ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [12月4日(金)~12月6日(日)]と人気順位 ►韓国では1月公開の「燃ゆる女の肖像」をやっと観れた、が・・・ ►実は韓国の政局が映画よりドラマチックに進行中なんだけど・・・

2020-12-08 22:02:42 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶この1週間で観た映画は1つだけです。これ以外にぜひ観たい作品は・・・何があるの??
 「燃ゆる女の肖像」★★★★☆
 この作品はカンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞したのをはじめ、世界での受賞数は計44に及ぶとか。また韓国では今年1月の公開以来今まで継続して上映されていて、その間評論家・記者による評点ランキング(下掲)でも平均9.22という高ポイントで1位を維持しています。ということで、とても心待ちにしていた作品ですが、ちょっと懸念もありました。それはアートの比重が高そう、という点。(いや、それ自体よくないことではないんですが、好みの問題。美しすぎると見えるものも見えなくなっちゃいそうなので。) で、実際観たらほぼ予想通り。海岸の風景も美しいし、登場人物の衣服の色も深く品があるし・・・。セリフは少なく、声も表情も感情は抑えていて、その分観る側も息を抜けない感じ。この作品についてはすでに多くの人が賛辞を寄せていますが、私ヌルボとしては「なるほど、ごもっとも」というものばかり。しかし(ラストシーンを除いて)感情を揺さぶられないのはなぜ? 男だから?? 女性同士の恋愛を描いた作品なら「キャロル」(日本公開2016)はすごく感動してその年のベスト1にしたんだけどどこが違う? (どちらも<視線>が大きなポイント。なお「アデル、ブルーは熱い色」は未見。) そんなわけで★4つかなとも思ったのですが、ラストの演奏会の場面であのおなじみの曲をエロイーズが聴くシーンがよかったので☆を追加しました。音楽ではもう1つの島の女たちが歌う宗教的(?)な歌唱も気になったのですが、パンフによると伝承歌等ではなく本作に合わせて作られたオリジナル曲だとか。
 ・・・と、ここまで書いて思い出したのは→11月3日の記事で書いた韓国のキュア映画「ツタ」のことです。同棲していた女性同士のカップルの一方が事故で障碍者になったうえ、孤児になった姪も引き取るという話。ヌルボとしてはそんな現実的・社会的なクィア映画の方が向いているかも・・・。

▶今回もキリスト教関係のドキュメンタリー2作品が新登場。「ファティマの奇跡」「閉鎖修道院カルトゥシオ」ですが、調べてみるととても興味深かったです。また「私のお姉さんチョン・ジヒョンと私」という<亡(マン)ゲーム>のドキュメンタリーも。(なんでチョン・ジヒョン?)

         ★★★ NAVERの人気順位(12月8日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(2) ディア・マイ・ジーニアス(韓国)  9.75(36)
②(3) さすらいのシェフ(韓国)  9.59(165)
③(新) ファティマの奇跡  9.59(64)
④(1) カナの婚宴:口約  9.57(188)
⑤(新) 私のお姉さんチョン・ジヒョンと私  9.52(64)
⑥(5) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本)  9.51(745)
⑦(6) モンマルトルのパパ(韓国)  9.51(160)
⑧(4) 蒸発(韓国)  9.48(33)
⑨(新) 封鎖修道院カルトゥシオ(韓国)  9.46(54)
⑩(新) 宴の日(韓国)  9.45(106)

