ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [10月22日(金)~10月24日(日)]と人気順位 ▶麗水・順天事件(1948)の今を描いた独立系映画「ツバキ」に注目! ▶「DUNE/デューン 砂の惑星」、韓国でも高評価

2021-10-29 01:52:16 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶先週の記事で書いた韓国文化院主催の<コリアン・シネマ・ウィーク2021>の件。6作品応募して当たりは半分の3勝3敗。予測の範囲内ではありますが、なんだかなー・・・の結果です。来年は同じラインナップで韓国文化院で観たいものです。

▶今回の記事中で注目の韓国映画は《独立・芸術映画》のランキングで2位の「ツバキ(椿)」です。韓国語で<동백(トンベク.冬柏)>。<トンベク>といえば、1960年代の李美子(イ・ミジャ)の大ヒット曲「トンベクアガシ(椿娘)」を思い起こす往年の韓国歌謡ファンも多いのでは?
 この映画のあらすじなんですが、日本語サイトの→Wow!Korea等だけでなく、→NAVER映画を見てもボンヤリしすぎていて、何についての映画なのかさえ全然不明。で、他の韓国記事をいくつか読んでやっとわかりました。映画のあらすじについては本記事の最後の方を参照されたし・・・ということにして、この作品の柱となっている70年以上前の出来事、<麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件>について説明します。

[関係年表]
1945年8月15日・・・日本の敗戦と韓国の<光復>。朝鮮半島の北半はソ連により送り込まれた金日成、南半はアメリカを後ろ盾とした李承晩を中心とした政権が成立するが、それぞれ国内派-(米・中・露等の)国外派、左派-右派の政治家&政党の対立が続く。
1948年4月3日~1949年5月・・・済州島四・三事件。5月10日の南朝鮮の単独選挙に反対して島民が蜂起。政府軍、警察、民間右翼等によって島民の5人に1人にあたる6万人(?)が虐殺された事件。※最左翼政党、南朝鮮労働党(南労党)の関与(扇動)もそれなりにあったが、昨年改訂された歴史教科書には南労党のことは全然記されていないとか・・・。
1948年5月10日・・・国際連合監視下で南朝鮮のみの単独総選挙。朝鮮半島の南北分断を固定化するとの理由から民族派の金九や中道派の金奎植等も反対する中で強行され、各地で反対派による武装闘争が展開された。
1948年8月15日・・・大韓民国政府樹立。李承晩が初代大統領に就任。
1948年9月9日・・・金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国建国
1948年10月19日~10月27日・・・麗水・順天事件。済州島四・三事件鎮圧のため麗水に駐屯していた国防警備隊に出動命令が下されたが国防警備隊はこれを拒否し反乱。順天等広範囲に反乱は広がるが、李承晩が投入した鎮圧部隊により1週間後に鎮圧された。事件後政府による苛酷な左翼勢力摘発で、国防警備隊内で反乱を扇動した南労党員だけでなく、非武装の民間人約8千人(?)が殺害された。その中には、反乱軍と共に鎮圧軍と戦った市民の他に、反乱軍に脅されて食料を与えただけで同調者と見なされて殺される等、明確な根拠もなく犠牲になった人も多かったと考えられています。(→ウィキペディア。)

済州島四・三事件は長く韓国内ではタブーとされ歴史の教科書にも載っていませんでしたが、約20年前の金大中政権以降の進歩系政権の下で真相究明や名誉回復、犠牲者の慰霊が進められてきました。(在日朝鮮人作家・金石範さんの大作「火山島」はぜひオススメ!)
 麗水・順天事件も、国家反逆のレッテルを貼られた住民は長い沈黙を強いられ、事件の全容が公にされたのは1990年代以降だった。そしてやはり金大中政権時代の2001年以降4回国会で事件の真相究明及び犠牲者の名誉回復に関する特別法案が発議されたものの毎回自動廃棄。それが昨年5回目発議された法案がこれまで反対してきた保守政党が態度を変えて国会を通過し、今年6月に可決したとのこと。※→コチラの動画は昨年10月家族の再審や特別法の制定を求める人々、10月19日の慰霊祭のようす等を伝えるYTNニュース。最後に映画「ツバキ」の制作についても触れています。
 ※この映画が10月21公開ということは、10月19日に合わせたもの。
 ※ツバキは麗水市の市花でもあります。

    ★★★ NAVERの人気順位(10月26日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) 若い盛りのソンニョさん(韓国)  9.82(22)
②(新) 休暇(韓国)  9.74(31)
③(4) シャーマン・ロード(韓国)  9.58(19)
④(7) コーダ  9.35(541)
⑤(8) 玆山魚譜 チャサンオボ(韓国)  9.34(2,900)
⑥(10) 奇跡(韓国)  9.28(3,497)
⑦(新) 最後の決闘裁判  9.25(554)
⑧(-) 映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(日本)  9.23(427)
⑨(-) 花束みたいな恋をした(日本)  9.13(439)
⑩(-) オクトノーツと火のリング  9.13(45)

