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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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1990年代の外国映画と、韓国映画の個人的ベスト・テン

2019-09-22 23:48:20 | 韓国映画(&その他の映画)

 「キネマ旬報」の創刊は1919年7月。ちょうど1世紀前です。
 そこでキネ旬は、昨2018年<創刊100年特別企画>をスタートさせました。1970年以降を10年ごとに区切ってそれぞれの年代別のベスト・テンを外国映画・日本映画別に専門家のアンケートをもとに選んで発表するというものです。
 その第1弾は2018年7月下旬特別号の<1970年代外国映画ベスト・テン>でした。

 私ヌルボ、映画ファンになったのは中学生の頃から。つまり60年代。高校時代にATGの会員に。「誓いの休暇」や「シベールの日曜日」等が印象に残っています。とはいえ、勉強もあるし(ホンマか?)、地方(徳島)在住だし、年間の鑑賞作品数は10数本くらいだったか・・・。
 70年代は大学を出て教職に就くも、仕事に専念してして(ホンマか?)約20年間は個人的映画史の大きなブランクの時代でした。
 それが90年代前後から状況が変わって韓国オタク&映画ファン生活に突入。(逃避か?)
 というようなこともあって、「キネマ旬報」の最新号の1つ前、つまり9月下旬特別号の<1990年代外国映画ベスト・テン>は、おっ、これなら私ヌルボも参画できるゾ!とウレシクなり、個人的に90年代外国映画ベスト・テンを作成してみました。

《私ヌルボの1990年代外国映画ベスト・テン》

①エミール・クストリッツァ監督「アンダーグラウンド」(1995.仏・独・ハンガリー)
 ②エドワード・ヤン監督「牯嶺街少年殺人事件」(1991.台湾)
 ③イム・グォンテク監督「風の丘を越えて 西便制」(1993.韓国)
 ④アズィーズ・ミルザー監督「ラジュー出世する」(1992.インド)
 ⑤ティム・ロビンス監督「デッドマン・ウォーキング」(1995.米)
 ⑥フランク・ダラボン監督「ショーシャンクの空に」(1994.米)
 ⑦マイケル・ラドフォード監督「イル・ポスティーノ」(1994.伊)
 ⑧ケン・ローチ監督「カルラの歌」(1996.英)
 ⑨マジッド・マジディ監督「運動靴と赤い金魚」(1997.イラン)
 ⑩ダレル・ジェームズ・ルート監督「輝きの大地」(1995.南アフリカ・英・米)

 この中で9作品は90年代リアルタイムで観ましたが、ただ1つ「牯嶺街少年殺人事件」だけは2017年に〈4Kレストア・デジタルリマスター版〉で観ました。
 ①②は順不同です。③は確定です。④以下はほとんど差はありません。
 キネ旬の1位は、表紙を見ればわかるように「牯嶺街少年殺人事件」でした。実は、この作品だけはリアルタイムで観たものではなく、2017年に〈4Kレストア・デジタルリマスター版〉で観ました。
 キネ旬の10位(同点があるので12作品)までで、ヌルボのベスト10と重なっているのは①②⑥の3作品。まあ、そんなもんでしょう。⑧と⑩を選んでいる人はゼロ。むしろ、④と⑤を2人の人が選んでいることがとてもうれしく思えました。
 以前、映画を評価する時には [A]娯楽性 [B]社会性 [C]芸術性 の3つのモノサシがあって、私ヌルボの場合は[A]=20%、[B]=50%、[C]=30% といったところかな ・・・と書いたことがありました。今①~⑩を眺めると、社会性は70%くらいかも、と思い直しました。しかし、いくら歴史や社会の勉強になるといっても、心が動かされるほどの衝撃や深い感動があるか?という点は([A]~[C]のモノサシを超えて)まず最優先の評価ポイントです。
 記憶力はよくないので、映画の筋や俳優、映画館のこと等々については、むしろ「部分的に鮮明に憶えている」と言った方がよさそうです。「ショーシャンクの空に」は、ある高校に勤務していた頃午後休みを取って藤沢の映画館に行って観ました。すると3年生の男女生徒がケシカランことに(orウラヤマシイことに)おそらく授業をサボって観に来ているではないですか! 私ヌルボはもちろん見て見ぬふりをしていましたが、映画が終わるとその男子がやって来て、弾んだ声で「先生、いい映画だったですね!」と(笑)。こういう所で気持ちが通じ合うとは・・・、いい思い出です。

 キネ旬の集計リストを見ると、103人の投票作品が非常に分散していることがわかります。1位は表紙でわかる(?)ように「牯嶺街少年殺人事件」でそ39pt集めましたが、これはダントツ。10ptで9位グループに入ります。リストは細かい字で3ページに収められていますが、3pt以上は1ページにも満たず、全体の半分以上は1ptの作品がずらっと並んでいます。したがって、ベスト10のうち誰かと3作品重なっていればかなり好みが一致するとみてよさそうなくらいです。

