ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [2月26日(金)~2月28日(日)]

2016-03-02 15:50:23 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 諸般の事情で1日遅れの記事になってしまいました。
 月曜(2/29)に観た「知らない、ふたり」は「ちょっと得した」感のある映画で、21:05~の回とはいえ私ヌルボ含め5人という観客数にはもったいない作品でした。なかなか凝った脚本で、時間軸が行き来したり、カメラの視点を移動させたり・・・。内田けんじ監督の佳作「運命じゃない人」(2004)を思い出しました。なお全部のセリフの半分近く(?)が韓国語なので、韓国語学習者にはベンキョーになります。

 韓国では2月24日公開の<慰安婦映画>「鬼郷」が意外なほどの大ヒットで観客動員数1位になっています。昨年末以来の状況変化の影響ですね。2002年にナヌムの家で元慰安婦の姜日出(カン・イルチュル)さんの絵「焼かれる少女たち」を見て衝撃を受けたというチョ・ジョンレ監督(作家・趙廷来とは別人の女性)がクラウドファンディング等で資金を集め、14年かけて完成させた作品です。「鬼郷(귀향)」というタイトルは「帰郷」と同じスペルですが、監督によれば「戦争犯罪の犠牲者たちの魂を慰める」という意味をこめて「鬼郷」としたとのことです。日本のサイトでもぼつぼつ話題になってきていますが、<反日>や<憤り>ではなく<鎮魂>(あるいは<癒し><反省>)の映画ということで少しズレがあるかも・・・。しかし実際に足手まといになった大勢の少女慰安婦たちが焼かれるという事実が本当にあったのかどうか? 冷静に検証する必要があると思うのですが・・・。
 なお、この映画についての韓国メディアの報じ方は各紙の政治的立場をそのまま反映しています。日本語版のリンクを張っておきます。
 <進歩系> 「ハンギョレ」  →<ひらひらと帰って来る少女たちを温かく迎える映画『鬼郷』>
                  →<「鬼郷」旋風は慰安婦合意に対する市民の劇場デモ>
 <保守系(中道に近い)> 「中央日報」  →<映画『鬼郷』100万人、『ドンジュ』60万人…小さな映画の突風>
 <保守系> 「東亜日報」  →<植民地時代を扱った映画「鬼郷」、100万人動員>
 <代表的保守> 「朝鮮日報」  →<慰安婦映画『鬼郷』観賞運動、韓国野党が政争化狙う動き>
 一方、この映画に疑問を呈している日本サイトの記事  →<慰安婦カルト映画の裏面史…本当にあった少女大虐殺>
 なお、「焼かれる少女たち」の画像は→コチラの批判記事(日本語)か、→コチラ(韓国語)の韓国メディア「チェジュの声」の記事で見られます。(同じ絵に対する正反対の見方。)

「朝鮮日報」2月26日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」 (ハングル文も訳文も10字です。)
 「サウルの息子」
   映画ではなくて体験だ ★★★★☆


 「スポットライト 世紀のスクープ」

   調味料入れずとも美味 ★★★★

 「ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ」

   クールでも正確な監督 ★★★☆


 「鬼郷」

   辛い歴史への招魂儀礼 ★★★

 「男と女」

   曖昧な愛と、曖昧な映画 ★★★


 「かみさまへのてがみ」

   優しすぎて信じがたい ★★☆


 「純情」

   観客より先に泣くとは ★★☆

 「ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ」は、オーストリアとフランス合作によるドイツの名匠のドキュメンタリー。詳細は→コチラ参照。他の6作品についてはいずれも下の記事中で紹介しています。

           ★★★ Daumの人気順位(3月1日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①鬼郷(韓国)  9.8(1997)
②東柱[ドンジュ](韓国)  9.2(566)
③男たちの挽歌  9.0(308)
④時をかける少女<2006年>(日本)  9.0(1196)
⑤Love letter(日本)  8.8(776)
⑥ズートピア  8.8(139)
⑦悪い国(韓国)  8.7(181)
⑧エターナル・サンシャイン  8.7(533)
⑨リリーのすべて  8.6(90)
⑩スポットライト 世紀のスクープ  8.6(51)

 ①と⑩の2作品が新登場です。
 ①「鬼郷」については冒頭に書いた通りです。
 ⑩「スポットライト 世紀のスクープ」は、一昨日報じられたアカデミー賞作品賞受賞作。カトリック教会の神父が30年にもわたり多数の児童に性的虐待を行っていて、教会もそれを看過していたというスキャンダルをボストン・グローブ紙の記者たちが暴いたという実話を映画化したものです。日本でも4月15日公開ですでに公式サイト(→コチラ)もあり、諸情報が流されています。韓国題は「스포트라이트」。