 ①②⑦の3作品が新登場です。
 ①「若い盛りのソンニョさん」は韓国のドキュメンタリー。<第13回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭>で観客賞を受賞した作品です。「木こり? いなくても大丈夫だよ!」。仔が生まれた牛の世話もして、屋根に並べておいたハタハタも取り込まなくちゃならないし、木に登って柿も取って、タクシーに乗ってハングルを勉強しに町にも出なければならないし・・・。江原道江原道・三陟[サムチョク]のある山の中で1人で暮らす68歳のイ・ソンニョさんは座って休む暇がありません。体が十あっても足りないそんな歳のソンニョさんがさらにもう1つ仕事を増やしました。これまでの人生でたった1つの山しか越えたことのない彼女が、長い間住んでいた家を離れて新しい家を建てることを決心したのです。カチカチトントン、今日も忙しいソンニョさんの1日です・・・。原題は「한창나이 선녀님」です。
 ②「休暇」は韓国のドラマ。イ・ラニ監督の初の長編作品で昨年の<第25回釜山国際映画祭>のニューカランツ部門で初公開され、その後<第46回ソウル独立映画祭>の長編競争部門で大賞を受賞する等、韓国内外の映画祭に招待され注目されている独立系の作品です。本作は、ひょっとしたら自分かもしれないどこにでもいそうな解雇労働者であるお父さんジェボクを通じて、を通じて、私たち皆の生活の中での仕事とメシ、廉恥と道理、責任と献身、権利と義務等々、多くの価値とその意味を考えさせる人権映画です。解雇5年目、テント座り込み1882日目。ジェボク(イ・ボンハ)は労組が整理解雇無効訴訟で最終的に敗訴すると10日間家に休暇で帰ります。久しぶりに家族にも気遣って、アルバイトで稼ぎ、忘れていたワーキング&クッキングホリデーで日常の楽しさを発見します。休暇の終わりが見えた頃、ジェボクの2人の娘は、パパが座り込みの場所に戻らないよう願うのですが…。原題は「휴가」です。
 ⑦「最後の決闘裁判」はアメリカのバイオレンス。日本でも10月15日から公開されているので紹介は省略します。韓国題は「라스트 듀얼: 최후의 결투(ラスト・デュエル: 最後の決闘)」です。

     【記者・評論家による順位】

①(2) グリーン・ナイト  8.20(5)
②(-) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
③(8) プチ・ママン  7.63(8)
④(新) DUNE/デューン 砂の惑星  7.50(8)
⑤(-) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑥(-) 冬の夜に(韓国)  7.33(6)
⑦(10) モガディシュ(韓国)  7.27(11)
⑧(-) 終着駅(韓国)  7.20(5)
⑨(-) ファーザー  7.13(8)
⑩(-) 玆山魚譜 チャサンオボ(韓国)  7.00(9)

 ④「DUNE/デューン 砂の惑星」が新登場です。フランク・ハーバートのSF小説「デューン砂の惑星」(ハヤカワ文庫)を映画化したアメリカのSF。この作品は日本でも韓国より5日早い10月15日に公開されているので説明を省略します。韓国題は「듄」です。

    ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月22日(金)~10月24日(日) ★★★
         「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」が2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ヴェノム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・10/13 ・・・・・343,004・・・・・1,649,433・・・・・16,481・・・・・1,568
       :レット・ゼア・ビー・カーネイジ
2(新)・・DUNE/デューン 砂の惑星 ・・・10/20 ・・・・275,956・・・・・・・383,166・・・・・・4,086 ・・・・・1,576
3(2)・・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ・・9/29・・・・・・22,821 ・・・・・1,197,221 ・・・・11,712・・・・・・・473
4(24)・・最後の決闘裁判・・・・・・・・・・・・10/20・・・・・・21,179・・・・・・・・・33,189 ・・・・・・・323・・・・・・・367
5(3)・・ボイス(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・9/15・・・・・・17,572・・・・・・1,385,837 ・・・・13,672・・・・・・・421
6(4)・・奇跡(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/15・・・・・・・9,347 ・・・・・・・675,684・・・・・・6,353・・・・・・・268
7(5)・・映画クレヨンしんちゃん ・・・・・・9/15・・・・・・・6,350 ・・・・・・・196,934・・・・・・1,872・・・・・・・174
       激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(日本)
8(新)・・富川国際ファンタスティック映画祭2021 ・・3,682 ・・・・・・・・・・4,082・・・・・・・・・20 ・・・・・・・・・3
       韓国短編コンペB(韓国)
9(7)・・劇場版ポケットモンスター ココ(日本)・・9/15・・3,488 ・・・・・212,712・・・・・・1,932・・・・・・・121
10(6)・・ノ・フェチャン[魯会燦]6411(韓国)・・10/14・・2,722・・・・・・・23,697・・・・・・・・210 ・・・・・・・105
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は2・4・8位の3作品です。
 2位「DUNE/デューン 砂の惑星」と4位「最後の決闘裁判」については、上述のように日本でも公開されているので説明を省略します。
 8位「富川国際ファンタスティック映画祭2021 韓国短編コンペB」は今年7月7日~17日に開かれた<第25回富川[プチョン]国際ファンタスティック映画祭>の1部門です。原題は「BIAF2021 한국 단편 경쟁 B」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(50)・・2度と雪は降らない・・・・・・・・・10/20 ・・・・・・・・1,987・・・・・・・4,300・・・・・・・・・・・30 ・・・・・・・63
2(13)・・ツバキ(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・10/21・・・・・・・・1,950・・・・・・・3,052・・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・60
3(11)・・休暇(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・10/21・・・・・・・・1,627・・・・・・・3,191・・・・・・・・・・・24 ・・・・・・・55
4(新)・・あなたの顔の前で(韓国) ・・・・・10/21・・・・・・・・1,367・・・・・・・1,956・・・・・・・・・・・17 ・・・・・・・66
5(15)・・若い盛りのソンニョさん(韓国)・・10/21・・・・・1,158・・・・・・・2,483 ・・・・・・・・・・・18 ・・・・・・・74

