ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国語]rightなどと同様に、韓国語でも「右」は「正しい」

2013-11-22 21:06:12 | 韓国語あれこれ
 韓国語学習者の皆さん。この記事のタイトルを見て、
  ①「そんなこと、前から知ってたよ」という人
  ②「あ、なるほど」とすぐにわかった人
  ③「どういうこと?」と首をかしげる人
・・・と、反応が分かれると思います。

 私ヌルボ、だいぶ前に、「左が왼쪽(ウェンチョク)で、右が오른쪽(オルンチョク)で・・・」と心の中でつぶやいていて、ふと心に浮かんだことです。
 (※初級で、まだ右と左がごっちゃになっている方は、日本語・韓国語とも(たとえば)常に左を先に言うようにしていると間違えません。ヌルボの場合は左から。ついでに左手親指からの振りもいっしょに。)

 オルンチョク」の「チョク(쪽)」はもちろん「側」。すると「オルン」とか「ウェン」は何だ?というのが今回のテーマです。

 で、ヌルボの頭に浮かんだのが「옳은 쪽」。「オルンチョク」と同じ発音で、意味は「正しい側」。(옳은は形容詞옳다の連体形。)
 ・・・とすると、英語のright、フランス語のdroit、ドイツ語のrecht等と同様に韓国語でも「右=正しい」ということになるのか、ということ。

 なんとなくそう思ったことですが、最近確認してみたらやはりそうでした。
 また、「ウェンチョク(왼쪽)」は、漢字の「外(외)」に由来するのかなと思ったら、「向きや順序が逆になっている」「心がねじけている」という意味の形容詞외다の連体形のようです。(今は그르다が一般的に使われ、「間違った側」だと「그른 쪽」というのがふつう。)
 英語のleftも原義は「弱い。価値がない」ということで、gauche(仏)やlink(独)等と同様否定的な意味があります。

 ところで、韓国の人たちはこうしたことがどれくらい意識しているのでしょうか?

 <오른쪽은 옳은 쪽인가? 왼쪽은 그른 쪽인가?(右は正しい側か? 左は正しくない側か?>と題したブログ記事がありました。(→コチラ。)
 また、→コチラの<DAUM知識>は右翼の語源を尋ねる質問に対し、左右の固有語の語源まで細かく答えています。
 つまり、ふだんはなにげなく使っている오른쪽ですが、考えてみるとこういうことだな、という感じでしょうか?

       
 【「経済は<右側>ではなく<正しい側>に向かわなければならない」と書かれている。(ソウル大・イ・ジュング教授の著書「クオ・ヴァディス 韓国経済」の帯) 】

 以上が韓国語の右左の語源について。

 さて、では「なぜ右が正しくて左は正しくないのだろう?」とか、「日本語の右・左の語源はどういうふうに考えられているのだろう?」等は当然の次なる疑問ですね。

 そこでヌルボ、書斎代わりに使っている(?)横浜市立図書館で主に次の資料を参考に調べてみました。
 [A]山中㐮太「国語語源辞典」(校倉書房)
 [B]大野晋「古典基礎語辞典」(角川書店)
 [C]マーティン・ガードナー「自然界における左と右」(紀伊國屋書店)
 [D]西岡秀雄「東・西・南・北・右・左」(北隆館)
 [E]富永裕久「右と左の不思議がわかる絵辞典」(PHP)

 説明は極力簡略化して書きます。
「左(ひだり)」・・・南を向いた時、日が出る方向。ヒ(日)イダ(出)リ(方向)。※非常に有力な説のようである。
「右(みぎ)」・・・右手で物をにぎるから。ニギリ→ミギリ→ミギ。※比較的有力な説。貝原益軒も唱えている。しかし大野晋は「語源未詳」としている。
 ※白鳥庫吉は、南面して太陽を東方に拝する習慣から、左を「直(ヒタ・ヒダリ)」、右を「曲(マガ・マガリ・ミギリ)」とした。
・日本では、上記のような太陽信仰から奈良時代までは左が上とされた。(その後中国の影響で右が上になっていった。)
・古墳時代は埴輪の衣服は左袵(おくみ)=左前。719年に右袵に統一され今に及ぶ。
・中国では、漢代では右が上。唐には左。官位も左が上に。したがって日本の律令官制でも左大臣等のように左が上である。

