」とコメントしてます。現実離れしていようが関係ナシ、こういう映画も観てみたいと思いました。

▶韓国映画と関係ない話。最近川崎チネチッタとシネマート新宿でウォン・カーウァイ監督の「恋する惑星」(1994)と「天使の涙」(1995)を鑑賞。彼の作品は「恋する惑星」を日本公開(1995)直後に観ただけ。その時は元々人の名前や顔を憶えるのが大の苦手ということもあってストーリーもよく理解できず、フェイ・ウォンの歌「夢中人」(→YouTube.アレ、LoFtのビニ袋が・・・)くらいしか記憶ナシ。今回は中国文学研究者の藤井省三東大名誉教授の「中国語圏における村上春樹」という論考を読んだら「香港映画は村上春樹からさまざまな影響を受けていて、その筆頭がウォン・カーウァイ監督」といったことが記されていて、これは観ておかなくちゃ、と思った次第。で感想は「観て良かった」。とくに「恋する惑星」は★5つ。登場人物等最後まで誤解していて後で気がついたのは相変わらずでしたが・・・(笑)。ま、リクツで考えないでOKという見方もあるってこと。ちょっと驚いたのはどちらの映画館も大入りだったこと。シネマート新宿の方は定員333人中最前列辺りを除いて半分くらいは埋まっていたのでは? それも女性が7割以上。どういうとこで情報を仕入れてどんな点に惹かれたのか取材してみようかなと・・・思っただけですけど。

    ★★★ NAVERの人気順位(8月31日(水)現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
 ※[記者・評論家による順位]とも①等の右の( )は前週の順位。評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
  「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) ココスニ(韓国)  9.83(12)
②(1) トップガン マーヴェリック  9.76(40,770)
③(2) 名探偵コナン ハロウィンの花嫁(日本)  9.48(1,600)
④(3) しなやかに(韓国)  9.47(17)
⑤(4) モア(韓国)  9.45(221)
⑥(5) 劇場版サバイバルシリーズ
       : 人体のサバイバル!/深海のサバイバル!(日本)  9.42(38)
⑦(6) アナタの顔(韓国)  9.41(153)
⑧(7) トゥーランドット 闇の王国(韓国)  9.40(15)
⑨(9) 犯罪都市2(韓国)  9.33(27,234)
⑩(-) 劇場版 呪術廻戦 0(日本)  9.24(1,622)

 ①「ココスニ」が新登場です。冒頭に記したように韓国の慰安婦関連のドキュメンタリーです。
 1942年5月、朝鮮軍司令部の提案で通称パパサン、ママサン夫婦が全国を回って就職を口実に負傷兵を世話する女性を募集し釜山、台湾、シンガポールを経てミャンマーに位置する日本軍<慰安婦>収容所に送ります。その後1944年8月、連合軍と中国軍に押された日本軍と捕えられた朝鮮人女性たちは連合国の捕虜となり、通訳もなく日本語と英語で尋問された後、インド各地に散らばります。そして発見されたこれらの朝鮮人<慰安婦>20人について記録したアメリカ戦時情報局49番尋問報告書には「朝鮮人<慰安婦>はお金稼ぎに出た売春婦」とあります。20人の中でその後の足取りが分かるのはただ1人、その<ココスニ>という名前の手がかりを追跡し、歪んだ記録の中に隠された真実を明らかにします・・・。原題は「코코순이」です。

     記者・評論家による順位】

①(1) 別れる決心(韓国)  8.71(14)
②(2) ドライブ・マイ・カー(日本)  8.44(9)
②(2) トップガン マーヴェリック  8.44(9)
④(新) 私は最悪。  8.00(9)
⑤(5) 小説家の映画(韓国)  8.00(3)
⑥(6) アフター・ヤン  7.80(5)
⑦(7) NOPE/ノープ  7.67(9)
⑧(8) モア(韓国)  7.38(8)
⑨(9) フルタイム  7.33(9)
⑩(10) ベルイマン島にて  7.30(7)

 ④「私は最悪。」が新登場です。ノルウェーのラブロマンス&ドラマ(&コメディ?)。日本でも7月1日から公開されているので説明は省略します。韓国題は「사랑할 땐 누구나 최악이 된다(愛する時は誰も最悪になる)」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月26日(金)~8月28日(日) ★★★
         「ハント」が3週連続1位、しかし「閑山:龍の出現」に追いつくのはほとんど無理