 ③⑤⑨⑩の4作品が新登場です。
 ③「ファティマの奇跡」(仮)と⑩「宴の日」については後述します。
 ⑤「私のお姉さんチョン・ジヒョンと私」は韓国のドキュメンタリー。第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭、第22回正東津独立映画祭等の映画祭で観客に大きな印象を残した作品です。1999年韓国のゲーム会社のNEXONが開発したエランシアという大規模多人数同時参加型RPGゲームがありました。当初は無料、その後月額制となります。当時とても人気のあったゲームで、韓国では過去国内最大利用者数を誇ったゲームでした。日本でも関連会社によってサービスが提供されました。しかし2006年5月にサービス終了が発表され、サービスの存続を願う署名運動が行われましたが、そのまま終了となりました。以後韓国では無料のまま放置されているようで、<亡(マン)ゲーム>(망겜)、つまり運営スタッフに捨てられたゲームの代表格です。本作のパク・ユンジン監督はハッキング等が横行する無法地帯のゲームの世界にいまだに残っているこのゲームのユーザーに質問を投げかけます。「エランシアを、なぜやっているのですか?」。監督の思いは、「運営陣のいないエレンシアに残っているユーザーたちの理由を通して、無気力な20~30代がかろうじて居場所を持っている今の時代と向き合おう」ということだとか・・・。原題は「내언니전지현과 나」です。私ヌルボ、エランシアのことは知らなかったのですが、→ウィキペディア等を見るととても凝ったゲームだし、「友人とのチャットをするためのゲームとして利用している人もいた」とか、「それまでにない楽しみ方を多くのプレイヤーと共有し、友人を作りながらエランシアを巣立って行った」等々の記述があって、このドキュメンタリーの人気を背景が少しわかったように思いました。
 ⑨「閉鎖修道院カルトゥシオ」は韓国のドキュメンタリー。「大いなる沈黙へ-グランド・シャルトルーズ修道院-」(日本公開2014)という仏・スイス・独合作のドキュメンタリーがありました。カトリック教会の中でも厳しい戒律で知られる修道院を取材した作品です。その映画が公開された2005年、教皇パウロ2世の意思に基づいて韓国の慶尚北道尚州にアジア唯一のカルトゥシオ封鎖修道院が設立されました。カルトゥシオはケルンの聖ブルーノが1084年にフランスで設立した修道会です。その場所がラテン語でカルトゥシアで、修道会の名称はこの地名に由来しています。設立後15年、韓国の他にもフランス、ドイツ、スペイン等々、さまざまな国籍の11人の修道士が美しい四季の風景の中で、厳しいカルトゥシオ憲章に沿って沈黙と孤独を自ら選択し、貧困の生活を続けてきました。テレビ・新聞等はもちろん、電話やメールも院長の特別な許可なしに使えません。家族との会見も1年にわずか2日間だけ。月曜日の午後にしばらく与えられる散歩の時間以外はまったく話をせず、1日3回ミサと祈りのために大聖堂に行く以外はずっと1坪の独り部屋でひたすら十字架だけ眺める日々です。そんな修道士の日常が初めてここに公開されます・・・。原題は「봉쇄수도원 카르투시오」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 燃ゆる女の肖像  9.22(9)
②(-) 恐怖分子  8.22(9)
③(2) マーティン・エデン  8.00(8)
④(-) Mank/マンク  8.00(6)
⑤(3) ハラボジの家(韓国)  7.83(12)
⑥(4) 1917 命をかけた伝令  7.67(9)
⑦(5) ガールフッド  7.60(5)
⑧(6) トムボーイ  7.33(9)
⑨(7) 逃げた女(韓国)  7.33(6)
⑩(8) TENET テネット  7.18(11)