 90年代の外国映画の概観として、大久保清朗・金原由佳・森直人の3氏の鼎談で、次のようなことが語られていました。
・80年代の中国映画の台頭などから潜在的にはあったが、90年代はアジア映画が次々に公開されるようになり、「洋画=欧米の映画」ではなくなった
 ※ただし、外国映画の配給収入の上位を見ると、大ブームとなった1位「タイタニック」を筆頭に、2位以下も「アルマゲドン」「ジュラシック・パーク」「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」「インデペンデンス・デイ」とアメリカ映画がズラーッと並んでいる。
・「ターミネーター2」や「ジュラシック・パーク」など、CG(コンピューター・グラフィックス)とVFX(特殊視覚効果)の始まりの時代だった
 ※一般の映画ファンにとって画期的だったのはシネコンの普及。皮切りは93年4月オープンのワーナー・マイカル・シネマズ海老名(今はイオンシネマ海老名か ?)だったのか! またDVDソフトとプレイヤーの商品化は96年11月。そういえば、パソコンもWindows 95の発売以降爆発的に普及したなあ。
・女性監督の作品は多くはないが、ジェンダー的な問題意識が一気に浮上し始めた。ex.「ブエノスアイレス」(←これは未見)・「テルマ&ルイーズ」
 ・・・と、これらについてはたしかに、とナットク。
 ただ、大久保さんの(トップ・テン内の本数を見ると)「タランティーノとカーウァイの時代といえますね」という発言に対し、森さんが「でも90年代を象徴する人を一人だけあげろといわれたら、やっぱりダントツでタランティーノじゃないかな」と・・・。
 うーむ、私ヌルボ、最近の記事でも書いたように、「パルプ・フィクション」も「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」もとくに感動もなく、さしておもしろいとも思わなかったんだけと・・・。あ、ウォン・カーウァイも同様。思えば私ヌルボ、その頃すでに時代に遅れ始めてたってこと?

 あ、韓国オタクのブログなので1990年代の韓国映画の個人的ベスト・テンも上げておきましょう。

《私ヌルボの1990年代韓国映画ベスト・テン》

①イム・グォンテク監督「風の丘を越えて ~西便制」(1993)
 ②パク・チョンウォン監督「われらの歪んだ英雄」(1992)
 ③イム・グォンテク監督「太白山脈」(1994)
 ④ホ・ジノ監督「八月のクリスマス」(1998)
 ⑤イ・チャンドン監督「ペパーミント・キャンディー」(1999)
 ⑥イ・ミニョン監督「灼熱の屋上」(1995)
 ⑦パク・チョルス監督「学生府君神位」(1996)
 ⑧イム・グォンテク監督「開闢」(1991)
 ⑨イ・ジョンヒャン監督「美術館の隣の動物園」(1998)
 ⑩チャン・ギルス監督「銀馬将軍は来なかった」(1991)
 日本で韓国映画に大きな関心が向けられるようになったのは「シュリ」や「JSA」等が公開された2000年前後からで、その後はあの「冬ソナ」ブームもあって次々に公開されるようになりました。で、90年代はというと、その<夜明け前>といった感じ。80年代末から始まったNHKの<アジア映画劇場>あたりからアジア映画に関心を向ける人が少しずつ増えてゆき、90年代半ばには(今はない)千石三百人劇場で<韓国映画の全貌>(1994)や<韓国映画祭1946→1996 -知られざる映画大国>(1996)のような規模の大きい特別上映が開かれ、私ヌルボも可能なかぎり足を運びましたが、以後の韓国映画人気を予感させるものでした。(→関連記事。)
 ただ、上記の韓国映画祭の上映作品は80年代までのものが多く、90年代の作品に絞ると①~⑤はよしとして、⑥以下は自分でもどんなものか?と・・・。なお、当時リアルタイムで観た作品は①④⑤⑨⑩で、ちょうど半分です。
 キネ旬の集計リストを見ると、韓国映画で一番上位はやはり「風の丘を越えて 西便制」でした。ただ4ptで56位とは遺憾。佐藤忠男先生はもちろん選んでいました。韓国の映画史上(興行成績の面でも)画期的な作品で、ヌルボとしても文句ナシの1位です。作中の名場面のロケ地・青山島(チョンサンド)には6年前サークル仲間と行って来ました。(→過去記事。)

 この記事の下書きは10日以上前に書いたのですが、その後発売されたキネ旬10月上旬特別号は<1990年代日本映画ベスト・テン>が載っていて、その第1位は在日がらみの崔洋一監督「月はどっちに出ている」ということで注目ではあるのですが、洋画はキネ旬の30位あたりまで7割以上観ているのに対して、日本映画は3分の1程度だから、ベスト・テンの記事はどーするかなー・・・。


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3 コメント

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映画ベストテン (野薔薇)
2019-09-24 07:53:20
とても興味深く拝読しました。「誓いの休暇」懐かしいなあ! その頃、私はソ連の社会主義を信じている愚かで無知な人間でした。ソ連崩壊は、青天の霹靂ともいうべき出来事でした。(ああ情けない)