 あ、そういえば、徳寿宮の中和殿(正殿)前に文官・武官が地位順に並ぶ位置を示す品階石が並んでいますが、それを見ると王から見て左側(東)が文官、右側(西)が武官で、文官が武官より位が高いことがわかりますね。

 以上でこの記事はおしまいですが、上記[C]~[E]の本がおもしろいネタの宝庫なので、韓国とは関係ありませんがオマケとして少し紹介します。

[C]マーティン・ガードナー「自然界における左と右」(紀伊國屋書店)・・・約20年ぶり(?)の再読。内容は生物学から原子核物理学等の自然科学が大半だが、文学等にも話題は及び、むずかしいが読みやすい(??)。
[E]富永裕久「右と左の不思議がわかる絵辞典」(PHP)・・・児童書だが、言葉や社会生活、自然科学等々にわたり非常に幅広くネタを集めていて、おもしろく読みやすい。
これらの本よりわかったのは、たとえば以下のようなこと。

○文字を書く方向 [英語等]左→右・・・インクで手を汚しにくい)
            [アラビア語等]右→左・・・右手にハンマー、左手にノミを持って石に彫っていく
            [中国語等]上→下・・・木簡を右手でたぐって読み進める

○飛行機が左から乗降するのは、船の左舷接岸の伝統を踏襲したもの。

○ネジやワインオープナーやらせん階段は(右回りに遠ざかる)右らせん。

○回転しながら遠ざかって行くらせんを、そのらせんより速いスピードで追いかけると回転の方向は逆になって見える。

○巻貝のほとんどは右巻き。

○ひな飾りで、古くは男びなが左(向かって右)だったが、現在は逆が多い。(昭和天皇即位の礼の時から、という。)

○名古屋の人は、「次の交差点を右にまがって」とはいわず「西にまがって」ということが多い。(←ホント!?)

○アユは驚くと左回りに逃げるので、鵜飼の舟はかがり火を進行方向左手に出す。

○左利きの歴史上の人物・・・レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ピカソ、ガリレオ、ニュートン、ダーウィン、エジソン、ナポレオン、チャーチル、アレクサンダー大王、ベーブ・ルース、チャップリン、マリリン・モンロー、ビル・ゲイツ

○最後に[E]富永裕久「右と左の不思議がわかる絵辞典」から2つのネタを紹介。
      
     

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4 コメント

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これはまた楽しい雑学! (のんき)
2013-11-27 05:32:19
なるほど、なるほど^^
言われてみれば、ですねぇ。

ひな人形のお内裏様とお雛様の並びは関東と関西で違う、と聞いたような気も・・・
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子ども向きの本 (ヌルボ)
2013-12-01 11:29:19
私自身、とくに子ども向きの本でいろんなことがわかりました。
日頃疑問に思わないようなことでも、歴史的に考えるといろいろ深い経緯があるのですねー。
名古屋の人が「西にまがって・・・」というのはどうなんでしょうね。私は名古屋生まれですがよくわかりません。
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外다 ? (ながと)
2014-04-19 16:33:34
외다 の語源が 外다 デハナイ という保証もまたありませんよね。
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「ウェーダ」が「外ダ」かどうか? (ヌルボ)
2014-04-19 19:13:44
文字化け部分を、左のブックマーク中の<かじりたてのハングル  ユニコード関連ツール>で変換すると、「ウェーダ」の語源が「外ダ」ではないとの保証もない、ということですね。
たしかに、ご指摘の通りです。

ただ、「漢字1字+ダ」という形の形容詞の例が韓国語で過去からどれだけあるのか?ということは、私はわかりません。
「漢字1字+ハダ」という形容詞や動詞はいうまでもなくたくさんありますが・・・。
そのあたりのことは、先生がよくご存知のことと思いますので、 ご教示いただければ幸いです。
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