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[韓国語] <安家>で秘密パーティー? 安さんの家、じゃなくて・・・。その歴史をたどる

2016-01-17 22:50:27 | 韓国語あれこれ
 12日(火)の記事のコメントでno_tenkiさんが教えて下さった「内部者たち」に関する<メディア・オヌル>の1月12日の記事(→コチラ)はなかなか興味深く、関連記事もいくつか読んでみました。
 「内部者たち」は、人気TVドラマ「未生」や映画「黒く濁る村」の原作者でもある漫画家ユン・テホ原作の映画で、韓国で昨年11月19日に公開されてから現在まで観客動員数700万人を超える(「内部者たち ジ・オリジナル」(ディレクターズ・カット版)と合わせると900万人近く)ヒット作になっています。内容は、大統領候補の政治家、未来(!)自動車会長、有力紙・祖国日報の論説主幹という政界・財界・巨大メディアの黒い三角同盟を相手にヤクザとコネもなく将来の展望のない検事が闘う物語です。

 上記の記事と関連していくつかの記事を探して読んだ中で、同じく<メディア・オヌル>の「「内部者たち」が「ベテラン」より優っている」と題した記事(→コチラ)があります。
 で、その記事の中で目にとまった言葉がありました。(ここから本論。)

  미래자동차 오회장, 집권여당의 유력대선후보 장필우, 조국일보 논설주간 이강희 등이 모여 섹스파티를 벌이는 장면은 자연스럽게 박정희의 안가 파티를 연상케 했다.
  未来自動車オ会長、与党の有力大統領候補チャン・ピルウ、祖国日報論説主幹イ・ガンヒなどが集まってセックスパーティーを繰り広げる場面は、おのずと朴正煕のアンガパーティーを連想させた。

 一読して意味がわからなかったのが안가(アンガ)>です。思いつく漢字は<安家>ですが、安さんの家にしても安さんの一家にしても意味不明。電子辞書の朝鮮語辞典(小学館)にもプライム韓日辞典にもなし。

 しかし、ネット上の<標準国語大辞典>には5つ挙げられている意味の最初に次のように記されていました。(※左のブックマーク欄の<NAVER辞典>にも全く同じ説明があります。)

  특수 정보 기관 따위가 비밀 유지를 위하여 이용하는 일반 집.
  特殊情報機関などが秘密維持のため利用する一般家屋


 続いて韓国サイトをいろいろ探してみたところ、옥(屋)>の略語ということのようです。したがって、安家という漢字は(偶然)正解。

 こうした安家の代表例があの197910月26日年朴正煕大統領が金載圭中央情報部(KCIA)部長に射殺されたソウル市鍾路区宮井洞(クンジョンドン)の安家。(下画像)
    

 右の写真、よく見ると右奥に倒れている人がいますよ。

 この宮井洞の安家は1980年取り壊され、現在は<ムクゲの丘(무궁화동산)>という名前の市民休息公園になっています。場所は景福宮の北西の角あたり。(これについては→コチラの記事(日本語)参照。)

 以下、「韓国日報」の記事(→コチラ)と「ハンギョレ」の記事(→コチラ)等を参考に、安家の歴史と現在についてごく簡単にメモしておきます。

安家は1960年代末に初めて設けられた。当時の中央情報部が大統領の私的執務及び休憩空間の必要性を朴正煕大統領に提案して推進したという。その場所は主として青瓦台近くの宮井洞、三清洞、清雲洞などに散在していた。秘密会議、不法資金授受等々、軍事政権の時代、安家は独裁の産物であり密室政治の象徴だった

・1993年3月金泳三大統領の就任直後取り払われたものだけでも12棟に達する。

 ※「안가」という言葉が一般に知られるようになったのはこの頃からかな? 私ヌルボの推定では、本来はKCIA等直接関わっている者たちの間の符牒のような感じがします。それが民主化の時代を迎えてメディアで報じられ一般に知られるようになってきたのでは? 「エッセンス韓日辞典」(民衆書林)の場合は90年代の版にはなく、2005年頃の版にはありました。

・民主化は安家の運用に変化を及ぼした。警護上一般は引き続き遮断されたが、安家は大統領の半公開的な休息空間となり、あるいは家族や知人との食事や運動の場となったりもしている。

・政府の諸部署も民間家屋風の安家を管理している。検察は過去秘密捜査のため安家を持っていたが、今は麻薬等重大犯罪の犯行を自首した者や被害者保護のため10余ヵ所の安家を管理している。国家情報院等は脱北者の身辺保護のため国内外に安家を保有したことが知られている。警察には依然として防共情報関係を扱う安家があるが、軍事政権当時のような強圧捜査とは過去の物語となっている。


・1997年北朝鮮から亡命した元北朝鮮労働党秘書・黄長燁(1923~2010)が起居していた安家は江南区論硯洞72-10にあった。(右画像)
 亡命直後から死亡時まで13年間生活していたこの国情院(国家情報院)が管理する安家は、地上2階、地下1階の建物で敷地面積が463.4㎡にもなる時価30億ウォンの大邸宅で、「中央日報(日本語版)」(→コチラ)等によれば、「塀の向こう側に数本の木が見える2階建ての白い家」で「一般の家と変わらない」ものの、しかし各種セキュリティー装備が設置されていた。塀の上の防犯柵、約20台の防犯カメラ、赤外線探知機らがあり、門の周辺には防犯カメラが4台、屋上には360度回転しながら全方向を監視できる防犯カメラが追加で設置されている。また外部に出た2階のベランダには防弾ガラス10余枚が設置されていて中は見えない、等々。その上、警察が厳重に警護していた。ところが、近所の住民は「一般住宅を改造して使用している事務室だと思っていた」、「セキュリティーが重要な会社が賃貸していると思った」等々、誰も黄元秘書が住んでいることを知らなかった。黄元秘書の死後、2011年から管理部署が国家情報院から統一部に移り、<論硯洞会議室>の名で会議室として使用されているとのこと。

・2014年のセウォル号沈没の日(4月16日)の朴槿恵大統領の行跡については、「産経新聞」の(例の)記事でも取り上げられたように<謎の7時間>がある。この件についての<メディア・オヌル>の記事(→コチラ)は、「金泳三・金大中・盧武鉉政権を経て廃止されたとされる安家がまだ存在しているのではないかという推論も提起されている」と記している。また青瓦台(大統領府)は朴大統領の事故当日の行跡に関する答弁書で「青瓦台は・・・重要な国家安全保障の施設であり、大統領は行政府の首班であり、国家元首であるため、警護必要上歴代のどの政府も大統領の位置と動線はいつも誰に対しても秘密にし、公開してこなかった」と明らかにした。


 つまり、朴槿恵大統領の安家の存在の有無はわからないということか? (まあ、わかったら「安全家屋」ではなくなっちゃいますからねー・・・。)
 ところで、日本には安家のようなものはないのかな? 新聞各紙には「首相日々」(←「毎日新聞」)のような記事に首相の行先等が具体的に書かれているので、秘密の場所で秘密の相手と密談して・・・ということは不可能、とみていいのでしょうか? 今度事情通の人に訊いてみるかな?

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