ケン・ローチは大好きな監督ですのに、「カルラの歌」は知りません。息子さんが監督した「オレンジと太陽」がとてもよかったですね。イラン映画の「赤い運動靴と赤い金魚」、私も大好きです。あの頃、イランの女性監督が次々いい作品を作っていましたね。

韓国映画ベストテン、私はどれも知りません。私はつい最近韓国映画を観るようになったのですもの。ヌルボさんは、映画評論家を職業にされてもいいくらい観ていらっしゃって、羨ましいです。私は多くの時間を無駄にした気分です。

高校時代、フランス映画にはまったことがあります。「我が青春のマリアンヌ」(デュエヴィヴィエ監督)を覚えているくらいで、つまらない映画が多かったような記憶があります。それこそ時間の無駄でした。

韓国映画「ザ・ネゴシエーション」を最近観ました。人気俳優のヒョンビンが悪役で登場です。ところが、もっとすごい悪(ワル)がいましたという話です。ドキドキしっぱなし。

日本映画の「新聞記者」を観てがっかり。全編暗い画面で、笑いも涙もドキドキハラハラもまったくなし。こんな映画、若者が見て分かるのかしら? 老いたインテリ左翼にしか理解できないと思いました。もっと韓国映画を観て学んでほしいと思いましたよ。

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「誓いの休暇」!! (ヌルボ)
2019-09-26 02:14:45
 1950~60年代は、ふつうに誠実で正義感を持つ青少年はほとんど社会主義に共感を抱いていたでしょう。ワタシもそうだったように。(ホンマか?) 米ソならソ連、また韓国ではなく北朝鮮支持。高1の時「千里馬」も観に行きました。

 「誓いの休暇」(1959)はすごく感動しましたねー。当時は「僕の村は戦場だった」(1962)ほど話題になってなかったような(ボンヤリした)印象がありますが、以下の掲示板やレビューを見ると、今も(一部の)ファンたちの間で話題になっていますね。 →
https://bubble4.5ch.net/test/read.cgi/kinema/1128177594/
http://cinema.pia.co.jp/imp/7727/
https://kenshijun.exblog.jp/17826919/
 なお、当時のワタシはギターに凝っていて、ギター用の映画音楽曲集を買ってきてこの映画の主題曲を弾いたりもしていました。その哀調を帯びたメロディーは今も記憶に残っています。

 ワタシは今年はすでに90本ばかり映画を観てますが、「新聞記者」はあまり気が進まずまた観ていません。望月さんの原作本は興味深く読んだのですが・・・。韓国関係で話題の、といえば例の「主戦場」も観ていません。韓国オタクとしての<義務感>のようなものだけで観に行くのもどんなものかなー?と自問の末、結局観ないことにしました。日韓の「論客」たちが、それぞれの教育やメディア、政治家等からの限られた情報で形成された相手方に対する固定的なイメージを前提に議論するというのは精神衛生上よくなさそうだし・・・。それにしても、互いのことをそんなに知らないのによく大きな声で主張できてしまう人のなんと多いことか・・・。
 (まあワタシも文在寅という人は少なくとも政治家にはふさわしくない人だとは思っていますけどね。さりとていっぱいいる政治屋の皆さんたちを支持する気にはならないし、困ったものです。)
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誓いの休暇 (野薔薇)
2019-09-27 16:53:29
ヌルボさん、返信ありがとうございました。「誓いの休暇」の掲示板、レビューのサイトをご紹介いただき、この映画が多くの人に感動を与えたということに、私が感動しております。それにしても、ヌルボさんの記憶力の優れていらっしゃること! 私はすぐ忘れてしまいます。ザルのような頭です。映画をご覧になったあと、日記のように詳細に記録をとっておられるのですか?

 この映画の主題歌なんて、はるか昔に忘れてしまっています。ギターでそれが弾けるとは、素敵ですね。1本の映画をいろんな形で楽しんでいらっしゃいますね。

年に90本も観ておられるなんて! 本当にびっくり!私は、月にせいぜい2本です。ヌルボさんとは比較になりませんが、人生の節々で、世界中の映画を観たことは、世界を広く知ることに役立ったと思います。

中南米の映画を観て(キューバ、チリ、アルゼンチン、ブラジルなど)、アメリカ帝国主義の暴力性や横暴さを知りました。ベルギーのダルデンヌ兄弟の映画をほとんど見ましたが、ベルギー観光局が旅行者に見てほしい風景とベルギー社会の現実とのギャップに驚きました。イタリア人監督が撮った「アルジェの戦い」は、アルジェリア独立戦争の過酷さ、支配者の残虐さに、言葉も出ませんでした。(それぞれの制作年代がばらばらですが)

本当に映画って素晴らしい。またヌルボさんの映画評をひとつの指針にして、映画を楽しみたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
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