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韓国ドラマ「英雄時代」を読み解く[9] テサンの愛読書。考証のミスも・・・ 

2010-06-04 23:40:42 | 韓国ドラマ
 久しぶりに続きを書きます。なかなか戦後にたどりつきません。まだまだ先が長いです。

 主人公チョン・テサンは教養があります。少年時代からの努力の賜物ですね。

 金持ち(五大富豪とか)のオルシン、カン・ユングンから「これがわかるか?」と提示された「大学」の一節、「心不在焉 視不而視 聴而不聞 食而不知其味」の意味をすいすい解読します。

 ライバルのグク・テホの教養もなかなかのもので、「海枯終見底 人死不知心」(海が枯れれば底が見えるが、人は死んでも心はわからない)という「明心宝鑑」中の言葉を子どもに説いたりしています。(第19話) 彼は資産家(大地主)の出で、教養が自然と身についている感じですね。

 テサンが寸暇を惜しんで本を読んでいる場面がしばしば出てきます。
 第6話では、「三国志」「は7回くらい読んだよ」と言ってました。
ほかに彼があげていた本は「リンカーン伝」「ハンニバル」「ナポレオン」。(あと1冊聴き取れず。)

 こういった偉人伝・立志伝の類は、明治前期の中村正直「西国立志編」以来青雲の志を抱いた青年たちによく読まれた本です。資本主義初期の、健全な立身出世主義のあらわれですね。

 第9話、テサンは米屋で働くようになりますが、主人の信頼を得て店の営業・経理を任され、売り上げを5倍に伸ばします。
 ここでもテサンは「ナポレオン」という本を読んでいます。

 第15話、鍾路警察の権藤主任宅に行ったものの、頼みごとを拒絶されたテサンが外で読んでいるのは「徳川家康」の第4巻。

 「徳川家康は部下たちにこう言った。「人生とは重い荷を背負って長旅をするようなものだ。決して焦ってはならない。」」
 ・・・こういうくだりを呟きつつ、テサンは自らの人生と重ね合わせます。

 その少し後の方で、権藤主任は彼が日本の本を読んでいることを知って驚きます。
 テサンは「徳川家康」の中に、「人を殺せば自分も殺される。だが、人を救うと自分も命拾いをする」という一節を口にします。

 ・・・しかーし、待った!
 韓国でロングセラーにもなっている山岡荘八の「徳川家康」は戦後の発行(1953年)ですよ。日本でも、よく経営哲学の本として読まれてきた本ですが、1944年の時点ではありえないでしょう。別の作家だとしても、そんな大部の「徳川家康」の本が当時あったとは思えないし・・・。
 (※山岡荘八「徳川家康」、今は中国で大ブームと。昨年のニュースでは200万部(シリーズ合計5000万部)売れたとか。やっぱり経営者向きの本としてです。)

 まあ、時代考証なんてすごくむずかしいから、100点満点を望むのは無理というものでしょうが・・・。

 時代考証といえば、第9話、自転車に乗ったテサンが人力車のソソンにたしかVサインしてましたが、「これはヘンだぞ」と思いましたね。

 日本でもVサインなんてやるようになったのは最近のことだし・・・。あ、最近といっても30年以上前です。ウィキによると「1972年から」ということです。
Vサイン時代の初期、「日本人観光客はカメラを向けるとなんでカニの真似をするんだろう?」と中国人とか不思議がられた、という雑誌の記事を読んだ記憶があります。

 別件で、私ヌルボが気がついた明らかな間違いは、第16話で、「天皇陛下の赤子」の<赤子>を「アカゴ」と言っていたこと。「セキシ」とふつうに読める人は、当時の教育を受けた年配の人でなければ、日本人でもそんなにいないかも・・・。もしかしたら、このドラマの日本人スタッフが知らずに間違えて教えてしまったのでしょうか・・・。

 あと、第9話でテサンがソソンに「チャル カ(잘 가.さよなら)」と言ったりしてますが、こういう言葉はいつからなんだろうな、とふと考えましたが、もちろんわかるわけありません。今後の課題とします。

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