     【専門家による順位】

①キャロル  9.0(11)
②ヘイトフル・エイト  8.6(5)
③黒衣の刺客  8.2(7)
④スポットライト 世紀のスクープ  8.2(5)
⑤暗殺の森  8.0(2)
⑥ボーダーライン  7.8(6)
⑦時をかける少女<2006年>(日本)  7.8(5)
⑧サウルの息子  7.7(9)
⑨男たちの挽歌  7.6(6)
⑩東柱[ドンジュ](韓国)  7.3(6)

 ④と⑧の2作品が新登場です。
 ④「スポットライト 世紀のスクープ」については上述しました。
 ⑧「サウルの息子」は、日本ではすでに1月23日から公開されています。韓国題は「사울의 아들」です。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[2月26日(金)~2月28日(日)] ★★★
         話題の<慰安婦>の映画「鬼郷」がトップに

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(21)・・鬼郷(韓国) ・・・・・・・・・・・・・2/24・・・・・・・・・・・776,070・・・・・・・・1,061,267 ・・・・・・・・・7,962・・・・・・・・・793
2(1)・・デッドプール・・・・・・・・・・・・・2/17 ・・・・・・・・・・・441,737・・・・・・・・2,616,171 ・・・・・・・・21,731・・・・・・・・・651
3(15)・・ズートピア・・・・・・・・・・・・・・2/17 ・・・・・・・・・・・412,248・・・・・・・・1,131,168 ・・・・・・・・・8,452・・・・・・・・・733
4(5)・・東柱[ドンジュ](韓国) ・・・・・2/17 ・・・・・・・・・・・187,612 ・・・・・・・・・607,301 ・・・・・・・・・4,558・・・・・・・・・540
5(2)・・検事外伝(韓国)・・・・・・・・・・2/03 ・・・・・・・・・・・178,958・・・・・・・・9,437,864・・・・・・・・・75,184・・・・・・・・・482
6(4)・・「いいね!」して(韓国) ・・・・2/17 ・・・・・・・・・・・・93,673 ・・・・・・・・・733,713・・・・・・・・・・5,659・・・・・・・・・382
7(新)・・男と女(韓国)・・・・・・・・・・・・2/25 ・・・・・・・・・・・・83,056 ・・・・・・・・・116,987 ・・・・・・・・・・・958・・・・・・・・・444
8(新)・・純情(韓国)・・・・・・・・・・・・・・2/24 ・・・・・・・・・・・・76,288 ・・・・・・・・・177,428・・・・・・・・・・1,268・・・・・・・・・440
9(53)・・フィフス・ウェイブ ・・・・・・・・2/25 ・・・・・・・・・・・・61,797 ・・・・・・・・・・79,959 ・・・・・・・・・・・613・・・・・・・・・309
10(15)・・スポットライト 世紀のスクープ・・2/24 ・・・・・57,460 ・・・・・・・・・・94,792 ・・・・・・・・・・・722・・・・・・・・・316
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・7・8・9・10位の5作品です。
 1位「鬼郷」をはじめ韓国映画が6作品もランクイン。先でもリンクを張った「中央日報」の記事にあるように「鬼郷」や「東柱」といった少予算映画が予想外のヒット。「東柱」は前週よりも数字が増えています。
 1位「鬼郷」については上述しました。
 7位「男と女」は、チョン・ドヨンとコン・ユ共演のオーソドックスな恋愛物。最初の舞台はヘルシンキ。ある子供たちの国際学校で出会ったサンミン(チョン・ドヨン)とキホン(コン・ユ)はたまたまキャンプ場に向かって同行することになりますが、大雪で道を見失い、やむなく林の中の無人の小屋に入りますが、2人は互いの名前も知らないまま抱き合い、そして別れることに・・・。その後ソウルに戻ったサンミンにとって、過ぎ去った夢のようなその経験でしたが、なんと彼女の前にキホンが再び現れて・・・。その先の見当はつきますが、さらにその先は? 原題は「남과 여」です。
 8位「純情」は、23年前の男女5人の仲間たちの間の切ない初恋と友情を描いた物語です。ラジオDJのヒョンジュン(パク・ヨンウ)は、ある日生放送中に届いた手紙を見てはっとします。送り手の名はずっと心に秘めていた23年前の初恋の相手チョン・スオク(キム・ソヒョン)でした。その手書きで丁寧に書かれた文章を読んで、彼の記憶がよみがえってきます。1991年、夏休みを迎えてスオクが待っている故郷の島の村に集まったポムシル(D.O.)と友人たち5人の親しい仲間たち。17歳だった彼らが輝くばかりの夏の日々を過ごす中、ボムシルとスオクに忘れられない特別な瞬間が訪れます・・・。原題は「순정」。
 9位「フィフス・ウェイブ」は、アメリカのSFアクション。圧倒的知能を持つ謎の生命体アザーズの攻撃を受けて地球は壊滅状態に。人間同士も信じられない末期的な状況で離れ離れになった弟を救うため旅に出た女子高生キャシー(クロエ・グレース・モレッツ)の戦いが描かれます・・・。「キック・アス」で無邪気に大量殺人をしていたクロエちゃん、ここまで大きくなったか。韓国題は「제 5침공(第5侵攻)」。日本公開は4月23日です。
 10位「スポットライト 世紀のスクープ」については上述しました。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(8)・・かみさまへのてがみ・・・・・・・・・・・・・・2/25・・・・・・・・・・・・・・8,613・・・・・・・・・・・・16,875・・・・・・・・・・・・・112・・・・・・・・・113
2(1)・・キャロル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/07・・・・・・・・・・・・・・6,992 ・・・・・・・・・・297,556 ・・・・・・・・・・・2,467・・・・・・・・・・52
3(新)・・サウルの息子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2/25・・・・・・・・・・・・・・4,888・・・・・・・・・・・・・9,025・・・・・・・・・・・・・・74・・・・・・・・・・50
4(4)・・ビリーと勇敢な野郎たち・・・・・・・・・・・2/17・・・・・・・・・・・・・・3,225 ・・・・・・・・・・・30,878・・・・・・・・・・・・・214・・・・・・・・・・43
5(新)・・ゴーストハンター ・・・・・・・・・・・・・・・・2/25・・・・・・・・・・・・・・2,655・・・・・・・・・・・・・4,298・・・・・・・・・・・・・・30・・・・・・・・・・54
       オバケのヒューゴと氷の魔人