 新登場の作品はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月4日(金)~12月6日(日) ★★★
        「お隣さん」が2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数 ・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・お隣さん(韓国)・・・・・・・・・・・・11/25 ・・・・・・・・62,565・・・・・・・・326,655・・・・・・・2,811・・・・・1,098
2(2)・・盗掘(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・11/04 ・・・・・・・・26,860・・・・・・1,423,695 ・・・・・13,007・・・・・・・642
3(3)・・Run:ラン・・・・・・・・・・・・・・・・11/20 ・・・・・・・・20,616・・・・・・・・234,101・・・・・・・2,158・・・・・・・597
4(新)・・ザ・プロム・・・・・・・・・・・・・・・・12/02 ・・・・・・・・・9,940 ・・・・・・・・・17,985 ・・・・・・・・156・・・・・・・560
5(46)・・ファティマの奇跡 ・・・・・・・・12/03 ・・・・・・・・・5,798 ・・・・・・・・・・9,834・・・・・・・・・・77・・・・・・・160
6(4)・・ザ・スイッチ・・・・・・・・・・・・・・・11/25 ・・・・・・・・・5,652 ・・・・・・・・・49,294 ・・・・・・・・429 ・・・・・・324
7(109)・・宴の日(韓国)・・・・・・・・・・・・12/02 ・・・・・・・・・3,947 ・・・・・・・・・・7,074・・・・・・・・・・56 ・・・・・・240
8(5)・・サムジングループ・・・・・・・・・・10/21 ・・・・・・・・・3,766 ・・・・・・1,565,712 ・・・・・13,937 ・・・・・・195
       英語TOEIC班(韓国)
9(再)・・インターステラー・・・・2014/11/06 ・・・・・・・・・3,555・・・・・10,314,132・・・・・82,716・・・・・・・・16
10(再)・・ダンケルク・・・・・・・・・・2017/7/20 ・・・・・・・・・2,374 ・・・・・・2,796,351・・・・・24,610・・・・・・・・16
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 「お隣さん」が2週連続1位ですが、週末観客動員数が6万人台とは・・・。新型コロナがなければランキングの7位前後の数字です。
 今回の新登場は4・5・7位の3作品です。
 4位「ザ・プロム」は、アメリカのコメディ・ドラマ・ミュージカル。日本でも12月4日に公開されているので説明は省略します。韓国題は「더 프롬」です。
 5位「ファティマの奇跡」(仮)は、アメリカ・ポルトガル合作のドラマ。原題は単に「Fatima」ですが、具体的に内容を表している韓国題「파티마의 기적」をそのまま訳して仮題としました。第1次世界大戦の最中だった1917年のある日、ポルトガルの小さな町ファティマに一筋の光が差しました。10歳の少女ルチアと彼女の年下のいとこであるフランシスコとジャシンタ兄妹はその光の中で信じられない光景を目撃します。<その人>にルチアは尋ねます。「どなたですか? どこから来られましたか?」。「天国から来ました」。「私たちのところに来られた理由は何ですか?」。彼らの問いに、彼女は毎月13日に自分を探しに来てと話し、毎日欠かさず祈ることを求めます。<その人>は<聖母>でした。が、母親は子どもたちの話を嘘だと責め、地元の教会や市長等も信じません。ところが新聞で報じたりされ、その後10月13日まで多くの人々がその地に集まって来ました。6月13日には50人だったのが、やがては数万人に。そして人々は想像もよらない奇跡を目にします・・・。ファティマ聖母発現103周年記念作品とのことです。日本ではこのジャンルの作品の公開はむずかしいかも。私ヌルボ、→ウィキペディアの詳しい記事を読むまで<ファティマの聖母>の話は全然知りませんでした。
 7位「宴の日」は韓国のドラマ。父親の葬儀の日、慶事の宴がある家に向かう。誰もが1度くらいそんなことがあるのでは? 泣きたいのに、笑わなければいけない。さまざまなイベントの仕事をしているMCギョンマン(ハジュン)は、妹のギョンミ(ソ・ジュヨン)と一緒に長い間病院に入院している父を介護しています。しかし突然その父が世を去り、ギョンマンは悲しむ暇もなく葬儀費用もない厳しい現実に直面することになります。妹に内緒で葬儀費用を調達するために地方の誕生日祝賀会行事に行ったギョンマンは、夫を失った後笑いも失った傘寿の母を笑わせてほしいというイルシク(チョン・インギ)の願いを聞き入れて最善を尽くして場を盛り上げます。ところがギョンマンは、傘寿の宴で思いもよらぬ騒動に巻き込まれ、足止めをくらってしまいます。一方、1人で葬儀場を守るギョンミは喪主である兄がいなくては何も決められず、周囲の小言ばかり聞くことになりますが・・・。原題は「잔칫날」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(20)・・ファティマの奇跡 ・・・・・・・・・・・・12/03・・・・・・・5,798・・・・・・・・・・・9,834 ・・・・・・・・77 ・・・・・・160
2(32)・・宴の日(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・12/02 ・・・・・・3,947・・・・・・・・・・・7,074・・・・・・・・・56 ・・・・・・240
3(1)・・劇場版 ヴァイオレット・・・・・・・・・11/12・・・・・・・2,224・・・・・・・・・・45,502・・・・・・・・390 ・・・・・・・71
       ・エヴァーガーデン(日本)
4(5)・・復活: その証拠(韓国)・・・・・・・・・・10/08 ・・・・・・・1,146 ・・・・・・・・・26,980・・・・・・・・220 ・・・・・・・13
5(新)・・ラッキー・モンスター(韓国)・・・・12/03 ・・・・・・・・・967・・・・・・・・・・・1,880・・・・・・・・・17・・・・・・・・97

 1・2・5位の3作品が新登場です。1位「ファティマの奇跡」と2位「宴の日」については上述しました。
 5位「ラッキー・モンスター」は韓国のドラマ。実績ゼロのスロージューサー販売員ト・マンス(キム・ドユン)さんは、山のような借金を抱えて高利貸しに追われ、妻のソン・リア(チャン・ジニ)さんと偽装離婚まで敢行しなければなりませんでした。ところが、そんな彼が数日後、ロト1等! なんと50億ウォンの当選になったというのです! さらには当選過程が非常に特別であるというのです。そう、ただト・マンスさんにだけに聞こえるラジオ放送、DJ<ラッキー・モンスター>(パク・ソンジュン)の幻聴が当選番号を教えてくれたとは! 当選金でついに姿を消した妻ソン・リアさんを探すことができるようになったト・マンスさん。ソン・リアさんを切なく探しています。もしかして聞いていらっしゃいますか? 信じられないこの奇妙な事情の成り行きが気になる方は、「ト・マンスのための、ト・マンスによる、ト・マンスだけが聴くダイダイ放送、 161803398MHz!」を! ここまで<ラッキー・モンスター>、ロックディでした。グッドラック! 原題は「럭키 몬스터」です。


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