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ハント(韓国)・・・・・・・・・・・・8/10・・・・・・369,913 ・・・・3,720,090 ・・・・・38,591・・・・1,221
2(36)・・6/45(韓国)・・・・・・・・・・・・8/24・・・・・・355,834 ・・・・・・479,318・・・・・・・4,952・・・・1,159
3(2)・・閑山:龍の出現(韓国)・・・・7/27・・・・・・157,590 ・・・・7,004,958 ・・・・・71,482・・・・・・865
4(4)・・トップガン マーヴェリック・・6/22・・・・60,562・・・・・7,973,996 ・・・・・85,320・・・・・・423
5(10)・・ブレット・トレイン ・・・・・8/24・・・・・・・52,618 ・・・・・・109,335・・・・・・・1,220・・・・・・767
6(3)・・NOPE/ノープ ・・・・・・・・・・8/17・・・・・・・43,687 ・・・・・・355,689・・・・・・・4,081・・・・・・496
7(6)・・ミニオンズ フィーバー ・・・7/20・・・・・・・21,519 ・・・・2,245,437 ・・・・・21,776・・・・・・357
8(新)・・鬼滅の刃 浅草編(日本)・・8/25 ・・・・・・10,571・・・・・・・・14,284・・・・・・・・・152・・・・・・124
9(7)・・DC がんばれ!スーパーペット・・8/10・・・10,274・・・・・・・237,383・・・・・・・2,232・・・・・・212
10(62)・・わたしは最悪。・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・7,103・・・・・・・・10,909・・・・・・・・・114 ・・・・・・・58
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「ハント」が3週連続1位、と言っても、累計観客動員数を見ると「閑山:龍の出現」が「トップガン マーヴェリック」に追いつく可能性の方が高そうですね。
 2・8・10位の3作品が新登場です。
 2位「6/45」は韓国のコメディ。タイトルの<6/45>とは、45個の番号の中で6個当てれば賞金がもらえる紙切れ、すなわちロト6のことです。
 古参兵長のチョヌ(コ・ギョンピョ)は、偶然1等当選のロト6を拾います。ところが心臓が飛び出すようなときめきも束の間、瞬間のミスでロト6は風に乗って北朝鮮との軍事境界線を越えてしまいます。チョヌはグラッと壊れかけたメンタルをなんとか立て直し、必ずまた探し出さなければと前を向きます。
 偶然南から飛んで来た1等当選のロト6を拾ったのは北朝鮮兵士ヨンホ(イ・イギョン)でした。「これが南朝鮮人民の膏血を絞り取る6/45という紙切れなのか」。しかし、なんと当選金が57億ウォン(約5億5千万円)だと? 当選金を目の前で逃す危機に瀕したチョヌと、北朝鮮では1枚の紙切れにすぎないロト6を当選金に変えなければならないヨンホ。これに予想外のメンバー(?)まで合流して57億を死守するための3:3チームが結成されますが…。拾った者VSまた拾った者の、ギリギリの線を越える取り分交渉が始まります! 原題は「육사오(6/45)」です。※北朝鮮には宝くじの類はないのでは? ・・・と思ったら、「2003年北朝鮮でも韓国の<6/45>に似た<8/64>ロト宝くじを発売した」という記事が2003年の中央日報日本語版にありました。
 8位「鬼滅の刃 浅草編」は劇場じゃないよなー、と思ってググってみたら、TVアニメ「鬼滅の刃」の第6話~第10話を再編集した特別編なのだそうな。その再編集に「な~んだ」とがっかりして1/10を付けたネチズンが約2割、10/10の満点を付けたネチズンが約3割5分で、平均は6.13/10。観てないけど妥当な感じがします。韓国題は「귀멸의 칼날: 아사쿠사 편」です。
 10位「私は最悪。」は、前述の通り日本でもすでに公開されているので説明は省略します。韓国題は「사랑할 땐 누구나 최악이 된다(愛する時は誰も最悪になる」です。

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(21)・・わたしは最悪。・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・7,103 ・・・・・・・10,909 ・・・・・・・・114 ・・・・・・・58
2(新)・・アウェイク ・・・・・・・・・・・・・・・・・8/24・・・・・・・・・1,533 ・・・・・・・・3,175・・・・・・・・・・27 ・・・・・・・59
3(16)・・ココスニ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・・・1,298 ・・・・・・・・2,779・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・38
4(2)・・ノクターン(韓国)・・・・・・・・・・・・・8/18・・・・・・・・・1,005 ・・・・・・・・8,052・・・・・・・・・・59 ・・・・・・・20
5(1)・・フルタイム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18・・・・・・・・・・・756 ・・・・・・・・7,539・・・・・・・・・・71 ・・・・・・・34

 1・2・3位の3作品が新登場です。
 1位「わたしは最悪」と3位「ココスニ」については上述しました。
 2位「アウェイク」については→1つ前の記事でいろいろ書いたので、ここでは紹介したので説明を省略します。

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