 1・3・5位の3作品が新登場です。
 1位「かみさまへのてがみ」は2010年のアメリカの実話に基づいた作品。8歳の少年タイラーは脳のガンという重病を抱えています。ある日から彼は神様への手紙を書き始めますが、郵便配達員のブレイディはその手紙に困惑し、教会に相談しにいくと、神父はタイラーの家族と関わりを持つようアドバイスします・・・。韓国題は「레터스 투 갓」。日本では劇場公開はなく、DVDが発売されています。
 3位「サウルの息子」については上述しました。
 5位「ゴーストハンター オバケのヒューゴと氷の魔人」は、ドイツ・オーストリア・アイルランド合作のファンタジーアクション。弱虫の男の子トムは、ある日ちょっと恐く、すごくかわいい(?)「ゼリー幽霊」のヒューゴと出会います。友人がなかった彼らは2人はなかよくなりますが、眠っていた邪悪な氷のモンスターが復活し、ヒューゴは住んでいた屋敷を乗っ取られ、街もオバケがあふれて混乱状態に・・・。この危機に、氷のモンスターに立ち向かう2人ですが・・・。韓国題は「고스트 헌터: 얼음 몬스터의 부활」。日本ではDVD販売だけで劇場公開はないようです。


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2 コメント

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「鬼郷」ブーム (白虎大都督)
2016-03-04 01:38:34
日本での嫌韓本ブームを追いかけて、
韓国では反日映画ブームですか。

嫌韓本が数多く出されたのは日本での出版不況
があったからですが、キワモノを題材にしなければ
ならないほど韓国で映画興行が悪くなっていない
はず。

日本人を悪人に仕立て上げるだけの安易な作品
が横行して韓国映画界がスポイルされないかと
心配になりますが。
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無意識の・・・ (ヌルボ)
2016-03-18 15:25:07
 以前何かで読んだところによると、当の韓国人の皆さんは全然「反日」という意識はないとか・・・。たぶん「史実」の認識に大きなズレがあるために、それに基づいた政治的主張や映画や本等が「結果的として」「反日的」に作用するように思われます。
 意識的に日本に不利な材料を集めて論議を挑んでくるよりも、むしろ「根は深い」といえるかもしれません。
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