 1~5位すべてが新登場です。
 3位「休暇」と5位「若い盛りのソンニョさん」については上述しました。
 1位「2度と雪は降らない」(仮)はポーランド・ドイツ合作のコメディ&ドラマ。<第77回ヴェネツィア国際映画祭>のコンペ部門で初公開され、<第93回アカデミー賞>国際長編映画賞のポーランド代表として出品された作品です。
 「1、2、3。息を吐くたびに体がホコリのように軽くなります。自分の特別な能力を使って人々の心の中の悲しみと渇望を覗く催眠術師のゼーニャ(アレク・ウトゴーフ)。彼の能力は瞬く間に口コミに乗って広まり、大勢の人たちが彼に会いたくて血眼になる中、ミステリーに隠された彼の催眠術が人々をとらえ始めます・・・。彼はウクライナ出身で母親をチェルノブイリの事故で亡くしています。ポーランドにマッサージ師として出稼ぎに来ましたが、個室で応対した役人を眠らせて自分で居住許可証を発行します。その特技と巧みな語りで人々を集め、カルトのような雰囲気にもなりますが、反社会的な集団にはならず人々を幸福な夢の世界に誘い、悩みを癒すだけで、その点ではファンタジーともいえそうです。タイトルの意味は、チェルノブイリの死の灰のことか、地球温暖化でポーランドで雪が観られなくなるという意味か、いずれにしても象徴的な意味合いがありそうです。韓国題は「첫눈이 사라졌다」。日本公開は未定のようです。
 2位「ツバキ」は韓国のドラマ。本作品の歴史的背景については本記事冒頭に書きました。頑固な老人スンチョル(パク・クンヒョン)は朝鮮半島の南の海に面した麗水で72年続くクッパ専門店の冬柏[トンベク]食堂の3代目の主人。しかし不景気で店は存廃の危機にさらされ、そんな中優しいだけの息子ナムシク(チョン・ソニル)や分別がない孫クィテ(ソ・ジュニョン)は頼りになりません。そんなある日、店に見慣れない客がやって来ます。それは有名な全国チェーン店を展開している企業からのフランチャイズ店加盟の提案でした。それも店の伝統は残すという形で。家族は皆喜びます。そしてスンチョルはソウルにあるその企業の本社を訪ねます。が、そこでたまたまある人物の写真を見て彼の表情が突然変わります。それは彼の父の命を奪った1948年の悲惨な出来事の記憶につながるものでした・・・。原題は「동백」です。右画像は本作品の1場面。予告編は→コチラ
 4位「あなたの顔の前で」は韓国のドラマ。ホン・サンス監督の新作です。サンオク(イ・ヘヨン)は高層マンションで暮らしたことはありません。彼女は、妹(チョ・ユニ)はこんなに高いところに住んでいて大丈夫なのかという疑問を感じますが、数日前からその妹の住まいに入り込んで韓国での暮らしを再び経験しています。隠している秘密があるようですが、それでも一日一日に集中して暮らせるように勤めています。そんな中、彼女より若い映画監督(クォン・ヘヒョ)から彼女を映画に使いたいとの連絡がきて、1度は辞退したものの結局今日その監督に会いに行くことに。ソウル都心の路地にある小さくて古い酒場。昼間から酒を飲み、外では雨が降り、雷が鳴っています・・・。原題は「당신얼굴 앞에서」。あいかわらずのホン・サンスの作品世界ですねー。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国内の映画の興行成績 [10... | トップ | 韓国内の映画の興行成績 [10... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

韓国内の映画の人気ランク&興行成績」カテゴリの最新記事